■さら句会/入賞発表(36)■

第212回(2003年7月1日)〜第213回(7月13日) 

第213回入賞発表(7月7日-13日)/高橋正子選

【金賞】
★河三つ出合い蜻蛉生まれけり/おおにしひろし
河が出合うところには、水にきらめきがある。三つの河が出合えば、川波にさざめく光りも増える。そこで生まれる蜻蛉の生命は、透明感があって、いっそうのこと輝いている。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★コスモスの揺れ合いながら陽を送り/下地鉄朗 
コスモスの花が群れ咲いて風に揺れ、陽を空へ、向こうの方へと送っている。コスモスが咲いているのは、なだらかな丘であろうか。(高橋正子)

★漬茄子の水はじきたる今朝の紺/今井伊佐夫
茄子の漬物が、色よく漬かり、水を弾いて食卓にだされたのであろう。頃よく漬かった茄子の紺色が新しく、涼しげである。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★ひまわりの高きところの風に揺れ/宮地ゆうこ
背の高いひまわりの、花の辺りを吹く風を言って、暑さのなかの幾分かの涼を感じさせてくれている。(高橋正子)

★次々と日へ咲きのぼる立葵/藤田洋子
立葵に朝日などが当たっているときは、特に「日へ咲きのぼる」感じがする。しなやかに日の中に立って、可憐な花である。(高橋正子)

★膨らみて縞目定かに水母の子 /平野あや子
海の水に、透き通って浮いている水母であるが、傘を膨らますと、子どもの水母でもその縞目がはっきりとしている。ふっくら膨らんだ水母が、岸などに寄っていると、涼しそうに思える。(高橋正子)

【特選8句】

★夏菊を手に墓山へ露を踏む/霧野萬地郎
★祭鱧樽の形に逃げまどふ/小峠静水
★笹飾る橋の向こうに学舎あり/祝恵子
★空の青映してプールの青深く/池田多津子
★ふくらみて紫陽花まづは薄みどり/河ひろこ
★睡蓮の埋み尽して橋の浮く/山野きみ子
★青い山頂き見せて梅雨の雲/河野 齊
★一番バス待つ涼しさの中に立つ/日野正人  

【入選30句】

★久慈川やここから先は夏の海/小原亜子 
★苑涼し朝の挨拶行き来また/野田ゆたか
★一つづつ手取りし梅の真青なる/大給圭泉
★大提灯張り替え中の鬼灯市/守屋光雅
★手の平に小さき涼あり笹の舟/大石和堂
★草刈の重なりありて地に帰る/相沢 野風村
★登別青空抜けし北の初夏/津村 昭彦
★雨上がって滴り繁き夏木立/山中啓輔
★風そよぎリンリンと鳴る麦穂かな/渡辺酔美
〔豪州にて〕
★逆さから満ちし異国の夏の月/高橋秀之
★甲斐に入り中腹までの袋掛け/霧野萬地郎
★夕顔を咲かせて逝きし茜空/加納淑子
★ガーベラや窓辺に翳る長き影/片平奈美 
★朝顔にうっすら赤く水の玉/冬山蕗風
★ハーブ摘み匂いの庭に独り立つ/能作靖雄 
★城の崎の外湯めぐりや藍浴衣/石井信雄 
★七夕や雨に願いの消えにけり/都久俊 
★滝前へ迫り出す楓揺れずめに/澤井 渥 
★お祝いを添え書きされし小団扇/平田 弘
★孫からの絵手紙吊るす星祭/右田俊郎
★梅雨ぐもり蝉の声して立ち止まる/多田有花 
★竹垣に首をかしげている蜻蛉/吉田晃 
★コーラスの音階練習峰雲へ/柳原美知子
★陽の差して夏草の露輝けり/岩本康子
★新しき厨の壁の仔蟷螂/古田けいじ
<長野・山梨小旅行>
★信濃蕎麦四角い窓の濃あじさい/古田けいじ
★蚊遣火の煙もれ来る牛舎かな/磯部勇吉
★白南風やシャツなびかせて自転車隊/安丸てつじ
★晴れわたる四方の空より蝉の声/宮地ゆうこ
★ビルの角を折れて涼しい風に逢う/山中啓輔  

第212回入賞発表(7月1日-6日)/高橋正子選

【金賞】
★梅雨空に材木軽やかに匂う/山野きみ子
新しい材木の匂いが、梅雨空の下にほのかに漂って、生活する町が生きいきと蘇るようである。こんなときは、こころなし、一人気持が華やぐ。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★風鈴のさそう夜明けの青き風/下地鉄朗
夏の夜明けのすがすがしさが、「青き風」として捉えられた。ほどよく鳴る風鈴の音を聞きながら過ごす時間に、心の高さがある。(高橋正子)

★夏の雲わが行く山の彼方にも/都久俊
大変にゆったりとした爽やかな風景。夏の雲がゆうゆうと浮かび、これから向かう山の彼方にも広がっている。とらわれのない心が読み手に安けさをもたらしてくれる。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★児は透けし袋に水着持ち帰る/祝恵子
泳いだあとの幼い子どもが、透き通った袋に水着を入れて持って帰ったというのであるが、なにもが愛らしい。濡れたままの幼子の髪、かわいい絵柄の透き通った袋、それを持って歩く様子など。(高橋正子)

★金魚鉢透けて光の回りおり/池田多津子
★どっしりと動かぬ石の涼しさよ/日野正人

【特選8句】

★谷青葉四方に拡がる風見えて/小峠静水
★夕顔の初花開くわが庭に/おおにしひろし
★地下街を出る香水とすれ違う/古田けいじ
★七夕の波音軽き船溜り/柳原美知子(正子添削) 
★揚羽蝶来るたび乾く白きもの/藤田洋子
★水シャワー浴びたるよりの夕心/野田ゆたか
★雨滴つくままの枇杷の実皿に盛る/右田俊郎
★七月の風と光と今朝晴れて/多田有花  

【入選34句】

★萍の茂る田圃に白き雲/今井伊佐夫
★行々子鳴きてさざなみ走りけり/磯部勇吉
★浮かび出で水母ふわりと岸へ寄る/平野あや子
★夜振火をとどめの雨の消去りぬ/片平奈美
★梅雨空へ朽ちし銃口向いたまま/霧野萬地郎
★とんぼうの草に紛れる速さかな/碇 英一
★なんばんの花に夕風萌黄波/石井信雄
★アガパンサス涼やかに立つ雨上がり/岩本康子 
★新採の涼しき声に店開けられ/冬山蕗風
★雨空に向かいて真黄胡瓜咲く/林緑丘
★遠雷を間遠に聞きて夕支度/馬場江都 
★刈り草をかるく空へと裏返す/宮地ゆうこ
★打球伸び梅雨晴れの青高く深し/吉田晃
★雨上がる青銀杏の青深め/山中啓輔 
★カッコ−も耳慣れ久し半夏生/能作靖雄 
★色涼し干菓子とお茶を木の蔭で/大給圭泉
★梅雨晴れて灯台高く岩濡れし/相沢野風村
★抱かれたる吾子の目線の金魚かな/高橋秀之
★坂の上より大夕焼けに押されけり/加納淑子
★車窓から小さな町の小さな祭/安丸てつじ
★沙羅の花落ちて錆びてる寺街路/守屋光雅
★雨に咲き雨に暮れゆく合歓の花/小原亜子 
★ハミングが我を抜き去り夏の朝/池田和枝
★乾きたる土をがっしり百合開く/ 藤田荘二
★瀬の音の近く遠くに登山道/澤井 渥 
★納涼に虫の音を消す下駄の音/平田 弘 
★雨止んで青紫蘇庭に勢いつく/古田けいじ
★御仏のまします都滴れり/安丸てつじ
★外に出れば夜涼の空に観覧車/下地鉄朗
★たっぷりと昭和も過ぎて甚平着る/小峠静水
★地方紙にくるまれ山の百合届く/小峠静水
★明日開く蓮の蕾の茎すっくと/おおにしひろし
★貝風鈴連鎖の音の海を呼ぶ/山野きみ子
★夕涼し去りゆく雨の置きみやげ/野田ゆたか