オンライン句集夏旅へ高橋正子

(近詠50句)

 

夏旅へ絶壁なせる船に乗る

いろいろの色の漁船の梅雨港

港の花火見えるところへ草登る

瀬戸一湾誰もいぬ海紺すずし

ほととぎす海一枚の白を啼き

海峡の夕日熱かり花ざくろ

店奥に釣具に混ぜて麦藁帽

ゼラニューム港に開く小料理店

夏浜に天日の塩のにぎり飯

タンカーに沖の夏雲かぎりなし

食べ終ゆに匙の残れるかき氷

はまゆうや水平線を見るために

海峡の西日まっすぐ書架へ差す

海光にボトルの麦茶逆さ飲む

どの道も日傘傾け千光寺

片影の低き道なり路地のぼる

故郷の盆へ晴れたる大橋小橋

夏潮に真一文字の橋の影

無花果の葉蔭を出でて泳ぎだす

蒲の穂に空は高かり雲置かず

梅雨晴れに青滴れる島正午

ひまわりも墓石も島のかがやきに

盆の朝島の子どもは僧に付き

義経の鎧も太刀も夏の島

水軍の古文書涼し能島なり

海水に夏雲映り城映り

石切り場あらわに見えて花こすもす

夏潮に吃水ふかし三津渡舟

夏潮を行くに渡舟に自転車も

渡舟場の向かいに見えて花樗

草露に足もと濡らし見る花火

水すずし音もなく来て堰落ちる

川水に触れて飛燕の大いなる

泰山木花のきよらに塔の下

奥伊予に紫陽花の青染みとおる

おはぐろのかそけき胴の瑠璃を持つ

灯されて沙羅の花にも影濃ゆき

みどり立つさびしきことのなにもなし

芍薬を水清冽に汲みて挿す

薮すでに七夕竹を育てけり

双蝶ののぼれる果ての空白し

青梅の珠の明るさ茂れるに

茄子田楽むらさき色のなお深し

トマト齧る何年トマト齧らざる

夏帽のひさしに入る海の風

風音を聞きつつ鮎を焼きいたり

薔薇の花ふかき色して届けられ

一樹のみポプラの鳴れり明け易し

海風を受けて樗の花も鳴る

夏潮の底へと石段浸りいし

(2001年7月1日)