■さら句会/入賞発表E■

第36回(9月18日)〜第40回(9月25日)

■第40回入賞発表(9月25日)/高橋正子選評

【金賞】
★新稲架の組まれバス終点の地に/脇美代子(信之添削)
バスの終点の地に立つと、はやも寒々しさが見えるが、新しい稲架が組まれて、そこには藁が匂い、日が匂い、はるかな人の営みの暖かさがある。(高橋正子)

【銀賞】
★石垣の積まれる毎の秋の影/河ひろこ
石垣を積む工事を見てるのだろう。一つ一つ積まれる石に、影がくっりと生まれる。深まる秋の日差しをそこに感じ、読者の内面へ向かって、強い印象をあたえてくれる。(高橋正子)

【銅賞】
★秋冷の山へと朝日密に射す/宮地ゆうこ


【特選5句】

★高々と動物園に鹿の声/岩崎楽典
芭蕉に夜鹿の声を句にしたものがある。「ぴいと啼く尻声悲し夜の鹿/芭蕉」であるが、現代の生活の中で、鹿声を聞くとすれば、動物園ということもある。「高々と」には、侘しさもあるが、世俗を抜けた飄々としたものがある。(高橋正子)

★木犀の雨に打たれて冷たき香/相沢野風村
木犀の匂うころの雨は、すでに冷たい。傘を持つ手も冷えてくる。そういった感覚で、木犀の香りが捉えられ、冷たき香と表現された芯のある句である。(高橋正子)

★故郷は山また山の青蜜柑/池田和枝
★爽藾や風車八基の向き同じ/澤井渥
★鳥渡りすでに湖心の賑わいぬ/磯部勇吉


【入選18句】

★だんじりの屋根飛び踊り天高し/堀佐夜子
★秋ふかむ根菜ばかり集め煮て/柳原美知子
★小さき実の山栗なりし味は濃き/大給圭泉
★眺むるに一駅間の秋夕焼/都久俊
★草刈るや黄昏の野に星あまた/冬山蕗風
★紀の川の蛇行に沿いし花薄/平野あや子
★子ら回す黄傘の走る秋の雨/霧野萬地郎
★新米の栗飯にして何もなし/磯部勇吉
★向う岸緩き川面に彼岸花/岩崎楽天
★金木犀香の運ばれて貯木跡/山野きみ子
★版画ほる木屑を吹きて曼珠沙華/戸原琴
★秋天の青まだ遠く峠道/池田多津子
★白いセキレイ吾が行く先に舞い降りる/祝恵子
★漁火のまたたく沖や秋闌ける/能作靖雄
 <能登半島にて> 
★Sの字に自転車漕ぐ子秋の波/やぎたかこ
★ことごとく夕焼け懸かかる秋の雲/碇英一
★黍畑刈られゆくなり果てまでも/右田俊郎
★秋の灯にパソコンを打つ米穀店/守屋光雅


▼選者詠/高橋正子
桟橋に夜の潮満ちて秋の風
陸の灯に向き合う島の秋灯
秋灯を連ねし島の近ぢかと


■第39回入賞発表(9月24日)/高橋正子選評

【金賞】
★いずこの山の青を連れきし青蜜柑/山野きみ子
つやつやとした青蜜柑に、育った山のみずみずしい青を想像した。青蜜柑の酸っぱさまでも思ってしまう。(高橋正子)

【銀賞】
★まっすぐに畝のみどりの菜を間引く/宮地ゆうこ

【銅賞】
★曼珠沙華ガチャンと列車連結す/碇 英一


【特選5句】

★外に出れば朝の香りは金木犀/岩崎楽典
外に出て、朝一番に吸う金木犀の香りがうれしい。ひんやりとした空気、晴れた空、いい香りに気持ちがさわやかに晴れ上がる。(高橋正子)

★機の離陸秋風おこし旋回す/祝 恵子
翼を広げた飛行機が、大きく旋回して秋風が生まれる。「秋風おこし」は飛行機を生き生きと捉えた表現で、秋風の感じがよく出ている。(高橋正子)

★花芒の一穂折りて日照雨/相沢野風村
花芒に、日照り雨が走り、よく見れば折れた穂もあるという景色。心の内を鮮やかに見せてくれた佳句。句意をわかりやすくするため、原句を整理、添削した。(高橋正子)

★竜胆のほっと息して青く咲く/柳原美知子
★すすきわけ丘にのぼれば空が高い/安増惠子


【入選18句】

★真白な乳歯見つけた秋うらら/池田和枝
★鮭のぼるざぶざぶ漕いで川漁師/守屋光雅
★青蜜柑紀伊の一村海に沿う/平野あや子
★秋の海沖に向かいてかもめ並ぶ/岩本康子
★銀漢のかくも澄みたる行方かな/おおにしひろし
★朝発ちの車窓の露を拭いたり/能作靖雄
★暁の月中天に居間ぬくし/下地 鉄
★秋の園ビルの四方の風集む/戸原 琴
★天高し飛行機雲の真一文字/石井信雄
★爽やかな風のホームに電車待つ/澤井 渥
★山腹の緑明るき竹の春/池田多津子
★籾殻焼く風向く方へ火の回り/脇美代子
★芒の穂日にてらてらと風誘う/磯部勇吉
 <能登半島にて>
★曼殊沙華まつりのあとの静けさに/やぎたかこ
★炊きたての新米神に供えけり/冬山蕗風
★葛咲いていつもの道に立ち止まる/加納淑子
★漣の緩やかにして月の海/都 久俊
★遠ち近ちの金木犀になごみけり/大給圭泉


▼選者詠/高橋正子
池端の槿の秋となれる白
青蜜柑差し出されしは旅人に
十五夜の遠く傾き波や荒れむ


■第38回入賞発表(9月20日〜23日)/高橋正子選評

【金賞】
★曼殊沙華茎の青さの潔し/右田俊郎
曼殊沙華は、葉をつけずに青い茎をすっくと伸ばし、燃えるような花冠をつける。そのすっきりとした花茎を青と捉え、潔しとした。作者の潔さである。(高橋正子)

【銀賞】
★山峡は物音高き稲の秋/脇美代子
静かな山峡の稲の熟れる秋。あまりの静けさに物音は、高く耳に響いてくる。山里の豊の秋が、聴覚で捉えられた。

【銅賞】
★コスモスの無造作に在る大花瓶/岩本康子
大きな花瓶に活けられた沢山のコスモスは無造作がいいですね。(山野きみ子)


【特選5句】

★ひとつ足す夜具の程よさ秋深む/河ひろこ
「程よさ」の表現に、ほっかりと暖かいものの心地良さが伝わってくる。夜具をひとつ足すことに、秋の深まりをしっかりと受け止めるいい生活がある。

★野を刈れば秋天蒼を深めける/宮地ゆうこ
野の草を刈り、空がさっぱりと見えるようになった。夏の空とは違って、秋の空は草のような蒼を深めている。

★秋の川かみなかしもと橋のあり/守屋光雅
空気がよく澄んでくると、すっきりとものが見える。秋の川に架かる橋が、かみ、なか、しも、と見届けられる。思念に混じりけが無く、澄んだ秋の広がりをよく感じさせてくれる。

★虫の音の庭の隅まで明るくす/日野正人
 ジプシ−
★月光や葬にも婚にも踊るロマ/戸原琴


【入選34句】

★曼珠沙華橋渡りても曼珠沙華/おおにしひろし
★爽やかに焼けるトースト匂う朝/大給圭泉
★竜胆の紺の蕾を供花として/山野きみこ
★曲がるたび又新しき虫の闇/碇英一
★コスモスの中を祭の鉦太鼓/やぎたかこ
★野太鼓の遠きにありて阿賀の秋/磯部勇吉
★秋空に吸い込まれゆく竹とんぼ/右田俊郎
★秋彼岸からっと晴れた光の中に/堀佐夜子
★日の当たる段々畑や蕎麦の花/小原亜子
★露けさに旅の出立ちの茹で卵/平野あや子
★ひつじ田は今日も広がり山登る/能竹靖雄
★秋日和乳飲み子窓辺によく眠り/祝恵子
★遮断機に待てば蜻蛉の潜り抜け/岩崎楽典
★新米の研ぎて出る水真っ白き/相沢野風村
★母と焼く蝗香ばし懐かしき/安丸てつじ
★満月の海より出でて濡れし色/宮地ゆうこ
★漁村の墓皆海を向き葛の崖/柳原美知子(正子添削)
★灯火親し机一つを妻と分け/金子孝道
★秋灯下母の運針ひたすらに/野田ゆたか
★世の隅は見えざりしもの月に雲/大石和堂
★中天の明るし無月の空なれど/加納淑子
★炊きたての新米に手を合わせけり/冬山蕗風
★幾たびも十五夜の月たしかめぬ/馬場江都
★樹の気根岩を抱くよう敬老の日/下地鉄
★秋彼岸手に置く兄の文庫本/藤田洋子
★月天心城壁硬き白見せて/吉田晃
★声援と秋日に包まれ走り抜く/池田多津子
★我が家にも仰ぎて見えし秋の月/津村昭彦
★秋暁の静けさ破る貨物船/高橋秀之
★割烹着しゃんと纏いて十六夜/池田和枝
★毬付けて栗の小枝が壷にあり/霧野萬地郎
★網棚に菊花おかれし秋彼岸/都久俊
★蟷螂を追い立てゆきて垣根刈る/澤井渥
★秋空に乾いた拍手大道芸/右田俊郎


▼選者詠/高橋正子
りんどうの茎切りつめる音高き
 内子の和蝋燭
ろうそくの蝋色ありて秋の夜
渡る鳥夜はしんしんと渡るらむ


■第37回入賞発表(9月19日)/高橋正子選評


【金賞】
★濯ぎものぱりっと乾き天高し/澤井 渥
澄み渡った秋空に、洗濯物は輝くようにぱりっと乾く。「ぱりっと」の一言が、さわやかで、心も洗濯された気持ちをあらわしている。

【銀賞】
★木の校舎に秋天の青降り注ぐ/日野正人

【銅賞】
★遠目には畦一筋に曼珠沙華/脇美代子
遠く眺めた曼珠沙華の景色。近くに咲いても遠く一筋となっても、曼珠沙華は、「燃える」の語を放さない。


【特選5句】

★初栗の輝き分け合う職員室/柳原美知子
放課後の職員室の風景か。生徒を離れて、教師同士の和気藹々とした時間が、初栗によってもたらされた。「輝き分け合う」がその気持ち。

★秋の川若き声乗せラフティング/岩崎楽典
ラフティングの若者たちの声が、聞こえてきそうである。ラフトにかかる水しぶきも、ラフトの色も若々しい楽しさに満ちている。水の澄んだ秋の川が、魅力的。(高橋正子)

★鱸釣る船はそろって風へ向く/霧野萬地郎
「そろって風へ向く」は、誰もが、潮の流れ、風の向きを選ばねばならない面白さがあって、のんびりと鱸(すずき)釣りの醍醐味を味わっている風景。海にも秋風の爽やかさがあればこそ。

★爽やかな朝の校舎に校歌聞く/池田多津子
★特急の過ぎればそこに秋の風/金子孝道


【入選19句】

★夜明け前うすむらさきに鰯雲/堀佐夜子
★彼岸花の影を踏みつつ回り道/高橋秀之
★月光に冷ゆる我が掌を拡げみる/宮地ゆう子
★ちろろ鳴く遠きは風に消えゆけり/藤田洋子
★鎮守社の裏も表も曼珠紗華/池田和枝
★空気まで青く匂うや秋晴るる/日野正人
★警告灯秋冷の夜を点滅す/おおにしひろし
★妻の留守挑戦している栗ご飯/古田けいじ
★とんぼうの水面に落とす影交差/祝 恵子
★秋の蝶身じろぎもせず石畳/山野きみ子
★照らされて蕎麦の畑は銀世界/右田俊郎
★新米の結飯(むすび)の艶を竹皮に/平野あや子
★秋高し生まれたばかりのジャージー牛/河ひろこ
★秋深し浮かぶすじ雲鳶の笛/能作靖雄
★橋灯の蜉蝣天地白くなり/相沢野風村
★コンテスト終わりて秋風涼しかり/岩本康子
★ついて来る明月孫と連れかえる/都久俊
★花芒光に濡れて朝の路/磯部勇吉
★遊覧船静かに止まり暮の秋/大給圭泉


▼選者詠/高橋正子
新米のつやを夫に私に
虫の音の潮引くごとく遠ざかる
ひらひらとポプラの木に見ゆ秋の風


■第36回入賞発表(9月18日)/高橋正子選評

【金賞】
★山栗の硬き音なり山盛りに/日野正人
この句の生命は、「山栗」。単刀直入な切り出しが、すっきりとして、山の澄んだ空気とみずみずしさをよく感じさせてくれる。「硬き音」に、つややかで色深い栗がイメージでき、秋の深まりが静か。

【銀賞】
★青き空ひとつに稲を刈る棚田/金子孝道

【銅賞】
★反芻す牛は露けし草の上/戸原 琴


【特選5句】

★旅客機の浮き翔つ秋の滑走路/磯部勇吉
「浮き翔つ」に思わず、読者の身が軽くなる。秋草の見える広々とした滑走路に、あの巨体がふわりと浮く。爽やかである。

★石鎚の遠嶺につづく鰯雲/おおにしひろし
よく構成された句。「石鎚」は、西日本一の高峰で愛媛県人には、ごく親しい山である。その山から連なる鰯雲に同化するように、作者の思いは遥かへと向かう。

★さつまいもふかせば濃ゆし黄なる色/やぎたかこ
目に鮮やかな、ほかほかのさつま芋の黄色。うれしい色である。蒸し器でふかされ、湯気を通されて、自身の色を鮮やかにする。その妙味。

★秋澄めり竿はしなりて川下る/祝 恵子
★初潮や川波照りて遡る/都 久俊


【入選29句】

★炊きしめる醤油の匂い秋厨/脇美代子
★夢二の絵するり黒猫萩に逃げ/堀佐夜子
★朝の陽を纏いて栗のころび落つ/宮地ゆうこ
★ぎんなんは金色空は青さ増す/古田けいじ
★沖よりの波のリズムが秋天へ/柳原美知子
★露けしや芒の光る放物線/戸原 琴
★秋の海峡積み木のようなコンテナ船/柳原美知子
★鰯雲高きを見上げ明日思う/岩本康子
★太刀魚の箔の輝き提げて来る/平野あや子
★金木犀あつめて吾子は飯とする/福島節子
★夕芒風に目覚めてうす赤く/相沢野風村
★見上げれば群青秋の雲を割り/宮地ゆう子
★雨音を傘に聞きつつ色葉踏む/霧野萬地郎
★畑に出て日暮れの早き花茗荷/脇美代子
★夕焼けの先に闇あり実紫/福島節子
★秋高し建前の槌天を打つ/能作靖雄
★秋風の肌に沁みるを愉しめり/岩本康子
★鉛筆の転がる音の爽やかに/吉田 晃
★満月や空覆う雲軽やかに/冬山蕗風
★ハモニカの音に秋風をつれてゆけ/池田和枝
★サラリーマン帰宅を急ぐ月淡し/津村昭彦
★しろじろしブリキのバケツに月潜む/安増惠子
★炊きたての新米ご飯湯気香る/池田多津子
★秋刀魚をば七輪の火を扇ぎ焼き/河野 齊
★公園の草木の名札一位の実/澤井 渥
★仲秋や日暮れ間際の空淋し/加納淑子
★散りて咲き咲いては散りゆく百日紅/右田俊郎
★水澄むや吊り橋渡る人の影/岩崎楽典
★食卓に色増す一品菊膾/大給圭泉


▼選者詠/高橋正子
秋冷にわが足骨の尖りけり
秋冷のドア垂直に開けてあり
栗の音こつとさせたい朝のくらがり