■さら句会/入賞発表C■

第26回(9月4日)〜第30回(9月10日)

■第30回入賞発表(9月10日)/高橋正子選評

【金賞】
★秋高し二人で刈り込む長き畦/能作靖雄
夫婦二人で、畦を刈っているのだろう。刈り込まれた畦が、すっきりと清潔な感じで、秋空の下に伸びている。秋の爽やかさそのものの句。(高橋正子)

【銀賞】
★古代米穂の赤深く空に燃ゆ/池田多津子
多津子さんの勤務される小学校では、学校田に、毎年古代米を植えて収穫し、子どもたちの口に入るという。それは、別のこととして、この句は、珍しい、原初的な風景を深く観察して詠んでいる。古代米の穂の深い赤い色が印象に残る。(高橋正子)

【銅賞】
★鈴虫の鳴く声高し闇に張り/鬼頭雅子
鈴虫の声が透き通るので、闇にも張りが感じられる。「闇に張り」は、鈴虫の高い音色をよく吟味し、自分の言葉で表現しているので、、生き生きとしている。(高橋正子)

【特選5句】

★アフリカのあの山目指す友さやか/霧野萬地郎
「アフリカのあの山」とは、アフリカ一番の高峰、キリマンジャロ。それは、萬地郎さんの句集「サファリ」の振り出しであるタンザニアの山であり、自身ペンネームの由来ともなっている。「友」は、富士山に一緒に登った有花さん。有花さんは、今年日本の高峰5つに登り、さらにキリマンジャロに挑戦ということで、その行動は「さやか」。9日関空から出発した友へのエールが暖かい。有花さんは、山頂で、俳句と「詩による対話」グループが朗読を指定した詩を朗読する予定である。(高橋正子)

★草々を活けて秋風通しけり/堀佐夜子
秋風を通されて、草は野にある姿となって揺れているのだろう。秋草のとりどりが、やさしい。(高橋正子)

★手折り来て小菊束ねば香の高き/馬場江都
★店先に竜胆清かに並べられ/池田和枝
★秋茄子の色濃く曲がる日の中に/吉田 晃


【入選20句】

★空割れて椋鳥一斉に群渡る/戸原琴
★売られゆく牛の名札や吾亦紅/平野あや子
★ちちろ鳴く児はまだ塾より帰り来ぬ/都久俊
★藁屑の浸る刈田の雨上がり/岩崎楽典
★秋天へぷくぷく子らのシャボン吹く/やぎたかこ
★整いて祭りの近し秋太鼓/守屋光雅
★クレヨンを持つ子に秋の光満つ/宮地ゆうこ
★パソコン打つ天窓よりの虫の声/冬山蕗風
★臭木咲く遠く山田に動く人/古田けいじ
★秋麗ら亡父は作らぬ句を詠んで/おおにしひろし
★思い切り刷きたる雲や秋の空/澤井 渥
★秋夕焼け六甲連山隠るなし/碇 英一
★陽の中に瓢箪太る歪みつつ/山野きみ子
★秋遍路鈴の音残し一礼す/日野正人
★一試合終えし生徒へ秋風一陣/柳原美知子
★秋寂し防火壁割れ放射能漏る/柳川銀芽
★稔田の刈られて列を正しくす/磯部勇吉
★あかとんぼならして遠のく清掃車/祝恵子
★秘め事を凝縮せるや秋の薔薇/右田俊郎
★涼しさに誘われ散歩星一つ/大給圭泉


▼選者詠/高橋正子
もろこしの枯るる畑に風あふる
葉桜に秋風来るは曇れる日
涸れ池に涼しさ残す布袋草


■第29回入賞発表(9月9日)/高橋正子選評

【金賞】
★秋の川折り返し来る遊覧船/磯部勇吉
「折り返し来る」は、平らな秋の水を思わせてくれる。河をかるがると行く遊覧船の楽しさがある。(高橋正子)

【銀賞】
★流れ来て真上にとどまる鰯雲/小原亜子
「真上にとどまる」に、自分の位置の確かさがある。自分の位置から眺めた鰯雲の空が広々として、高い。(高橋正子)

【銅賞】
★新涼の自転車に乗り風の中/藤田洋子
肩の力を抜いて、新涼の風を思い切り吸っている心境がよい。(高橋正子)


【特選5句】

★公園のベンチに一つ落とし文/大給圭泉
落し文は、中に昆虫がいるとは思えないほど、きちんと巻かれている。それが座ろうと思うベンチにあるだけに、その緑の巻き葉が印象に残る。ベンチが涼しそうである。(高橋正子)

★赤とんぼ背の子の寝息整ひぬ/平野あや子
★秋天へ手の届くように行進す/日野正人
★土締まる白露の朝をつよく踏む/宮地ゆうこ
★長月やコーヒーカップを厚手にす/古田けいじ


【入選20句】

★やっと咲く真白き花の珠すだれ/堀佐夜子
「やっと咲く」に、やっときた秋の涼しさを喜ぶ気持ちがある。珠すだれの花は、そんな気持ちにさせてくれる花である。(高橋正子)

★村人も山河も眠らず秋祭り/河ひろこ
★蕎麦ゆれて真白き斜面を風すべる/右田俊郎
★家大工の槌音高し天高し/都久俊
★だし浸す鍋のしずかさ夜半の秋/宮地ゆうこ
★濡れ匂う花ジンジャーの裏の道/霧野萬地郎
★太りゆく芋虫憎し畑黒し/池田和枝
★新米のほどよき粘り箸に乗せ/岩崎楽典
★まめに咲きまめに零るる乱れ萩/池田和枝
★棗の実一つちぎれば秋陽散り/おおにしひろし
★秋天や日がな続きし釘の音/碇英一
★剪定の枝は白露の空を指し/吉田 晃
★かくかくと花園を巡る散水器/澤井 渥
★愛す花に菊を加えし年になり/戸原琴
★花びら散る道見上げれば葛の花/池田多津子
★水引草佳き事語りかける路次/山野きみ子
(皇居外苑)
★新涼の芝にくっきり松の影/柳原美知子
★土を掘る機械のアーム秋暑し/石井信雄
★秋の七草に交じりてねこじゃらし/冬山蕗風
★萩の花愛犬の道塞がれし/津村昭彦


▼選者詠/高橋正子
鵙鳴けり空一点のこととして
菊活ける指が花茎を移り
青いガラス秋水入れて玉のごと


■第28回入賞発表(9月6〜8日)/高橋正子選評


【金賞】
★朝露の光の中の登校児/日野正人(信之添削)
朝露が、稲の葉にも道の草にも光っている。たくさんの露の光を受けて子どもたちが登校する明るい田園風景。子どもたちの生き生きした表情が見えるようだ。(高橋正子)

【銀賞】
★葉の上に泥芋のせて朝の市/守屋光雅

【銅賞】
★それぞれに鍵持つ暮らし秋時雨/堀佐夜子
今の生活では鍵を、あれこれと、それぞれが持たざるを得ない。秋時雨を戻ってきて鍵を開けようと思うとき、個としての少し淋しい自分に、はっと気づくのではないか。この句を読んでそう思った。(高橋正子)


【優秀41句】

★火の粉舞いシテ艶やかに秋の夜/池田和枝
★霧晴れてたちまち穂高大障壁/多田有花
★宿下駄を真っ先に履き秋暁へ/古田けいじ
★透明な光の中に菊立てり/岩本康子
★稲孫田の出揃いし青一面に/池田多津子
★甘藷売り土を自慢の声高し/吉田 晃
★あいうえお教える声の秋の窓/守屋光雅
★秋桜を飛ばして揺れる青い空/相沢野風村
★青柿に甘雨の滴留まりて/岩崎楽典
★雄山より降りるを待てぬ秋の霧/能作靖雄
★御仏は常に聞き役秋ともし/野田ゆたか
★思いきり太刀魚釣の飛ばす浮き/碇 英一
★地ワインを透かすぶどうの棚の下/霧野萬地郎
★日常にまぎれて生姜を刻みけり/小原亜子
★鉄梯子登る足下へ霧疾し/多田有花
★ラケットの芯で捉えた秋の音/吉田 晃
★愛犬を呼ぶ口笛の秋風に/岩本康子
★秋風やきっぱりと子は途につきし/鬼頭雅子
★松手入れ脚立の水平確かめて/澤井 渥
★新松子東屋の屋根真四角に/山野きみ子
★鉛筆の音の隙間に虫の声/池田多津子
★秋天や試合開始の礼一列/碇 英一
★傘閉じて萩の隧道屈みつつ/山野きみ子
★草踏めばばった先駆け明るき方へ/宮地ゆうこ
★またおいで子らの手をふる秋つばめ/右田俊郎
★真葛原下りる階段洞窟へ/磯部勇吉
★白秋の童謡うたう秋夕焼/冬山蕗風
★露草や真白き猫の目の青き/戸原 琴
★櫨の木がはや色付きて木曽源流/古田けいじ
★一夏の思いを乗せて波寄せる/岩本康子
★芙蓉咲くまるで美空と話すよに/祝 恵子
★秋の草一つ一つに名のありて/都 久俊
★露けしと思う参磴登り来し/野田ゆたか
★長き夜に邑囲まれて黒々と/小峠静水
★暮れ残る白き一叢韮の花/宮地ゆうこ
★ひと夏の話を持ちてザ・ランチ/河ひろこ
★終電を見送りてより銀河濃し/おおにしひろし
★月明に浮ぶ甍や古都眠る/安丸てつじ
★出来てすぐ消える水輪や秋ついり/加納淑子
★蜻蛉や垂直に飛ぶを得意とし/下地鉄
★葛湯とく心しずまる夕灯り/大給圭泉
「葛湯」は、冬の季語です。(高橋正子)


▼選者詠/高橋正子
あらわれて秋の蝶なり黄の濃かり
青穂田の白いネットが風通す
葛の花よく見てどれも咲き昇る


■第27回入賞発表(9月5日) /高橋正子選評


【金賞】
★秋没日徐々に大きく街の涯/岩崎楽典
没日が、赤く燃えながら、次第に大きく見えて、広い街の向こうに沈んでゆく。そのときの感動を工夫して、じっくりと詠んでいる。大きな没日に明るい明日が期待される。

【銀賞】
★葡萄房剪りて重みを手に移す/霧野萬地郎
みずみずしい葡萄を剪りとって、その重みを、そっくりそのまま手にしたときの感動が、素直に詠まれている。

【銅賞】
★無花果の掌に余るほど今朝取れし/澤井 渥
朝の無花果は、ひんやりとして露もついているのだろう。そんな無花果が、掌に余るほどとれた。今朝のうれしさである。

【特選5句】

★葛の花あたり一面敷き散れり/祝恵子(信之添削)
「葛の花」が散って、「あたり一面」葛の花である。花のかすかな匂いもしていそう。気品のある句。

★一瞬の晴れ間かがやく酔芙蓉/おおにしひろし
「一瞬・・かがやく」と捉えられた酔芙蓉が、はっきりとして眼前に浮かぶ。酔芙蓉のもっとも美しい一瞬であろう。

★抱き上げて葡萄の房が子の目の高さ/高橋秀之(信之添削)
★筧行く水やわらかき秋の声/宮地ゆうこ
★タグボート巨体真横に秋の潮/磯部勇吉


【入選20句】

★芋虫のいて生き生きとキャベツある/小峠静水
★百日紅燃えてそこのみ残る夏/右田俊郎
★汽車過ぎてえのころ草の揺れ交じる/藤田洋子
★鳳仙花ふるさと語る母若し/吉田晃
★白秋のまちぼうけ流る秋風に/冬山蕗風
★秋晴れや結婚記念の朝清し/日野正人
★細き月暁の空に今日も晴れ/岩本康子
★全身を雨の襲い来秋の暮れ/碇英一
★菩提寺の箒目しかと秋づきぬ/平野あや子
★芋蛸の煮る匂いして酒にする/都久俊
★電柱の影の長くて秋日和/堀佐夜子
★秋の雲見上げていればビル傾ぐ/古田けいじ
★鈴虫を大事に飼いて巣立ちける/山野きみ子
★大玻璃のなきが如きに芒原/磯部勇吉
<槍・穂高縦走>
★秋空の中に座りて味噌ラーメン/多田有花
★盛られたる仏飯白し秋の朝/藤田洋子
★樹の陰に憩えば遠くに実る栗/古田けいじ
★時刻表のページ乗り継ぐ夜長人/宮地ゆうこ
★送電塔色づく田んぼを縦に切る/右田俊郎
★秋燈をたぐり寄せくる連絡船/磯部勇吉

▼選者詠/高橋正子
平らかに眠れば虫音ひろびろと
袋に透け酢橘のみどりまん丸い
赤とんぼ田の沖飛んでただ眩し


■第26回入賞発表(9月4日)/高橋正子選評


【金賞】
★澄む秋の空半分に穂高あり/多田有花
天に近いだけに、燦燦と日を浴びた穂高の峰が、澄んだ秋空に聳え、その雄姿を登山者の目の位置で見せてもらえる。(高橋正子)

【銀賞】
★鳥威し朝の節目として鳴れり/おおにしひろし
鳥威しは、仕掛けられて、一定の間隔で鳴るのだろうが、毎朝、同じころにドンとなって朝の節目を感じさせてくれる。(高橋正子)

【銅賞】
★家じゅうの時計ばらばら秋暑し/堀佐夜子


【優秀25句】

★止まるたび夕焼けを呼ぶ列車かな/戸原琴
夕焼けを浴びて列車が走っているのだが、駅に停まる度に、夕焼けがまぶしく窓に入ってくる。停まっては夕焼けを呼んでいる、ファンタジーのある列車である。(高橋正子)

★竹筒に百円落し酢橘買う/霧野萬地郎
無人売り場だろう。酢橘の代金に、百円玉を竹筒にコトンを音をさせて入れる。その行為に野趣味があってたのしい。(高橋正子)

★日が落ちて山は大きな虫籠に/藤田洋子
★黄を増して降りる用意のいちょうの実/古田けいじ
★夕焼けの顔と顔とが話している/戸原琴
★サリサリと梨食む口や乳歯揃う/馬場江都
★天を指しオクラの青の上りゆく/池田多津子
★鶏頭と入日つながる一光線/宮地ゆう子
★秋暑しグラウンドの声校舎呑む/日野正人
★女の手刺して秋蜂巣を亡くす/岩崎樂典
★虫一匹鳴いても森は静かなり/都久俊
★沖へ鴎野分の風に逆らいて/澤井渥
★パーラーの葡萄ゼリーのふると揺れ/池田和枝
★秋蝶の吾が傘影を横切りぬ/祝恵子
★レモンの酢さんまの詩に想い馳す/右田俊郎
★八朔の祝赤飯届けらる/碇 英一
★指先に思い託して風の盆/やぎたかこ
★咲き始む萩の花手ですくい見る/河ひろこ
★一抹の寂しさありぬ九月空/岩本康子
★大夕日全てに長き秋の影/吉田晃
★昆布削る昆布屋の匂い秋暑し/平野あや子
★天仰ぎ雨乞いしつつ大根蒔く/能作靖雄
★絡みつくものに連なる烏瓜/小峠静水
★稲刈に連呼して去る選挙カー/岩崎楽典
★松籟と波音ばかり秋の浜/澤井渥


▼選者詠/高橋正子
つややかに炊けし米なり九月来て
花もなき九月のひと日水を飲み
池隅に涼しさ生みて布袋葵