■さら句会/入賞発表(37)■

第214回(2003年7月14日)〜第216回(7月31日) 

第216回さら句会入賞発表(7月28日-31日)/高橋正子選

【金賞】
★ラムネ飲む江ノ島青く傾ぎおり/大給圭泉
ラムネを逆向けて飲むと、体までが傾く感じで、青々とした江ノ島が傾く。夏真っ盛りの海辺がラムネのようにさわやか。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★差し出さるなすの丸みを両の手に/祝恵子
ありふれた日常の風景だが、作者の確かな生活がそこにある。私の好きな句。
(高橋信之)

★銀色のペンが転がり風涼し/藤田洋子
銀色のペンからくる感覚的なすずしさが、風の涼しさとともに詠まれ、心身とものすずやかさが詠まれた。(高橋正子)

【銅賞/4句】
<原順子さん句集「花菖蒲」を読みて>
★朝曇り句集に篭る銃の音/碇 英一
「朝曇り」は、盛夏の難しい季語だが,うまく使った。「句集に篭る銃の音」との取り合わせがいい。敗戦の夏が鮮明に蘇ってくる。(高橋信之)

★昼寝する青き畳の目に沿いて/古田けいじ
真新しい畳に、目に逆らうことなくすっと沿って身を伸ばす心地よさが、眠りを誘ってくれる。青畳の匂いといい、昼寝といい、一時は浄土である。(高橋正子)

★雨上がる青き空より夏落葉/加納淑子
雨の上がった青い空から、木から離れるともなく離れて舞い降りる、ゆっくりとした落葉が、やさしい気持にしてくれる。(高橋正子)

★海を泳ぎ海の匂いに包まれる/山中啓輔
海で泳ぐと、プールとは、全く違った海の匂いをいっぱいに吸うことができる。海に入り、海の感触を体が久しぶりにとりもどした喜びがある。(高橋正子) 

【特選8句】
★連山の高きを凌ぎ雲の嶺//吉田 晃
★青簾灯影の洩れて一家族/山野きみ子
★炊き立てのご飯にのせた茄子の青/右田俊郎
★文月や雲あらわれて直に去る/今井伊佐夫
★水桶に青唐辛子浮き広がる/宮地ゆうこ
(タイにて)
★スコールに屋台たたみて母娘/林緑丘
★乾杯の声陽に届きビール飲む/相沢野風村
★浜の子に祭り仕度の太鼓鳴る/平野あや子
★草いきれ昔この途広かりし/小峠静水 
    
【入選25句】
★堰越えてより急ぎたる夏の水/碇 英一
★七月の青きレモンの実の太り/藤田洋子
★青栗の落ちて小さく跳ねる音/池田多津子
★人待ちて長き冷夏の卓にいる/多田有花
★重き花揺らせダリアの茎を切る/吉田 晃
★島育ち夫の泳ぎは平泳ぎ/祝恵子
★かなかなの山風降りる畑仕事/守屋光雅
★早稲の風案山子新しき衣装着て/おおにしひろし
★その内の誰かが気づく落し文/野田ゆたか
★里山の小径に満ちる草いきれ/石井信雄
★降りしきる雨や南瓜ほくと煮え/小原亜子
★見渡せば汗の記憶のある校舎/池田和枝
★石返す船虫早くも次の岩/平田 弘 
★勤行へ蝉の合唱ついてくる/澤井 渥
★蜩の鳴いて三時のカプチーノ/磯部勇吉
★かんだかな元気な声す昼寝かな/津村昭彦(正子添削)
★子を抱きしめ驚かぬように大花火/河ひろこ
★屋根替えの声の降りくる朝曇り/太田淳子
★専用の釘に提灯祭来る/大給圭泉
★船の引く波を照らして夏日差し/高橋秀之
★午前五時早や公園に蝉しぐれ/安丸てつじ
★帰省子のやや頬痩せてジャズピアノ/古田けいじ
★墨を磨る音かるがると蝉鳴けば/宮地ゆうこ
★夏雲へファウルボールを見失う/日野正人
★教会のクルス孤高に秋近し/平野あや子

▼選者詠/高橋正子
明け初めし暗さに朝顔まず青を
夕焼けの広がり行かぬ海の雲
冷奴いつものとおりの今日一日  

第215回入賞発表(7月21日-27日)/高橋正子選 

【金賞】
★岩肌の硬きより湧き滴れる/吉田 晃
岩肌を湧き出て滴る水に焦点をしぼり、クローズアップして、一枚の写真のように詠んだ。硬い岩肌と、柔らかで透明な水が硬軟、対象的でありながら、滴りとなって一体化しているところに涼しさがある。。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★土用芽の赤きを叩く雨の日々/山野きみ子
土用芽の勢いに、木の生命力を知らされるが、赤い土用芽は、柔らかで、つやつやとしている。日々の雨のなかでも、赤い芽のいとおしく、印象に残る。(高橋正子)

★朝取れのもろこし箱に何本も/日野正人
朝取ったばかりのとうもろこしの緑色が、目に爽やかに映る。幾本も並べられると、その露に湿った緑色は、夏の朝のすがすがしさそのもとなるのである。高原の空気が感じられる。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★梅雨寒や木綿のシャツの柔らかさ/脇美代子
梅雨寒に、羽織った木綿のシャツのしなやかな暖かさに、自分自身の体温をふっと感じる。日常のこのようなことにも、自分が生きていること、シャツに労わられているようなことを感じるものである。(高橋正子)

★蜩や静かに暮るる雲の色/今井伊佐夫 
静かに暮れてゆく雲に、蜩の声が沁み通るようであり、心を雲の通わせている作者の姿が読み取れる。「雲の色」に、作者のたゆたう思いがある。(高橋正子)

★噴水立って音が生まれる朝の池/山中啓輔
朝早く、噴水が立ち始めるときを捉えた句で、静かな池の平面から立ち上がって噴く水が、音を生んでいる。水の音であり、噴水そのものの涼しい音である。夏の朝の静けさがよく捉えられている。(高橋正子)

【特選8句】

★マンゴ切る種子の平らに逆らわず/下地鉄朗
★瑠璃の声森のくらさを透き通す/磯部勇吉
★夕暮れの青鬼灯に雨降れり/河ひろこ
★赤色と滴の光る干し浮輪/碇英 一
★浦落暉海峡渡る涼しさよ/平野あや子
★夏曇雲に消え行く飛行船/祝恵子
★朝風にオクラ深紅の鮮やかに/太田淳子
★午後からは薬缶が浸かり寺清水/野田ゆたか

【入選34句】

★平らなる大地の田水行き渡り/小峠静水
★梅雨明けて窓一枚の空の色/藤田洋子
★青山河ひとつの影となり歩く/おおにしひろし
★笹の香に包まる餅の旨き夏/安丸てつじ
★よく動く静かな森の蟻静か/古田けいじ 
★梅雨の川マスト林立雲を指す/加納淑子
★青々と海に繋がる夏山河/今井伊佐夫 
★茄子漬の紺鮮やかに白ご飯/池田多津子
★荒梅雨に少年の髪濡れしまま/多田有花
★梅雨明けて回転扉のよくまわる/宮地ゆうこ
★梅ジュースに浮く実親しく口に含む/馬場江都 
★ふるさとの駅は変わらずカンナ咲く/右田俊郎 
★なにごとの拘りもなく実梅落ち/河野 齊 
★額縁の洗心の書や木槿の花/冬山蕗風 
★青天を掬い向日葵はなやかに/大給圭泉
★花ユッカ信仰の人ら教会へ/守屋光雅
★切株に蟻燦燦と黒々と/相沢野風村
★ドアーを開けラッキョウ漬ける妻がおり/津村昭彦
★蓮開く朝海光の耀きに/おおにしひろし
★青き葉の踏まれし路や梅雨の闇/藤田荘二
★夏の朝足音軽きレンガ道/青海俊伯  
★シーサーと視線交わしてハイビスカス/池田和枝
★明易や胡瓜の長さ気にかかり/林緑丘 
★ベイブリッジ花の中なり揚花火/石井信雄
★遠花火大観覧車の灯も見ゆる/澤井 渥
★鉢植のトマト小さく青くなる/都久俊
★菜園の初もぎトマト青かりし/能作靖雄  
★早朝の駒付き自転車蝉時雨/高橋秀之  
★蒲の穂の芯を貫く細き茎/平田 弘
★蝉の殻をいくつも止まらせ楠大樹/山中啓輔  
★海見えて旅の終わりの月見草/平野あや子
★石鹸の香り軽やか洗い髪/池田多津子


▼選者詠/高橋正子
陶鉢に金魚の朱(あけ)の清かなり
夜の雲の白きに蝉が少し鳴き
沖に灯の増えて夜涼を瞬けり

第214回入賞発表(7月14日-20日)/高橋正子選

【金賞】
★手にむすぶ源流なりし滴りを/野田ゆたか
源流の滴を手に掬んだときの冷たさ、清らかさが、体にも沁み通るようである。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★八方の風受けおりぬ百日紅/碇 英一
辺りより抽んでている百日紅が、八方より風をうけて淡い花を咲かせている。「八方の風」は写生で、作者の心情が伝わってくる。(高橋正子)

★白桃の浮力に真水磨かれる/小峠静水
写生ではない。沈めても浮いてくる白桃の浮力によって、真水が動きつややかになるという作者の思い。白桃を配することで、水の持つ柔らかな生命感を伝えた。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★木の影のくっきりとあり夏の朝/多田有花
木の影が、くっきりとはっきり見える朝に、夏の涼しさを感じる。鮮明なものは、気持を涼しくしてくれる。(高橋正子)

★夏旅の鞄小さく軽くして/霧野萬地郎 
夏の着替えは、薄いものですむので、旅鞄も小さめでよい。軽く、小さく、身軽な旅ほどいいものはない。(高橋正子)

★マンゴーの朱の丸みや陽の甘き/下地鉄朗
季語はないが、夏の季感が充分である。(高橋信之)

【特選8句】
★清しさは朝の茗荷をきざむ音/宮地ゆうこ
茗荷のすがすがしさは、その香りに一番にあるが、それだけではなく、茗荷を刻む「さくさく」という音にもあるという。主婦らしい句。(高橋正子)

★日焼けした子らきらきらと水弾く/池田多津子
★雨雫滝の雫にかわりけり/都久俊
★早暁のおしろい花の冷えひえと/おおにしひろし
★白南風の紀伊のかなたに星一つ/平野あや子
★朝空に青水無月の雲淡し/山野きみ子 
★憧れの清里妻と氷菓舐め/古田けいじ
★とんぼうと我と涼しい風の中に/山中啓輔  

【入選33句】

★風鈴を新たに風の来て鳴らす/大給圭泉
★山ひとつ背負うふるさとの合歓の花/今井伊佐夫
★雲の峰早く見たしという気持ち/安丸てつじ
★朝涼の身の奥までも青めける/下地鉄朗
★風鈴の音色が満ちる保健室/日野正人 
★森影を出でしばかりの梅雨満月/馬場江都
★心地よく靴音軽き日の盛り/青海俊伯
★川渡る朝風葛を騒がせて/太田淳子
★ゆうらりと貝のモビール夏館/池田和枝
★海の日のポスター青く晴れており/小峠静水
★手ですくう豆腐に滴る水涼し/池田多津子
★峰雲や君たちはもう十七か/相沢野風村 
★シャンソンに耳を傾けパリ祭/平田 弘 
★月見草明るく咲いて夕暮れ来/加納淑子
★尾道の焼ける石段夏の旅/右田俊郎
★緑陰に汽笛の消えし保津の谿/石井信雄 
★刈り込みし青松葉にも盆の風/能作靖雄
★羽ばたいて白鷺水の香を広ぐ /藤田洋子
★背番号もらう少年の汗の顔/吉田晃
★白雲に日輪求め咲くのうぜん/祝恵子
★梅雨深しべっ甲削る町静か/藤田荘二
★槐散る海から寺へ風止まず/霧野萬地郎
★梅雨の月鳥は一途に卵抱く/相沢野風村 
★差し潮に灯を沈ませて梅雨の闇/山野きみ子 
★紫蘇揉みて日暮れし部屋の匂いけり/都久俊 
<野辺山>
★信濃路の農婦は畦にすもも剥く/古田けいじ
★故郷や匂い広げるメロン畑/河ひろこ
★アルバムに旅の残像夏の夜/高橋秀之 
★梅雨明けの空広がりぬ朝(あした)かな/岩本康子
★山百合に出迎えられて坂登る/磯部勇吉
★梅雨の夜流れに沿って歩道下る/河野齊 
★星空に火の粉飛び交う遠花火/冬山蕗風 
★川とんぼゆっくり開く羽四枚/澤井 渥