更新:2008年3月17日


高橋信之

俳句入門講座



もくじ

俳句は生活の詩

俳句の約束事

季語・季感

17字音のリズム

俳句の読み方

歳時記

句集

句会

吟行

インターネットの活用

世界の俳句

おわりに

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【俳句は生活の詩】

 詩のある生活は、生き生きとしています。俳句は、世界でもっとも短い詩です。それは古めかしいのもではなく、誰でも自分自身の驚きや喜びをすなおに表現できるものです。楽しい俳句を始めましょう。

【俳句の約束事】

 あなた自身の感動がひとたび俳句の言葉になると、必ずその俳句を読んでくれる読者が現れて、そこに人間としてのつながりができます。すると、そこには、約束事が必要になります。それが季語と17字音です。独り善がりにならないための約束事なので、大切にしましょう。 

【季語・季感】

 17字音のリズムを取っているものは、俳句のほかに、川柳と標語、それにコピーなどがありますが、俳句をそれらから区別するものが季語です。
 無季俳句といって季語のない俳句もありますが、まずは季語のある俳句から始めてください。

 古池や蛙飛びこむ水の音(ふるいけやかわずとびこむみずのおと) 芭蕉

 俳人のなかでも最も著名なのは、松尾芭蕉です。その俳句の中でも「古池や」の句は、これを知らない人がいないと言ってよいほどです。この句の季語は「蛙」で、季節が春です。
 日本には四季という大きな自然の恵みがあり、そのことが、俳句を生み、俳句を育ててきたと言われてきました。しかし、俳句にとっての季語の大切さは、また別のところにあります。それは、季節という自然の大きな営みの中に小さな自分が参加しているという喜びです。季語を用いるということ、つまり俳句に季感があるということは、俳句の作り手の心境にとって大切なのです。 

 閑さや岩にしみ入蝉の声(しずかさやいわにしみいるせみのこえ) 芭蕉

 この句は、俳句が季感の詩であって、その境地を詠むものであることを教えています。蝉の声が岩にしみいるなどということは、現実にはあり得ないことですが、「閑さや」といった芭蕉の境地が真に迫ってきて、凄みさえ感じることができます。

 ごちそうにさくらの花びら降ってくる   句美子

 これは、小学3年生の俳句ですが、家族や親しい人たちに囲まれている楽しい雰囲気、それに加えて「ごちそう」と「さくら」がいっそう女の子の気持ちをうきうきと楽しくしてくれます。「花びら」という季語の大きな働きで、周りの風景ととけこんでいる女の子の気持ちを読み取ることができます。それは、芭蕉の境地といったものとは違いますが、この句もまた、俳句が季感の詩であって、その境地や気持ちを詠むものであることを教えてくれます。

リンク: 季語一覧(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』による)

【17字音のリズム】

 俳句は詩であるので、リズムはどうしても欠かすことができません。俳句が世界でもユニークな詩であると認められているのは、5−7−5という短いリズムがあるからです。そして、短いということは、多くの言葉を使えませんので、心の外へではなく、心の奥へと入っていかざるを得ないのです。
 「季語・季感」と「17字音のリズム」という俳句の約束事は、じつは形式的なことよりも、境地や気持ちといったもっと深いところのものを表現するのに大切なのです。といっても、まずは明るく楽しく俳句をつくるのがいいでしょう。

 話しておれば「あらリラが匂うわね」   かおる

 とても新鮮な句として取り上げました。日常生活での何気ない会話、そのなかでの軽い感動が快く読み手の心に伝わってきます。リラは季節が来ると必ず咲いてくれます。そして匂ってくるのは珍しいことではありませんが、それに心を動かされたことで詩が生まれました。リラと作者との軽やかな一体化によって、「季感と短い」という俳句ならではの利点をうまく生かしています。俳句は明るく軽く、そして次第に深く入っていけばよいのです。それには、あまり無理をせずに、あまり意識をせずに、自然の流れに乗っていればよいのです。

【俳句の読み方】

 俳句を習うには、まず読書からです。歳時記や句集にたくさんの俳句が載っています。それらの俳句をていねいに読むことから始めてください。 俳句を理解し習うには、たくさんの俳句を何度もくりかえし読むことから始めましょう。「習うより慣れろ」ということざわがあるように、人から教わるよりも何度もやってみて、身につけてしまうことがたいせつです。
 俳句をどのように読むか、といえば、昔から言い伝えてきたことわざに忠実に従うことです。「読書百遍意自ら通ず」(どくしょひゃっぺんいおのずからつうず)ということざわがあります。「どんなにむずかしい本や文章でも、なんどもくりかえし読めば、意味は自然にわかってくるものだ。」という意味です。俳句を理解し、俳句を習うには、沢山の俳句をなんどもくりかえし読むことからまず始めてください。西洋にも「習うより慣れろ」ということざわがあります。「人から教わるよりも、なんどもなんどもやって、身につけてしまうことがたいせつだ。」という意味です。

【歳時記】

 歳時記は、俳句の季語を集め、解説をつけた書物です。それぞれの季語に例句をあげていますので、実際に俳句をつくるときには、とても役に立ちます。俳句をつくりに出かけるときなどは、持ち運びに便利な小型の歳時記を持って行くとよいでしょう。
 歳時記は、編者の考えや意図によってさまざまなものが出版されていますが、それぞれの特徴をよく知って使えば、何冊あってもよいものです。俳句についての幅広い知識が得られるでしょう。
 歳時記を開いて、その中の季語、解説、そして例句をひとつひとつ、ていねいに読んでいきますと、俳句が何であるかがよくわかってきます。日本の風土や日本人の生活、そして日本人が長い間、育ててきた日本の文化がよくわかってくるでしょう。

リンク: 歳時記

【句集】

 句集は数え切れないほどたくさんありますが、やはりその中から選択して読むのが俳句を知る一番の近道です。次のように、気に入った句は必ず書き留め、自分なりの感想も添えておくとよいでしょう。

鮎匂い鮎の山河を恋いわたる 川本臥風

鮎の生態をあますところなく表現した臥風先生の代表句。鮎は生まれた川の匂いをたどって上ってくる。豊かな水と緑したたる山河は日本の夏の始まり。(高橋正子)

花樗窓開け放ち書に倦まず 西垣 脩

樗の花が咲くころは、うっすらと汗ばむ。開け放たれた窓の明かり、樗の花明かりに身を入れて読書する楽しみは学生生活の充実と、大きく開かれた未来を思わせてくれる。(高橋正子)

リンク: 芭蕉を読む 子規を読む

【句会】

 俳句仲間が集まっている句会は、一般に「座」または「句座」とよばれていますが、そこでは、それぞれが持ち寄った自分の句を出し合います。お互いの句を鑑賞したり、批評し合ったりして、楽しいコミュニケーションの場を持ちます。もともと「座」は、日常の名誉や利害と関わりのない誰もが対等な仲間の集まりなのです。

【吟行】

 吟行は、聞き慣れない言葉ですが、詩歌や俳句をつくるために出かけること、吟じながら歩いて行くことです。子どもの頃の楽しい遠足気分になれます。吟行の狙いは、戸外でのスケッチで、写生が基本です。俳句は短いので、理屈なしに楽しむことが大切です。まず、写生から始めましょう。

【インターネットの活用】

 いろいろな面で、コンピュータへの関心が高まってきましたが、インターネットの爆発的な普及が原因になっています。 インターネットに接続されていれば、コミュニケーションや情報収集のためのよきツールとなります。 俳句の場合も同じで、インターネットを大いに活用し、俳句のホームページをたずねたり、インターネットで投句したりするのもよいでしょう。

リンク: インターネットと文学

【世界の俳句】

 俳句の約束事には、季語と17字音の他に、切字を取り上げることがありますが、初心者は、この切字にはあまりこだわらない方がよいでしょう。古い約束事にがんじがらめになって、自分の未来を見失ってしまうことがあるからです。俳句は未来へ向かって、明るく、ひろびろとした世界を私たちに見せてくれます。口語俳句の未知の可能性、外国語俳句の爆発的普及、インターネット俳句の魅力、どれを取っても私たちをうきうきさせてくれる俳句の未来なのです。俳句の良さは、伝統を引き継いでいますので、深く、未来へ向かっていますので、明るいのです。これはまた、日本の良さでもあるので、多くの人達に知っていただきたいと願っています。若い人たちにも外国の人たちにも知っていただきたいのです。

リンク: 若い人たちの俳句について 俳句による国際交流 俳句の現代語的口語表現

【おわりに】

 初心に始まり初心に終わる。これは本入門講座の副題ですが、俳句修得の核心でもあります。俳句を始めたばかりの人だけではなく、俳句の極意に達しているベテランの方にも初心に帰って読んでいただきたいと願っております。


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