■さら句会/入賞発表(34)■

第208回(2003年6月1日)〜第209回(6月15日) 

第209回入賞発表(6月9日-15日)/高橋正子選

【金賞】
★驟雨過ぎ嶺それぞれの襞はるる/山崎美笑 
「それぞれの襞はるる」は、気持ちを晴れ晴れとさせてくれる。嶺の襞がくっきりと見え、山の色が目に沁みて明らか。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★朴葉鮨青の香りを包みおり/今井伊佐夫
「朴葉鮨」が、山国のいい生活を想像させてくれる。開いて食べるのが楽しみな朴葉鮨は、青い朴の葉で作られる。(高橋正子)

★水平に額紫陽花は空の色/池田多津子
<水平に><空の色>は、<額紫陽花>を詠んで、作者の主体性が読み取れます。新鮮な写生句です。(高橋信之) 

【銅賞/3句】

★守宮鳴く人の恋しき夜となり/下地鉄朗
「守宮鳴く」は、作者によれば「ジジジ」という鳴き方だそうである。灯に集まった虫をとりに来る守宮も、灯を慕う生き物である。その鳴き声でしんとした辺りに気づき、人恋しさを覚える。(高橋正子)

★乳ふくむ嬰の鼓動に若葉風/河ひろこ
難しい孫俳句をうまくこなしました。<鼓動>と<若葉風>との取り合わせに作者の個性が生きています。(高橋信之)
全身で乳を飲む嬰。紅潮した肌と鼓動が、若葉の風の中でなんと力強いことでしょう。(宮地ゆうこ)
生まれたての生命の鼓動に若葉風がよく響き合って生気みなぎる爽やかな若葉の季節を感じさせてくれます。これからお孫さんの成長とともに生まれる俳句
が楽しみですね。(藤田洋子)

★大和路を歩けば夏萩両脇に/祝恵子
古寺へ参る道であろうか。夏萩の道を分けて歩いているのが、「両脇に」である。夏萩は、大和路に似つかわしい。(高橋正子) 

【特選6句】

★青鷺は水の色して立ちにけり/多田有花
<青鷺>は、夏の季語。<水の色>が効いて、青鷺のすらりとした<立ち>姿が見えてくる。(高橋信之)

★青い海引き寄せてみる額の花/おおにしひろし
「海を引き寄せて」の発想は、まま見られるが、渋めの色の額の花と、明快な青い海の色とを引き合わせたのはよいと思います。同系色の世界が楽しめます。 (高橋正子)

★広々と雨の日暮れの植田澄む/藤田洋子 
★田植え機の廻れば田水溢れさす/脇美代子
★復興の酒蔵通り蔦青し/平野あや子
★青梅や一盛り採れて竹の笊/石井信雄  

【入選39句】

★梅雨明けて青一色の身を包む/下地 鉄
★明日よりの日々の明るさ茄子の花/小原亜子
★青田にも濃淡ありて雨が降る/堀佐夜子
★熟れてより沢なる枇杷の明らかに/碇 英一
★夏帯をさらりと解いて軽い風/山野きみ子
★湾に入る巨船の霧笛入梅す/平野あや子
★梅雨晴れて雲の真白に輝ける/宮地ゆうこ
★山走る窓より入る来る青葉の香/馬場江都 
★百合つぼみ次々開き部屋明る/安丸てつじ
★万緑に木曽路を謳う水車かな/池田和枝
★大気吸い紫陽花朝に膨らみぬ/脇美代子
★朝風のほどく薔薇の香とどきくる/大給圭泉
★陶磁器のすける薄さに額の花/戸原琴
★籐椅子の軋む音色の懐かしさ/平田弘
★バス停とバスの間を揚羽蝶/高橋秀之
★新茶届くその嬉しさの音を振る/宮地ゆうこ
★さくらんぼワイングラスに揺らし見る/藤田洋子
★ラピスラズリつけ夏服の女たち/多田有花
★夏空にまだまっさらな飛行雲/山中啓輔
★玄関も座敷も熟れし梅香る/古田けいじ
★優勝旗のペナント踊る涼風に/日野正人
★涼風や待つ人あらず橋に立ち/金子孝道
★夏帽子とり手を振りて遠くなり/相沢野風村
★絵団扇や魚泳ぎて蝶も舞う/都久俊 
★夏空に思いを寄せり分教場/津村昭彦
★道まっすぐに迫る雄雄しき夏の山/渡辺酔美
★病棟の視線を集め夏の蝶/藤田荘二
★ふるさとはじゃがいもの花真っ盛り/右田俊郎
★竹笊に水の切られて梅匂う/吉田晃
★濃紫陽花急行通過無人駅/霧野萬地郎
★サラサラと六月の風回廊に/岩本康子
★蜥蜴をも掴むわらべの好奇の目/野田ゆたか
★薫風を浴びてベンチに腕ひろぐ/磯部勇吉
★片陰に少しはずれし木のベンチ/小峠静水
★大広田空を仰ぎし鷺一羽/能作靖雄
★烈火知る鉄風鈴の風の音/加納淑子
★どれもみな金色の鞍チャグチャグ馬コ/守屋光雅
★味噌蔵を出れば夏日の眩しかり/澤井 渥
★自らも父なる子より父の日に/河勝比呂詩 

▼選者詠/高橋正子
 新居浜へ三句
田水張らる水が土色変えゆきて
早苗箱水の光りを時に受け
打ち水のホーム通過す水の町

第208回入賞発表(6月1日-8日)/高橋正子選

【金賞】
★万緑や赤子の命賜りぬ/河ひろこ
万緑の勢いそのままのように元気な男の赤ちゃんで、おめでとうございます。いい季節に生まれて、「命賜りぬ」の喜びもさぞかしと思います。(高橋正子) 

【銀賞/2句】
★万緑を背に直球の伸びる音/日野正人
すかっとした気持ちのいい句ですね。万緑と直球がぴったりです。(多田有花) 

★草刈って砥石を薄く減らしけり/今井伊佐夫
伊佐夫さんのいいところが出ていますね。いい生活です。(高橋信之)

【銅賞/3句】
★薫風という名の風を全身に/相沢野風村
肌にやさしく吹く風、歩みいく作者の姿が見えてきます。季語の連想力をうまく生かしましたね。(小峠静水)

★日記帳短文並べはや六月/平田弘
作者の生活がリアルに伝わってくる。<短文>がよかった。(高橋信之)

★カットせし軽さ手にある洗い髪/平野あや子
「軽さ手にある」は、短く軽くなった髪をうまく表現していますね。カットして、さっぱりとなった軽い気持ちがいかにも夏らしくていいです。(高橋正子)

【特選6句】

★青空の深みに咲きて桐の花/大給圭泉
好きな句です。「深み」が今日の青空にぴったりですね。桐の花は松山はとっくに散って今は真っ黒な実が一杯ついています。私も今日近くの古戦場の丘に行き、桐の句を詠みました。(おおにしひろし)

★枇杷の黄の道行く人の肩に触る/堀佐夜子
道を彩る枇杷の黄色が明るいですね。たわわに熟れて垂れる枝ぶりも目に浮かぶようです。(藤田洋子) 

★薔薇を見る薔薇の秘密を見るように/脇美代子
しっかりと包み込まれた秘密、どきどきするような薔薇の見方もあるのですね。新鮮です。(山野きみ子)

★真っ白のコンバイン光る麦の秋/能作靖雄
<麦秋>の季節が鮮明に捉えられ、いい風景画です。無駄なものがありませんね。(高橋信之) 

★一陣の夜風に騒ぐ夏木立/高橋秀之
夜なので、木立の姿は明らかでないけれど、その木の葉の騒ぎに耳を楽しませ、風を楽しむことができます。(高橋正子)

★夏台風壁にみどりのアラベスク/藤田荘二
夏台風は、風のみで、さほどひどくなかったのでしょう。壁に緑のアラビア風の模様をちらちらと作っています。肩の力を抜いたよい意味での軽さと楽しさがあります。(高橋正子)  

【入選34句】

★草刈り機振れば芹の香立ち上がる/守屋光雅
句がしっかりしているのは、作り手の生活がいいからである。(高橋信之)

★早苗饗や長靴の泥そのままに/大石和堂
★注がれて琥珀の麦茶氷鳴る/藤田洋子
★玉葱の束ねし重さを吊しおく/祝恵子
★伊予絣一糸を紡ぐ音涼し/藤田洋子
★ふっきれて濃い夏空に向き直る/山中啓輔
★茹でたての淡竹の子食む軽き音/柳原美知子 
★黒髪を揺らして白シャツ駆けていく/池田多津子
★天窓に青空広く六月来る/古田けいじ
★桐の実の天辺の空が真っ青/おおにしひろし
★札を打つ万緑深き懐に/野田ゆたか
★黍の花闌けて家族の群れ散れり/碇 英一
★藻の花や明日も使う足洗う/小峠静水
★旧友にはたと出会いぬ青葉の寺/馬場江都
★葉桜を呑み大川の海へ行く/山野きみ子
★雨上がる十薬の花空へ向き/ 加納淑子
<イサム・ノグチ庭園美術館>
★並び立つ石やわらかに新樹光/多田有花
★活けられてなお風を呼ぶ海芋かな/多田有花 
★ホトトギスひと声ありて町静まりぬ/藤田荘二
★ポプラ並木見上げて初夏のアンビシャス/渡辺酔美
★この山もあの山も雨山法師/霧野萬地郎
★明易し口々に伝う真砂女の訃/冬山蕗風
★うす緑ブーケの中のカーネーション/安丸てつじ
★本道を抜け目に広ぐ夏の海/下地鉄朗
★断崖に鳶の鳴き舞う青岬/石井信雄
★白百合の香に迎えられ植物園/磯部勇吉 
★フルートの音色青葉の風に乗り/岩本康子
★黍の花畑の起伏のゆるやかに/澤井 渥
★検査室の素足ひやりと立ちており/宮地ゆうこ
★紫陽花や細き路地行く魚売り/池田和枝
★夕焼けに鳥たち群れて日本海/河ひろこ
★柿若葉ナースの笑顔に迎えられ/山崎美笑
★新樹坂登れば古城佇みぬ/都久俊
★杜若咲いて田道に色を添え/堀幹夫 

▼選者詠/高橋正子 
東京へ三句
軽々とヨット浮きたる眼下の海
夏海を空へ引き連れ飛機昇る
青岬越え雲中を今飛べり