■さら句会/入賞発表(33)■

第201回(2003年5月14日)〜第207回(5月31日) 

第207回入賞発表(5月26日-31日)/高橋正子選

【金賞】
★水の上の青空浅く早苗立つ/碇 英一 
<浅く>は、作者自身の発見なので、リアリティーがある。 (高橋信之)

【銀賞】
★芍薬の花の重さを束ねけり/磯部勇吉
芍薬の楚々とした花が美しく咲き開いて、一花の重さを感じるほどになっている。それを束ねて、清冽な花束となった。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★夏草の匂いつきたる鎌を研ぐ/小峠静水
夏草を刈った鎌の刃には、鋭い夏草の匂いが付いている。その鎌を研ぎながら、生い茂る夏草の強さを実感する。(高橋正子)

★水引いて菖蒲田いっきに色を増す/脇美代子
菖蒲田はそのままでもいい風情を持っているが、そこに水が引かれると、菖蒲の葉も花も俄然生き生きとしていくる。水を得たものは、生き生きと、すずやかである。(高橋正子)

★鉄塔の影を揺らして田を掻ける/おおにしひろし
代掻きをする田の傍に鉄塔が立ち、避けようもなく影を水に落としている。その影を揺らし、また影を受け入れて田を掻く人間の力強い営みがある。(高橋正子)

【特選6句】

★詰め放題ビニール袋に空豆鳴らし/柳原美知子
<空豆鳴らし>が楽しい。日常の生活が楽しいものとなった。 (高橋信之)

★どの田にも箱の形の余り苗/今井伊佐夫
★風鈴の高さをいろいろ雑貨店/守屋光雅(正子添削)
★梅の実の陽へ近きより色づけり/古田けいじ
★みなぎれる樹海若葉に湖目覚む/平野あや子
★初夏に青の花束抱えし娘/山野きみ子  

【入選27句】

★草を刈るひかえの鎌も研ぎ澄まし/今井伊佐夫
★晴れ晴れと実梅色づく里の朝/霧野萬地郎
★浅漬の茄子艶やかに朝茶漬/安丸てつじ
★枇杷山の白き袋の実を包む/吉田晃
★重なりてこぼれ日もなし柿若葉/石井信雄
★鮮やかなコンテナ船や卯浪立つ/岩本康子
★雨兆す薔薇の蕾を剪ることに/藤田洋子
★薔薇の花分厚きドアの玄関に/祝恵子
★ほととぎす鳴いて樹の間の月あかり/宮地ゆうこ
★美容室に予約してより初夏の旅/堀佐夜子
★青空に響く田植えのリズムかな/高橋秀之
★つたの葉をくぐる風の音夏兆す/藤田荘二
★豆ご飯海から風の吹く頃に/相沢野風村
★蚕豆の三つのこぶの強き張り/日野正人
★芝を刈る匂いの中へ鳥の来る/磯部勇吉
★薄切りのたまねぎの渦は紫/池田多津子
<中国地方バイクツーリング>
★断崖に立ち初夏の日本海/多田有花(正子添削)
★実を付けてこぼるるもあり柿の花/加納淑子
★スライスして新玉葱の白透ける/馬場江都 
★幅寄せの車窓に迫る花卯木/野田ゆたか
★海沿いを走るトロッコ桐の花/池田和枝
★夜明け前鳥の声止み走り梅雨/大給圭泉
★亡き人の形見分けせし衣更/冬山蕗風 
★誓子句碑枝垂れ桜の木下闇/澤井 渥 
★赤々と沈む日輪植田染む/能作靖雄
★鰻屋は長き行列晴れたる日/右田俊郎
★紫陽花のあまねき濡れて紫紺映ゆ/都久俊

▼選者詠/高橋正子
夏台風来ている暗さを窓に見る
黒き影となれるポプラに夏台風
全反射の海を残して夏日入る  

第206回入賞発表(5月21-25日)/高橋正子選

【金賞】
★田水張る波紋は草を揺らしつつ/祝恵子 
観察の眼がいい。やさしさがいい。(高橋信之)
観察の目がゆきとどいて、田水が張られて田が息づく様子が細やかに表現された。(高橋正子)

【銀賞】
★明易し軒に薬草乾きつつ/小峠静水
軒に薬草が乾く爽やかな朝がある。「明易し」を実感できる快さがいい。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★勢いが土に響きてさみだるる/碇英一
さみだれの強さと勢いを、「響きて」とした表現の確かさがこの句の命となっている。さみだれが地を叩きはねている様子がリアルである。(高橋正子)

★新緑やわが町包み空までも/安丸てつじ
<空までも>は、思い切った表現だが、それが事実として伝わってくるのは、作り手の感動に偽りがないからであろう。(高橋信之)

★停車ごと薫風を乗せ湖西線/野田ゆたか 
琵琶湖沿いの薫風をゆったりと味わう、ローカル線の旅が、爽やかに詠まれ、「湖西線」にいい旅情がある。(高橋正子) 

【特選5句】

★アカシアの向こうを今日の日が落ちる/古田けいじ
アカシアの花房の白が豊かである。夕陽に映えて、なお豊かである。(高橋信之)

★夜濯ぎの窓の闇から田水の匂い/おおにしひろし
<夜濯ぎ>と<田水>との取り合わせがいい。それもただの取り合わせに終わらずに、生活に詩を取り入れたところがいい。(高橋信之)

★片蔭の豆挽く音に香り立ち/青海俊伯
★水辺涼しブッセ諳んず少女の頃/堀佐夜子
★奥飛騨の雲低くして朴の花/今井伊佐夫  

【入選@20句】

★湯と一字ありて涼しき紺のれん/今井伊佐夫
★五重塔若葉の中へすらり立つ/多田有花
★地下鉄を出て春雷と雨しきり/大給圭泉
★茄子植える茎の紫濃きを見て/宮地ゆうこ
★黒揚羽ゆらゆらとして勁き位置/山野きみ子
★水打って日差しぐらりと揺れており/小峠静水
★田の隅に四角な早苗置かれ居て/堀佐夜子
★夏の樹の匂いのなかを下校する/野仁志水音
★鉄棒に夏服次々回転す/池田多津子
★豆飯の匂い満ち来て炊き上がる/藤田洋子 
★麦秋の煙に薄き天守閣/吉田晃
★モノレール青葉の上を一直線/馬場江都
★キラキラと水平線まで夏の海/岩本康子
★投げ入れの白百合凛と生けており/片平奈美
★少年の投網正しく円を描く/霧野萬地郎
★一服の新茶に重き荷を解き/青海俊伯
★氷床青緑眩し鯖並ぶ/能作靖雄
★明日開く蕾を残し薔薇崩る/加納淑子
★葉桜を窓辺に置いて読書する/日野正人
★飛行船初夏の都会を一巡り/右田俊郎 

【入選A/26句】

★春菊を届けし人と手話交わす/守屋光雅
★ゴルフ帽汗をぬぐいて深かぶり/林緑丘
★とんぼうのはらりと空気切りて発つ/宮地ゆうこ
★都忘れ愛でつつ朝の靴を履く/安丸てつじ
★手作りの和菓子ほっこり新茶飲む/池田和枝
★白傘に翳を映して紅牡丹/都久俊
★帯固く扇をさして気をただす/山野きみ子 
★万緑に尽きせぬ会話吸い込まる/平野あや子
★我が指呼をくまなく照らし新樹光/野田ゆたか
★花月桃房の重みを掌に/下地鉄朗
★一塊りに十薬しらじら咲ける/福田由平
★新樹から電線の張り抜け出たる/脇美代子
★薔薇を活け手作り壷のいきいきす/澤井渥 
★一枚の空の青さに楠若葉/大給圭泉
★旅先の日暮れの時差に豆ご飯/大給圭泉
★楠若葉つぎの旅待つ旅鞄/大給圭泉
★ぼうたんの明日散る色を覚えおく/小峠静水 
★ラムネ抜く音弾け飛び青空へ/小峠静水
★青葉風空に大きく楠揺らす/藤田洋子
★開ききる薔薇大輪を正面に/藤田洋子
★記念樹の楓若葉の色を増す/池田多津子
★麦わらの軽くしゃぼんをふくらます/池田多津子
★天辺の山藤透きて淡き白/相沢野風村
★滝落ちて滝の重みに水の増す/相沢野風村
★山藤の匂える峡の坂登る/磯部勇吉
★トンネルの中の県境若葉風/磯部勇吉

▼選者詠/高橋正子
漆黒の夜を一声ののほととぎす
山水の落ちて紫陽花まで伝う
栴檀の吹かれて花のふさふさと  

第205回入賞発表(5月20日)/高橋正子選

【金賞】
★青梅の丸きひかりが籠に揃う/宮地ゆうこ
観察が丁寧なのは、対象に注がれた優しさである。<揃う>がいい。(高橋信之)

【銀賞】
★あちこちに代田光りて時を待つ/岩本康子
<時を待つ>は、作者の主情だが、<代田>の気持ちになっているので、伝わってくるものに無理がない。(高橋信之)

【銅賞/2句】
★林檎咲く村を過ぎまた花林檎/河ひろこ
林檎の花に彩られて明るい村々の情景が浮かんできます。白い林檎の花は可憐で美しいですね。(多田有花)
このような風景をまだ実際に目にしたことがありませんが、、杏や林檎の花が一斉に咲く北国の美しい春を想像します。(岩本康子)

★草刈のひと鎌風を光らせる/小峠静水

【特選5句】
★胡蝶蘭すべて開いて夏を真白/藤田洋子
<中国地方バイクツーリング>
★走り入る青葉若葉の輝きへ /多田有花
★夏めきて立つ吊橋の確実に/おおにしひろし
★桐の花香りたつ日に旅に立ち/大給圭泉
★下校児の背中で跳ねる夏帽子/吉田晃 

【入選17句】
★ほどきゆく旅の荷物や初夏の風/池田和枝
★薫風や玉砂利光る京都御所/石井信雄
★梅もぐ手に影の青さがさわさわと/宮地ゆうこ
★大木にバラの絡まり風抜ける/祝恵子
★目瞑るとも緑あふるる今日の旅/河 ひろこ
★夏ふとん秒針を刻む夜更けに/福田由平
★青芝を越えてホースの水光り/藤田洋子
★雨音のやさしき夕べ著莪の花/加納淑子
★鉄骨の錆びゆく現場迎え梅雨/山野きみ子
★公園の木椅子に寄れば樹雨降る/山野きみ子
★雷雨去り木や草花も生き生きと/堀佐夜子
★ハラと散る黄薔薇に添いし蕾かな/脇美代子
★五月雨て匂いやさしきカモミール/脇美代子
★沖待ちのコンテナ船のかげろへり/澤井 渥  
★葉隠れの桃の実さがし袋掛/磯部勇吉
★鯉かくれ水輪のこりて夏の暮れ/下地鉄朗
★噴水の青さに大空引き返す/小峠静水

▼選者詠/高橋正子
芍薬のほぐれんとして香の強き 
栴檀の花に光りの強かりき
其処ここに栴檀の花のうすむらさき  

第204回入賞発表(5月19日)/高橋正子選評
  
【金賞】
★代田掻く鉄塔の高き影を入れ/おおにしひろし(信之添削)
田圃の中に立つ鉄塔だが、代田を掻くころになると、鉄塔も空も代田の水に映るようになる。鉄塔も水に映ると涼しげである。

【銀賞】
★爆心にいまふたたびの若葉風/多田有花
「爆心」は、前書きから、原爆の爆心地の広島のこと。原爆後は、草木も生えないと言われた広島市だが、樹木も茂り若葉となって、心地よい風が「いまふたたび」吹いている。その地の立たねば、この実感は持ち得ないものである。

【銅賞/2句】
★草刈の香のあおぞらへ放れゆく/宮地ゆうこ
草を刈り進むにつれ、草の匂いが妨げられず青い空へと放たれてゆく。草の匂いと、あおぞらのコンビネーションが、爽やかである。

★郭公鳴く今朝の空気を深呼吸/守屋光雅
みちのくもいよいよ夏である。起きたばかりの作者に、郭公の鳴く声が澄んではっきりと耳に届く。すがすがしさに思わず大きな深呼吸。  

【特選5句】
★夏霞み包める町の青かりき/岩本康子
★発動機の音して代掻き始まりぬ/祝恵子
★夕雲雀滑り落ち来て影流る/相沢野風村
★少年の見守る中を蝉生まる/安丸てつじ
★ロココとう薔薇の丸みのかぐわしさ/柳原美知子 

【入選25句】
★校庭の新樹かすめて鳶が来る/池田多津子 
★二人静かコップに挿して朝の卓/脇美代子
★施錠して五月の闇を分かつなり/小峠静水
★薔薇展の薔薇咲き満ちて光り合う/藤田洋子
★一町を一枚となし植田かな/磯部勇吉
★夜の風の涼しさ楽しむ帰宅かな/碇 英一
★車椅子夏草匂う風受けて/堀佐夜子
★渓谷にトロッコ登り風薫る/能作靖雄
★夏めいてリュックも軽し登山帽/池田和枝
★夏雲やトランペットを吹き鳴らす/右田俊郎 
★早苗月ラベルのボレロの繰り返し/古田けいじ
★初とんぼ畑へ渡せし板の上/澤井渥 
★休日は男の手料理莢豌豆/福田由平
★万緑の土手を河口へ自転車で/霧野萬地郎 
★豆飯を掬えば香り立ち上がる/日野正人
★差し伸べる枝平らかに若楓/山野きみ子
★囀りを収めてひろし今朝の空 /下地鉄朗
★詠むときも憩えるときも若葉風/野田ゆたか
★バラ園は色とりどりに誘われし/津村昭彦
★葉桜の下太極拳ひそとやり/大給圭泉
★師と歩む青葉影差すゆるき坂/柳原美知子
★青葉風切って颯爽白いシャツ/岩本康子
★塀際に咲いて明るき著莪の花/加納淑子
★青蔦に覆われし塀膨らみて/馬場江都 
★車より発動機降ろす夏帽子/祝恵子

▼選者詠/高橋正子
 萬翠荘三句
わが佇てるオールドローズに風少し
藤棚の茂りに憩うインド人
今年竹青き竹幹奥へまで  

第203回入賞発表(5月16-18日)/高橋正子選評 

【金賞】
★一山の揺れて奥飛騨青嵐/今井伊佐夫
一山を揺らすほどの青嵐に、奥飛騨の山深さがよく表現され、堂々とした句。(高橋正子)

【銀賞】
★筍のじかに値を書き売られおり/大給圭泉
マジックインクなどで、皮に直接売値を書いて筍が売られている。掘ったそのままに値を書く素朴さに、いい季節感がある。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★パソコンの軽さ楽しむ若葉風/安丸てつじ
パソコンを題材にした俳句で、成功している。パソコンが調子よく動いてくれることが、気持ちの軽さ、楽しさになっている。若葉の風の心地よさを読み手も共有できる。

★高層ビル雲に入り込み新樹雨/山野きみ子
都心の高層ビルは、低い雨雲なら上のほうが雲に入り込んでしまうことが往々にしてある。新樹の光りと対照的な鈍色の雨雲、上方が雲に消えたビル、降る雨など、雨の日ながらも、ゆたかな心境が感じられる。

【特選6句】
★山清水ペットボトルを溢れ落ち/相沢野風村
★日の没りて明るき青葉の風吹けり/碇 英一
★接ぎ穂跡消えてなすびの伸び盛る/野田ゆたか
★鬼灯に花は白さを見せてつく/祝恵子
★満月のひかりを透かす棕櫚の花/堀佐夜子
★ほたる光るいつもの川に新しく/池田多津子 

【入選26句】
★麦秋に疎水の音の澄みにけり/脇美代子 
★未知の地へ旅装整い若葉萌ゆ/平野あや子
★雲ふたつ映し代田の澄みゆけり/池田和枝 
★若葉の香に浸りきったる木の校舎/日野正人
★新しき色して節なす今年竹/古田けいじ
★灯を消せば月光あふる菖蒲風呂/宮地ゆうこ
★薔薇展に日の傾きて色濃くす/おおにしひろし
★初夏の夜の匂いへ列車降り/野仁志水音
★鶯を連れてそこまで回覧版/磯部勇吉
★祭笛ガード下へと進み入る/霧野萬地郎
★花苗を友と別け合う夕薄暑/堀佐夜子
★朝顔の軒下五間みばえ苗/今井伊佐夫
★衣更へて駅員の指差姿眩し/都久俊
★夏風にジャンプシュートの網揺れる/吉田晃
★湧き立てる新樹の陰よりバスが出る/小峠静水
★小さき巣に小さくもぐりて街燕/山野きみ子
★鎌倉宮花蕊降らす楠大樹/右田俊郎
★穏やかに卯月曇りの日暮れかな/安丸てつじ
★母の肩ちいさくなりてカーネーション/片平奈美
★めだか飼うすいれん鉢の海原に/大石和堂
★母の日に健やかなれと鉄線花/能作靖雄
★紫陽花の蕾膨らむ朝化粧/冬山蕗風
★いく橋を潜りて燕飛び交いぬ/澤井渥
★薫風に校歌斉唱同期会/岩本康子
★立ち並ぶ新樹空を青にそめ/下地鉄朗
★春光を花の種と共に蒔き/大給圭泉  

第202回入賞発表(5月15日)/高橋正子選評 

【金賞】
★桐の花その高さより風が吹く/多田有花(正子添削)
「風があり」を「風が吹く」と添削した。透明な風に動きが生まれたであろうか。 高く咲く桐の花の色と、その辺りから吹く風をよく肌に感じている。

【銀賞】
★植田遠く地球の円を保ちけり/相沢野風村(信之添削)
「遠植田」は、言葉としての熟成されていないので、「植田遠く」に添削した。広々とした植田は、こころなしか弧を描いている。緑の弧が心象にさわやか。

【銅賞/2句】
★麦秋や遥かな橋を一輌車/池田和枝
麦秋のうすけむる橋を一両電車が、カタコト走る牧歌的な風景に心がやすらぐ。

★花茨水の光りを引きよせて/おおにしひろし
茨の花が水辺になだれるように咲いている光景だが、水の光りが白い茨の花に映って花諷詠として美しい。

【特選5句】
★烏賊の墨抜く手の染まる若葉冷え/平野あや子
★朝凪の浜に埋もる砂防柵/霧野萬地郎
★砂利舟の喫水深く夏の雲/右田俊郎
★麦の秋日に一便のバスが来る/小峠静水
★過ぎし日のまばたきに似て夕蛙/大給圭泉 

【入選13句】
★笹百合の横向き香り流しけり/古田けいじ 
★若葉雨傘一杯に受け止める/日野正人 
★花いばら白き花群れ静かに雨/祝恵子
★小雨なればちょと其処まで青田道/堀佐夜子
★新樹雨都庁のビルは雲に消え/山野きみ子 
★庄川峡卯の花曇り水光る/能作靖雄
★蕗を剥く北向き厨灯しけり/加納淑子
★贈られしカーネーションを身近に置く/馬場江都 
★揖斐長良分ける千本松の芯/澤井渥
★独り言海鳴りに消へ夏の風/片平奈美
★揚羽蝶みかんの葉が好きそこに産む/磯部勇吉
★雨粒に青の尚ます新樹かな/下地鉄朗 
★体育館に音響かせてさみだるる/池田多津子  

第201回入賞発表(5月14日)/高橋正子選評 

【金賞】
★今心軽し緑の立つ湖畔/野田ゆたか
松の芯がすくすくと伸び、そこから若々しい緑が生まれる。その緑立つ湖畔に立っているすがすがしさに、今こそ心が軽い。

【銀賞】
★雪渓とラバ半々に今朝の富士/霧野萬地郎
「今日」をもっと限定し、「今朝」とした。少しは、富士山が立体的に感じられるであろうか。半々となった雪渓とラバがリアルに目に浮かぶ。初夏の富士山がさわやかである。

【銅賞/2句】
★分け入って前も後ろも新樹光/多田有花
どこに分け入っても若葉の萌え出た光に圧倒される。前も、後ろも。新樹におぼれそうな作者である。

★酸素張り袋の金魚を積みて売る/祝恵子
ビニール袋に、水をほどほど入れ、酸素を袋が張るほど入れて、金魚を売っている。それを、水風船でも重ねるように積み重ねて売っている。きらきら光る金魚であるけれど、どこかあわれ。

【特選5句】
★水口の落ちる水受け余り苗/今井伊佐夫 
★ひたむきに真っ直ぐ歩き風薫る/池田和枝
★十枚の田植え一人の機械音/相沢野風村
★新緑や空いっぱいに色戻る/片平奈美
★朴葉餅蒸すに程よき葉の透けて/古田けいじ 

【入選12句】
★苺盛る水弾くままガラス器に/藤田洋子
★谷若葉を次々渡る送電線/日野正人
★麦刈れば車の中に麦匂う/吉田 晃
★藤の花風に吹かれて山揺るる/磯部勇吉
★島つなぐ大橋をゆき初夏の風/大給圭泉
★気まぐれのうすら日射して花梔子/堀佐夜子
★田水引く水面激しくさみだれて/おおにしひろし
★虹鱒の釣られて草を濡らしけり/脇美代子
★枝先は流れに触れて茨の実/澤井 渥
★お堀端若葉と風と水匂う/能作靖雄 
★闇に打つ気迫の鼓薪能/右田俊郎 
★掲示板紙剥されて緑陰に/小峠静水 

▼選者詠/高橋正子
雨を来て楓の花の紅ほのか
黄菖蒲の花の売られて雨かかる
青葉雨心安くて蝙蝠傘