■さら句会/入賞発表(35)■

第210回(2003年6月16日)〜第211回(6月30日) 

第211回入賞発表(6月23日-30日)/高橋正子選

【金賞】
★風涼し籠いっぱいの青野菜/宮地ゆうこ
籠に溢れるほど収穫された夏野菜は、見た目にも涼しいが、風が吹いて肌身にも涼しさが感じられ、句に気負いがないのがよい。(高橋正子) 

【銀賞】
★あめんぼう跳んで平らな水の張り/藤田洋子
あめんぼうの脚が水の表面を押さえているが、そのことによって、水に張りがあることを気づかされる。水の張りは、作者の感覚の張りでもある。(高橋正子)

★植田には水の出入りの音つづく/祝恵子
植田には、いつも水があるが、入る水と、出る水とが静かに動いている。その出入口には静かな水音が絶えない。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★田草取終えて静かに水透けり/相沢野風村
田草を取るときは、田の土を掻くので水が濁ってしまうが、終わるとまた静かに澄んだ水となり、土や、小さな生き物や草などを見せてくれる。「水澄めり」ではなく、「水透けり」としたところに、作者の確かな目がある。(高橋正子)

★海鳴りの遠くにありて沖縄忌/下地鉄
「沖縄忌」は、6月23日で、「沖縄慰霊の日」である。沖縄に住み、戦争を体験した作者は、遠い海鳴りに、沖縄戦についての特別な思いを蘇らせていることであろう。日本人が忘れてはならない日である。(高橋正子)

★風鈴の音色も別けし露天商/津村昭彦
露店商人が、ガラスの風鈴、鉄風鈴、陶器の風鈴などいろいろ吊るして、売っている夜店であろう。様々な風鈴の音色に夜店の楽しさが湧く。(高橋正子)

【特選8句】
★まだ何も入らぬ鮎の生簀籠/片平奈美
★青紫蘇の溢るるほどを篭に盛り/池田和枝 
★寺また寺築地が切れて額の花/藤田荘二
★青々と風の抜け来る簾かな/今井伊佐夫
★映画館出て街眩し夏至の夕/都久俊
★初もぎの胡瓜に水の匂いけり/磯部勇吉
★はや稲穂潮風強き故郷は/脇美代子 
★朝獲りの獅子唐涼しきままを盛る/安丸てつじ  

【入選32句】

★編集会議軸真っ直ぐなさくらんぼ/古田けいじ
★青柿の陽をとじこめて丸み増す/大給圭泉
★李熟れ木に満つ甘みをもぎとりぬ/池田多津子
★ラファエロの丸きみどり児枇杷熟るゝ/碇 英一
★緑陰を出で快走のモノレール/石井信雄
★上気して馬上に喜々と夏至の子等/山野きみ子
★山桜桃熟す山里日のぬくさ/小原亜子
★蓮開く音はねかえる池の面/平野あや子
★青田風匂う広さを子燕飛ぶ/おおにしひろし
★夏の夜の星の輝きに今出会う/日野正人
★菩提樹の花さやさやと今朝の晴れ/馬場江都
★傘触れて行く立葵の高さかな/加納淑子
★蓮の葉や吹かれてまろぶ玉の水/能作靖雄
★街路樹へ風かろがろと梅雨晴れ間/多田有花
★たも網の子等の歓声青田風/霧野萬地郎
★梅を干す母の日課の始まりぬ/右田俊郎
★夏帽を脱ぎ話題に割り込みし/野田ゆたか
★おおかたは青空そして梅雨の雲/山中啓輔
★ほたる一つ闇の深さを押し上げて/小峠静水
★小さくとも縦縞くっきり西瓜の実/太田淳子
★路地幅を狭めて美し青葉かな/林緑丘 
★杜若格子戸越しや祇園町/大石和堂 
★朝五時に歳時記みれば郭公鳴く/守屋光雅 
★夏草に線路隠れし貨物線/高橋秀之 
★改札を出れば潮の香鳥羽は梅雨/澤井 渥
★羅や卯波見遣りし真砂女逝く/冬山蕗風
★勝手口開ければ聞こゆ風鈴の音/堀佐夜子
★灯り消し良風入れて夏至の居間/下地鉄
★サマーセーター緩やかに編む風入れて/山野きみ子
★李熟る沢より風のひろがりて/宮地ゆうこ 
★揚羽追う影の失う高さまで/藤田洋子
★登山靴泥つき乗り込むローカル線  

第210回入賞発表(6月16日-22日)/高橋正子選

【金賞】
★水の匂いを羽にたたんで川とんぼ/池田多津子
川とんぼはいつも水の上を飛んで、羽の隙間には、いつも川の水が見えて、羽をたたむと、水の匂いも打ち畳むかのようである。「羽にたたんで」に描写の工夫がある。(高橋正子)
水辺に透きとおった羽をたたんでとまっているとんぼ。水の匂いを全身に漂わせているような様子。(大給圭泉)

【銀賞/2句】
★睡蓮の丈みなそろう花も葉も/霧野萬地郎
睡蓮が、平らに水に浮いているところを、その根元から想像して、「丈みなそろう」とした。「軽さ」に涼しさが生まれた。(高橋正子)
当然のことだが、水面の睡蓮をこんな表現してみると改めて美しさの真実を垣間見る。(おおにし ひろし) 

★ありったけ樋に寄せ来る岩清水/今井伊佐夫
岩清水を桶に受けて汲むところであろうが、湧き出る清水は、ありったけ惜しみく寄せて桶を満たしてくれ、その嬉しさがある。(高橋正子)


【銅賞/4句】
★水切りをせし紫陽花の盛り上る/磯部勇吉
紫陽花の切花は、水を上げにくいのであるが、うまく水切りができて、青い花が盛り上がるように咲いてくれている。「盛り上がる」に紫陽花の毬のみずみずしさが想像できる。(高橋正子)
「水切り」「盛り上る」に紫陽花のみずみずしい勢いを感じます。色も香も滲んできそうです。(宮地ゆうこ) 

★真緑のイグサ真っ直ぐ水に立つ/おおにしひろし(正子添削)
1メートル以上にもなる濃い緑のイグサは、梅雨の時期もっともよく伸びる。水に真っ直ぐに立っている姿には、涼味がある。(高橋正子)

★青芦をさらさら抜けて風匂う/石井信雄(正子添削)
青い芦の茂る中に夏の風が。青い夏のイメージで、さわやかです。(池田多津子) 

★植田日々空を映して育ちけり/多田有花
植田に空が映って、植田はいつまでもそのままのように思えるが、早苗は日ごとに育っている。植物の生長には、眼を瞠るものがある。(高橋正子) 

【特選6句】

★鉄線花の紫映える青き空/渡辺酔美
★風ひと夜ふもとの植田は根付きたり/小峠静水
★早々と体目覚めて夏至近し/大石和堂
★茂りたる枝を落として半夏生/林緑丘
★百合の香や窓開け放ち入浴す/冬山蕗風
★六十路半ばピンクの夏服選びおり/堀佐夜子  

【入選39句】

★村つなぐ青田に風の移りゆく/大給圭泉
★夏空を独りじめして風の中/片平奈美
<東海道関の宿>
★麦秋の畑ごと西へ傾けり/古田けいじ
★明け易く始発電車の輝けリ/山中啓輔
★風鈴を鳴らして風の乾きけり/磯部勇吉
★子燕の声の高さよ今朝の窓/脇美代子
★早苗田の田毎に濃淡生まれたる/おおにし ひろし
★梅雨荒るる物畳みつつ部屋に居て/宮地ゆうこ
★馬鈴薯の花の地下には実を結び/平田  弘
★青空を向いて飲み乾す麦茶かな/野仁志水音 
★万緑の濃淡ありて幾重にも/相沢野風村
★岸壁に残る潮跡夏の雲/平野あや子
★麦の穂を飾る喫茶のメニュー板/澤井 渥
★命日の父を偲べば短夜や/河ひろこ
★切り通し狭しと膨らむ濃紫陽花/山野きみ子
★玉ネギの鳴くを括りて一輪車に/守屋光雅(正子添削)
★鬼灯の青膨らみて雨に濃く/祝恵子
★黒南風や今日の目覚めは雨音に/野田ゆたか
★青梅や一夜の塩に色香せり/能作靖雄
★空一枚植田すみずみ光り合う/藤田洋子 
★万緑の連なる先に山かすむ/安丸てつじ
★足跡を植え田に残し水透明/吉田 晃
★風吹いて真青な夏の空となり/大給圭泉
★五月雨の花から葉へと地に落つる/都久俊
★さみだるる路傍に置かれし花束に/山中啓輔
★ぼうたんの花弁に花弁の影さしぬ/戸原琴
★故郷へ向う汽笛や茄子の花/池田和枝 
★青鷺のゆったり掻いて渡りけり/碇 英一
★しなやかに竹の若葉の風を切り/青海俊伯
★夏蝶の大きく飛べど孤独なり/加納淑子
★捩花の空へと咲かす芯のある/宮地ゆうこ
★土日経て一望植田となりにけり/河勝比呂詩
★背伸びして掛ける高さに新玉葱/守屋光雅
★線香を点じて紫陽花色を増す/藤田荘二
★昼下がり眠りに入るや合歓の花/右田俊郎
★うねり継ぐ白き葉裏や大蓮池/馬場江都
★積まれし木の材木町に梅雨の音/河ひろこ 
★夏至の雨明るき宵を降り始む/多田有花
★さわさわと音して竹の落葉なり/古田けいじ 


▼選者詠/高橋正子
濡れている坂あるかぎりを夏燕
つっと出て小さきものの青揚羽
山下る前方二人に夏の霧