■さら句会/入賞発表(32)■

第191回(2003年4月30日)〜第200回(5月13日) 

第200回入賞発表(5月13日)/高橋正子選

【金賞】
★梅の実のつめたさ拾い手のひらに/祝恵子
原句の<梅>は、季語では<梅の花>であり、<落ち>は、<手のひらに>
落ちたのか、曖昧なので、そこをはっきりさせた。いい感動があれば、それ
を平明に表現すれば、それで充分です。(高橋信之)
青い梅の実の珠のような冷たさが魅力。(高橋正子)

【銀賞】
★朝風に青葉の匂いを深呼吸/堀佐夜子
青葉の匂いを「深く吸う」というのではない。「深呼吸」なのである。朝の
深呼吸のすがすがしさに、生きていることの嬉しさがある。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★庭下駄の新調となる夏来る/相沢野風村
庭下駄を新しくし、夏らしく仕立てた、いい生活がある。清潔な下駄に夏が
来たことを感じる。(高橋正子)

★麦畑風の形に揺れうごき/下地鉄朗
麦畑が風のなすままに揺れて、風の形をあきらかに見ることができる。ひろ
びろとした麦畑を吹く風の心地よさが伝わってくる。(高橋正子)

【特選5句】
★街灯に照らさる若葉の瑞々し/日野正人
<瀬戸大橋>
★橋脚は頭上に高く夏きざす/多田有花 
★影もまた大緑陰に歩みけり/片平奈美 
★教室の窓幾度もよぎる夏つばめ/池田多津子
★緑蔭に憩いて気付く昼の月/馬場江都 

【入選14句】
★泰山木空はまだまだ高くなる/小原亜子
★トマト苗さらさら青き風に植う/宮地ゆうこ
★きらきらと木漏れ日揺らぐ若葉谷/霧野萬地郎 
★白牡丹夕べの雨を光らせる/磯部勇吉
★野イチゴの甘さを顔で語る子よ/岩本康子 
★山藤の散り敷く道をカーブする/古田けいじ
★木漏れ日に揺れる新樹下丸太椅子/山野きみ子
 幻住庵
★蕉翁の炊ぎの泉しゃがの花/福田由平
★ひと雨を授かり植田色をます/澤井渥(正子添削)
★緑陰に紅茶のジャムの溶け始む/平野あや子
★身の丈にかなう片陰曳きながら/小峠静水
★泰山木見あぐる蕾窓近し/祝恵子
★薫風の青き野面にテープ伸ばす/おおにしひろし
★新採の研修生や若葉風/吉田晃

▼選者詠/高橋正子
遅ればせのしみじみ食べし柏餅
花バケツ青葉影差す下に置く
夏蜜柑の冷たき甘さを言いあえる  


第199回入賞発表(5月12日)/高橋正子選評 

【金賞】
★茄子苗の根元の太きものを買う/今井伊佐夫
核心をずばり言った句。茄子苗の根元の太いものは、水や肥料を良く吸い上
げ、畑にしっかり根を張ってくれる。太い茎は生き生きとして、その紫色に
も魅力がある。初夏の農の生活が正直でさわやか。

【銀賞】
(北九州響灘、風力発電風車)
★薫風に並びて白き風車群/岩本康子
風力発電の風車は、ほとんど外国製だそうだ。その瀟洒な白い風車が海風を
受けいっせいに回る様は壮観でもあり、近未来を感じさせてくれる。

【銅賞/2句】
★母の日やつぼみの多き花を買う/古田けいじ
母の日に、まだ蕾の多い、これから咲こうとする元気のいい花を選んだので
ある。華やかさよりも、長く楽しめる蕾を選んだのは、「母の日の母」への
遠慮ない間柄があってのことか。

★衣更オフィスに朝の声弾む/右田俊郎
衣更えて、身軽くなった若い女性社員の朝の挨拶の声だろうが、オフィスに
弾んで、オフィスが明るい。


【特選5句】
★苺熟れ父母の菜園風抜ける/藤田洋子 
★緑陰に子供集めて紙芝居/霧野萬地郎 
★サックスの音色を運ぶ若葉風/日野正人
★湯けむりの街知りつくし夏燕/今井伊佐夫
★岬にある学校に咲く八重桜/河 ひろこ 

【入選15句】
★図書館の窓いっぱいの新樹光/堀佐夜子
★水たまり若者ひと飛び夏きたる/祝恵子
★水鱧の鋭き歯並の口尖る/平野あや子
★新緑の林に息を深く吸う/磯部勇吉 
★紀尾井坂残る城垣薊濃し/山野きみ子 
★如雨露水吸込み早し胡瓜苗/相沢野風村
<中国地方バイクツーリング>
★エンジンの音軽やかに夏めく日/多田有花
★薫風の紐に干さるるぜんまい染め/河 ひろこ
★夏霧に登頂を声濡らしけり/吉田 晃
★ひめじょおん明治生まれの亡母なりき/加納淑子
★白猫の逝きて鉄線花の蒼し/池田和枝 
★雲の青さを飛機透明に飛ぶ五月/おおにしひろし
★薄曇る樗の花に陽のリズム/宮地ゆうこ
★春光に背を押されおり始発バス/冬山蕗風
★灯を消して母の寝息や葭障子/小峠静水

▼選者詠/高橋正子
青ポプラ中に雀の弾け鳴き
ポプラ立ち家内深くみどりさす
じゃがいもの花の紫遠目にも  

 
第198回入賞発表(5月9〜11日)/高橋正子選

【金賞】
★青梅のころころ生れて照りはじむ/山野きみ子
梅の実がつくころになった。青梅が好きなのであろう。「ころころ生れて」
と、かわいらしく形容した。その実が照るような緑になっていっそうゆかし
いものとなった。(高橋正子)

【銀賞】
★みずうみへ風が揉みあう山法師/小峠静水
白い山法師の花を風がよく吹いている。「風が揉みあう」は、このごろの風
を表現して妙。「みずうみへ」が、この句をさわやかな緑色で覆うことにな
った。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★駆け登る花アカシアの道にまで/霧野萬地郎
アカシヤの白い花を見つけ、並木であろうか、アカシヤの咲く道まで一気に
駆け登る。青春があって、楽しい。(高橋正子)

★日傘閉じいつもの顔に戻る妻/相沢野風村
日傘を差している妻は、心なしかよそゆきの顔である。日傘を閉じ、普段の
妻の顔に戻ったときを逃さず捉えた。普段の顔にやすらぐものがある。(高
橋正子)

【特選5句】

★バラの花水滴光り香を散らす/祝恵子
★夏が好き生まれ育った明石浦/都久俊
★きらきらと若葉の冷えは樹に空に/小峠静水 
★薔薇の花闇の深さのきはまりぬ/大給圭泉
★五月雨の田んぼに赤いトラクター/林緑丘

【入選20句】

★矢車の軽き音立て光を回す/池田多津子
★玉葱の白いひかりを薄切りに/脇美代子
★ランナーの眼下に広ぐ若葉かな/津村昭彦
★ふるさとの短き春や岩木山/右田俊郎
★そらまめの全て空向き実をつけし/吉田晃
★風薫るキャッチボールの父と子に/堀佐夜子
★母の日の花選び買う楽しさに/藤田洋子
★朝市に浴衣着て買う夏草履/今井伊佐夫 
★薫風や家中の窓開け放つ/澤井渥
★蓮若葉水玉ゆらしつつひろぐ/磯部勇吉
★万緑へしぶきを上げてダム放水/古田けいじ
★磯香連れ町家に入りし夏つばめ/平野あや子
★若葉影いくつ潜りて山の田へ/宮地ゆうこ
★一日で済ます総出や袋掛/野田ゆたか
★夏蜜柑転がる現場の昼休み/池田和枝
★朴の花に夕焼け薄くとどまれる/おおにしひろし
★石塁に沿いアカシアの花香る/河勝比呂詩
★母の日やいつもと変わらぬ笑顔あり/日野正人 
★夏空にミューゼスの夢高く射る/能作靖雄 
★刈草の匂い古墳に放たれぬ/柳原美知子


▼選者詠/高橋正子
翠得てアスパラガスの茹であがる
青嵐に起きしばかりの顔晒す
柿の花ポンプの水のあふれ出る  

 
第197回入賞発表(5月8日)/高橋正子選

【金賞】
★山間の村動きだす鯉幟/大給圭泉
山間の朝であろうか。滴るような緑の山に囲まれた村に泳ぐ鯉のぼり。鯉の
ぼりが泳ぐことにより、村が動き、活動し始める。生き生きとした五月であ
る。(高橋正子)

【銀賞】
★泉への道濡れ足跡残りおり/相沢野風村(正子添削)
泉にはこんこんと水が湧いているのだろう。泉までの道は濡れて、泉まで人
が来た証拠の足跡がある。いろんな場面を想像させてくれる。泉に水を汲み
にきたのか。泉の水が滲み出て道が濡れているのかなど。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★北の白さを見せて鈴蘭咲きゐたり/加納淑子
鈴蘭の花の白さを、北の白と言った。うすく緑がかった白である。想いをな
にかへ繋げてくれる可憐な白である。(高橋正子)

★山藤を見てすがすがし三時の茶/今井伊佐夫 
一仕事した後の三時のお茶は、山藤を見ながらの一服。山藤のすがすがしさ
に疲れもとれる感じがする。山にある自然の花は本当にいい。(高橋正子)

【特選5句】

★青葦の鋭く空へ葉を解く/小峠静水
★島の端へ波たたみくる青葉潮/平野あや子
★そらまめの太りたる畑寺への道/祝恵子
★間伐の杉のテーブル風薫る/磯部勇吉
★遠雷を聞きつつ寝落ち夢の中/堀佐夜子 

【入選14句】
★谷埋めし泳ぎを競う鯉幟/日野正人
★夕風を待ちて万緑あをあをと/片平奈美
★雨上がる若葉の揺らぎやわらかに/古田けいじ 
<小田原城へ>
★新緑のその山頂に一夜城/霧野萬地郎 
★夏きざす直線の陽の入る庭/脇美代子
★黄緑を映して流るしゃぼん玉/池田多津子
★鳶尾草の紫静か一輪挿し/河勝比呂詩
★下校児の黄帽子飛ばす若葉風/宮地ゆうこ
★おおばこの畦に小昼の農一家/澤井 渥
★帰省子に土産の蕗を煮つめおり/平野あや子
★繁みから繁みへ雉の声短か/おおにしひろし
★霊柩車斎場へと桜並木/冬山蕗風
★緑濃き渓流に噴く露天風呂/能作靖雄 
★通勤の行きも帰りも新緑を/柳原美知子(正子添削)

▼選者詠/高橋正子
薔薇売りの薔薇の匂いを風に混ぜ
カーディガン紺色羽織り若葉冷ゆ
野茨の清冽垂るる山の蔭  


第196回入賞発表(5月7日)/高橋正子選

【金賞】
★噴水や水無き空に立ち生まる/片平奈美(正子添削)
無機質と言わないまでも空には水がなく、今日の空は高い。そんな空に水が
噴き上がり、噴水として生まれた。面白い視点である。(高橋正子)

【銀賞】
★日が暮れ行き若葉静かに色閉じる/日野正人
「色閉じる」に、夕暮れの静かな若葉がよくイメージされている。次第に、
照明のライトが絞られていくように、若葉は色を消していった。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★日の丸旗連ね浦町こどもの日/太田淳子
どの家にも日の丸が立てられ、昔ながらに祝われているこどもの日である。
海の光を受けて、浦町の家並みが明るい。古き良き時代の日本がここにある
。(高橋正子)

★窓一枚若葉の占めて明るかり/岩本康子
よいのは、「窓一枚」である。大きなガラスの窓を、若葉が占めて、体まで
緑に染まりそうである。(高橋正子)

【特選5句】

★杉皮を屋根に葺き替え風薫る/今井伊佐夫
★枝重ね水木の花のまっ平ら/磯部勇吉
★栴檀の若葉を映す校舎窓/宮地ゆうこ
★カレンダー剥がせば夏の海の色/堀佐夜子
★さわやかにアカシアの香の吹かれくる/脇美代子(正子添削) 

【入選18句】

★夏バラの黄のくっきりと曇り空/祝恵子(正子添削)
★若き蝶清しき風に乗りて来る/山野きみ子
★葬送の列を見送る余花の寺/平野あや子
★ローカル線降りてまつわる夏の蝶/大給圭泉
★噴水の背の高さなる暑さかな/相沢野風村
★歌声の窓の真下に薔薇咲けり/吉田 晃
★花蜜柑養蜂箱は出入り激し/おおにしひろし
★黒髪に白きバレッタ聖五月/池田和枝
★田水入り流れる雲の深きかな/能作靖雄
★頬杖や視野の若葉は見ると無く/小峠静水
★山遠く見えぬ日も咲く桐の花/小峠静水 
★夕暮れに雀の帰る竹の秋/都久俊 
★囀りの前の静寂や朝茶の香/野田ゆたか
★茄子苗や一直線に整然と/冬山蕗風
★バラ咲けり花の真中から咲けり/古田けいじ 
★子らすでに蝶となりいて蝶を追ふ/澤井 渥
★病みし木の三年越しの若葉かな/霧野萬地郎 
★雨止んで本来元気鯉幟/河勝比呂詩

▼選者詠/高橋正子
桐の花まばらに落ちて雨が降る
青柳に降る雨さわさわ身を濡らす
囀り終え若葉のなかへ一直線  


第195回入賞発表(5月6日)/高橋正子選

【金賞】
★風吹けば風にゆだねてあめんぼう/今井伊佐夫
水の面を風が吹くと、水を掴んでいたあめんぼうは、風のなすままに揺られ
てしまう。風に片寄る水の動きが目に見えるようである。 (高橋正子)

【銀賞】
★虎杖の太き一本谷へ伸ぶ/柳原美知子(正子添削)
谷に突き出るように伸びた、太い一本の虎杖が、たくましくも瑞々しい。山
気の冷ややかさを感じるが、それは虎杖の冷ややかさともなっている。(高
橋正子)

【銅賞/2句】 
★ぺダル踏む影くっきりと夏は来ぬ/青海俊伯
さわやかな風を切って自転車を踏んでいる影に、初夏の日差の意外な強さを
思うが、その日差は、心身ともにすがすがしい作者の自画像をここに描き出
している。(高橋正子)

★ビー玉のころりきらりと夏立ちぬ/池田和枝
「ころりきらり」は、転がって、光を透き通らせているビー玉をうまく表現
している。「ころりきらり」の音にビー玉の楽しさがあって、夏立つ日の明
るさが句に満ちている。(高橋正子) 

【特選5句】

★晴れ渡る葉の重なりに実梅生る/山野きみ子
★影蒼き神社の石段夏めけり/大給圭泉
★鶺鴒の飛び立つ一瞬岩残る/小峠静水 
★サンダルに素足かろやかポストまで/河勝比呂詩 
★風紋を踏みて立夏の波際へ/霧野萬地郎 

【入選15句】

★校舎まで囲まれていし代田かな/相沢野風村 
★束ねらる菖蒲の香り湯に浮かぶ/池田多津子
★天道虫わが指を這い大空へ/野仁志水音
★新茶汲む一滴一滴大事とし/加納淑子
★子供の日帰省子ギターを背に発つ/日野正人
★細長き松には細く長い花/祝恵子
★藪てまり咲いて立夏の日の濃ゆし/磯部勇吉
★月光拾いニセアカシアの花仄白/おおにしひろし
★葉桜の緑を流れに映しけり/都久俊 
★満ち潮を汲みて潮干の終わりけり/澤井渥 
★桜葉となりて眩しき田道行く/宮地ゆうこ
★じゃが芋の花貸し菜園の一畝に/堀佐夜子
★コーヒーの香り流れ来て街薄暑/古田けいじ 
★縦横に航跡白く薄暑かな/岩本康子
★チューリップフェア終わりて夏立ちぬ/能作靖雄 

▼選者詠/高橋正子
桐の花そこより谷の始まれる
夏霞島は遠きに青一と色
透き通らんと飛燕の空の夕茜  


第194回入賞発表(5月5日)/高橋正子選

【金賞】
★葉桜の濃き影踏みて子ら駆ける/岩本康子(正子添削)
葉桜のころのさわやかな気候が詠まれている。濃い影の下の心地よさ。そこ
を思いっきり走る子どもたち。のびのびとした五月である。(高橋正子)

【銀賞】
★潮の香の青き気流に鯉のぼり/池田多津子
「青き気流」は、思い切った表現だが、鯉のぼりが泳ぐ青い空が背景にある
。海の近くに揚げられた鯉のぼりが、風にはためいて自由のすがすがしさを
感じる。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★田を打ちて笹沈めらる取水口/脇美代子
田に水を滑らかに引き入れるために、取水口に、笹の葉を沈めた。その笹を
越えて田に入る水がさらさらとして、心地よい季節を感じさせている。(高
橋正子)

★括られて粽しっかと兜の前/山野きみ子
い草や萱などで、しっかりと粽を括ることは、兜の緒をしっかりと締める心
構えとも、相似ているように思える。笹の葉を巻き、萱で結わえられた粽の
形がなんともよい。(高橋正子)

【特選6句】

★児等植えし棚田の早苗揺れている/能作靖雄 
★公園の新樹へ子等の声響き/加納淑子
★リラの咲く道へ少女の鼓笛隊/霧野萬地郎
★バケツには鮒が六匹子供の日/池田和枝 
★しなやかに若葉匂いてダム満水/平野あや子
★菖蒲湯の白いタオルで湯をすくい/相沢野風村 

【入選22句】

★麦藁を踏めば散ばる空気腫れ/小峠静水 
★畝立ちてポンプ据えらる苗田かな/河勝比呂詩
★ヨシキリの夕陽に胸を照らし鳴く/古田けいじ
★天道虫彼らの宇宙飛んでいて/河勝比呂詩 
★窓開けて菖蒲湯の中風入れり/相沢野風村
★鎌休め夏鶯を楽しめり/今井伊佐夫
★透きとおる若葉につづく今朝の空/宮地ゆうこ
★太鼓橋影ゆらぎをり春の朝/大給圭泉
★汐風や黄ばむ気配の麦畑/右田俊郎
★遺跡丘陵眼下にひろぐ植田かな/磯部勇吉
★揚羽蝶空より降りて目の高さ/藤田洋子
★囀や鈴さやかなる杜の朝/石井信雄
★潮流の夏を告げおり自鳴砂/野田ゆたか
★つばな抜いて手に柔らかく穂のぬくみ/おおにしひろし 
★色違うユニホーム干さる風五月/祝恵子(正子添削)
★大凧や休みし風も子供の日/津村昭彦
★菖蒲湯は子供と親も銭湯かな/津村昭彦
★子供の日常のたつきと終りけり/堀佐夜子
★街路樹の程よき陰り若葉風/堀佐夜子
★イラクにも笑顔が戻りこどもの日/冬山蕗風
★小さな手風船ぎゅっと握り締め/高橋秀之 

▼選者詠/高橋正子
唐辛子の苗一本に早も花
夕燕遠くへ行かず池の上
百合の花開けば互いが重なる  


第193回入賞発表(5月2〜4日)/高橋正子選

【金賞】
★柏餅開きて残る葉となりき/相沢野風村(信之添削)
柏餅を食べたあとの柏の葉は、柏餅を包むための用はなくなって、全くもと
の葉というものになっている。「葉となりき」は、柏の葉の柏たる姿となっ
て、誇らかである。柏の葉の風趣がたのしい。(高橋正子)

【銀賞】
★早や鮎の売られ氷に薄緑/古田けいじ
鮎は、香魚と呼ばれるほど、姿といい味といい、そしていただくとふっと香
りさえ立って、気品がある。詰められた氷に薄緑の鮎の色が透けてすずやか
。渓流の色に染まった鮎の薄緑である。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★潮干狩り目線の先は水平線/堀佐夜子
潮干狩りの合間に目を遣る先は、水平線である。ひろびろとして明るい海を
見ると、さわやかな気持ちになる。オゾンをいっぱい吸って、元気がでそう
。(高橋正子)

★筍の一皮ごとに香りたち/青海としひろ
感動が素直で、表現もまた素直なので、伝わってくるものに真実がある。<
香りたち>がいい。(高橋信之)

★揺れあえる影の弾みや藤の花/小峠静水
<影>を詠んで、<藤の花>の深いところを捉えた。単なる写生でなく、自
然の本質的なところを捉えた。作り手の内面の深さは、俳句を長く続けるこ
とによって生まれくる。(高橋信之)

【入選36句】

★杜若咲いて水の香部屋に満つ/宮地ゆうこ
★真っさらのカーテン越しに五月の陽/安丸てつじ
★天草干す風の道筋選びおり/平野あや子
★力強き星瞬きぬ夜の新樹/加納淑子
★筒鳥の遠くに憲法記念の日/磯部勇吉 
★海風に揺れるナズナの小道行く/野仁志水音
★飛機の影新樹の地球滑り行く/日野正人
★大根の実がはりつめる野の五月/おおにしひろし
★夕映えに麦の穂先の透明に/脇美代子
★島巡り澄みつつ引きし青葉潮/柳原美知子
★山裾の家々さやかに五月光/馬場江都
★鉄線の絡みしままによく咲けり/霧野萬地郎
★ガラス戸に若葉の揺れてケーキ焼く/藤田洋子
★夕明し今年最初のかわほりに/碇英一
★若葉日々川面に影を膨らまし/太田淳子
★日に日にと蕾は厚くアマリリス/祝恵子
★芍薬の蕾は昼の陽に丸く/古田けいじ
★蛇苺度胸のあるのは女の子/戸原琴
★銀杏若葉すり抜けて行く潮の風/山野きみ子
★海に入る川面に揺らぐ鯉のぼり/河ひろこ
★赤々とゆっくり大きく春陽落つ/岩本康子
★白牡丹水に散りけり二三片/都久俊
★山影はすでに初夏なり空すがし/大給圭泉
★田植機を木陰におきて昼休み/澤井 渥
★ゆく春や礼服なりし若夫婦/野田ゆたか
★玄関に明るきマット五月来る/宮地ゆうこ
★若葉揺れる土手に黄色の帽子揺れ/池田和枝
★柿若葉引越し荷物届く家/脇美代子
★大空に自由自在の鯉幟/青海俊伯
★遠蛙磐越道に灯の走る/磯部勇吉
★春耕や暁の土握りしめ/冬山蕗風
★えんどうの空を探れる背丈かな/碇 英一
★笹の香や頂き物の粽蒸す/河勝比呂詩 
★春光をちらし飛行機消えゆきし/大給圭泉 
★大鉢に溢れんばかり金魚草/安丸てつじ
★かくれんぼ欅若葉の中にあり/相沢野風村  


第192回入賞発表(5月1日)/高橋正子選

【金賞】
★木々高く灯が集まりし春祭り/相沢野風村
東北の春祭りは、永い冬を過ごして来ただけに喜びも大きい。農耕の始めを
祝う祭りか、桜の祭りか。木々に高く雪洞が灯されているのだろうか。「高
く集まり」に叙情がある。ほのぼのと、遠くを憧れるように灯っている。
(高橋正子)

【銀賞】
★羽化の蝶陽に出でしより影生まる/藤田洋子
羽化の瞬間を見届けた貴重な句。しわしわの羽が広がり、陽に飛び立つとき
、早も、はっきりと影をもっている。命が生まれた確かな事実を実証する影
である。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★激戦のたすきをたたみ若葉風/青海としひろ
作者は、二期目の選挙に当選したとのこと、お祝い申し上げる。厳しい選挙
を戦ったあとの爽快感が、季語「若葉風」に集約されている。「たすきをた
たみ」の実直な行為は、支持者への感謝の気持ちでもあろう。(高橋正子)

★五月晴足場を軽々ニッカ−ズ/堀佐夜子(正子添削)
「五月晴」の「五月(さつき)」は、もともと陰暦の五月で、「五月晴」は、
梅雨の合間の晴れ間を言ったが、最近では、誤用され、陽暦5月の晴れ間と
して使われるようになっている。さわやかに晴れた空に組まれた足場を、ト
ビの人が軽々と渡るのを見ての驚きがある。(高橋正子) 

【特選5句】

★夕風を抱けば初夏の中に居る/大石和堂
★五月来る診察室も明るい陽/古田けいじ
★抜きん出る若竹まっすぐ青空へ/宮地ゆうこ
★雨音や白薔薇匂う部屋におり/小原亜子
★ビル街に翼を広げ初燕/高橋秀之  

【入選21句】

★空の蒼若葉の樹々の濃く立ちし/おおにしひろし
★アゲハ蝶見えなくなるほど高く飛ぶ/野仁志水音
★四季咲きの薔薇一輪に五月来る/加納淑子
★聖五月木綿のシャツに手を通す/池田和枝
★絮舞いしタンポポの茎立つばかり/祝恵子
★黄金週間どの菜園も鍬仕事/霧野萬地郎
★鰆舟帰りて刺し身届きたる/平野あや子
★病院の窓口に真白しアマリリス/磯部勇吉 
★うまごやし堰落つ水の光りけり/澤井渥
★曇天に客船白く夏めきぬ/山野きみ子 
★若葉下少年のピアス光りおり/大給圭泉
★高らかに産声上がる鯉幟/右田俊郎
★青空に水を得たるや鯉幟/石井信雄 
★牡丹の咲き崩れいてなお女王/河勝比呂詩
★大南風明けて小鳥の声のどか/能作靖雄
★春祭り周囲は一面水の里/相沢野風村
★カレンダー一枚捲りて五月晴れ/岩本康子
★蝶生れて飛びたつ翅を日に透かす/藤田洋子
★若葉風乗せて電車の行き違う/吉田晃
★園児らの声にはしゃぐ鯉幟/冬山蕗風
★紀伊はるかなびく煙に五月来る/平野あや子

▼選者詠/高橋正子
船内にカレーの匂い潮五月
春疾風潮を打っては船揺らす
茄子苗に花生きいきと薄むらさき  

   
第191回入賞発表(4月30日)/高橋正子選

【金賞】
★風まとい風を透かせる鯉のぼり/大石和堂(信之添削)
作者は、見えない風を見て、鯉のぼりを生き生きと描いた。鯉のぼりは、風
をまとい、その風が透け、色鮮やかに眼に映る。(高橋正子)

【銀賞】
★雨音の明るきリズム夏近し/野田ゆたか
「明るきリズム」の音(おん)が、内容とよくあって軽く、明るい雨音を実
際に聞くようである。「夏近し」は、たのしげに夏を待つ気持ちを表してい
る。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★打ち返す波なく満ちる若葉潮/平野あや子
打ち返す波もないのだけれど、膨らむように潮が満ちてきている。若葉のこ
ろの青い潮がかがやきながら満ちてくる様子がのびやか。(高橋正子)

★窓に若葉句集二つを並べ置き/藤田洋子
窓に若葉の見えるところに句集を二つそろえて並べている。さわやかな風の
吹き通る部屋であろうから、清潔な感である。主宰の「旅衣」と拙句集の「
花冠」であろうかと思うが大変嬉しい。(高橋正子)

【特選5句】

★自家水道流しっ放し独活たら芽/守屋光雅
★若葉濃くメタセコイヤの街にあり/柳原美知子
★病む母へ通う道すじ桜蕊/大給圭泉
★阿賀野川ゆるりと曲り崖若葉/磯部勇吉
★花菜畑眼下に海の開けおり/冬山蕗風 

【入選17句】

★薔薇の芽に寸の雨降り寸に伸ぶ/小峠静水
★山鳩が先行く道の若葉影/古田けいじ 
★竹の子を背負子にごろごろ山下る/霧野萬地郎
★風通る部屋にライラック活けており/戸原琴
★桜桃の枝ごと剪りて玄関に/宮地ゆうこ
★バス降りてぱっと開かる春日傘/堀佐夜子
★八重桜牛鳴く声に鶏遊ぶ/相沢野風村
★五月の夜待ちし師の書の封を解く/おおにしひろし
★リラ咲いて砂均らされし朝の馬場/碇英一
★春風(しゅんぷう)のふっとスカート膨らます/岩本康子
★囀りの間遠になりて雨の来る/山野きみ子
★小手毬の花濡れ新築内装音/祝恵子
★ダム湖畔親子連れ添う風光る/能作靖雄
★何段にも早苗箱積み軽トラック/澤井渥
★海風を満帆にしてみどりの日/右田俊郎
★風止みてこでまりの花更に垂れ/藤田荘二
★部活終えすっかり暗き春の街/野仁志水音