■さら句会/入賞発表(31)■

第181回(4月16日)〜第190回(4月29日) 

第190回入賞発表(4月29日)/高橋正子選

【金賞】
★今朝の空仰ぎて高く木の芽摘む/守屋光雅
ひんやりと心地よく晴れた今朝の空であろう。大きな山椒の木に空を仰ぎながら木の芽を摘む作者。みちのくの遅い春が、澄み渡った気持ちで詠まれている。(高橋正子)

【銀賞】
★吐く息の蒼白かりし夜の若葉/磯部勇吉
若葉の季節になっても、夜は息が白く見える。白くというより、蒼白く。息が若葉に照らされいるせいか、月光のせいか。北国の若葉の夜が美しい。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★用水路に音のたしかさ夏隣る/宮地ゆうこ
高知からは、夏隣るである。用水路を通るたっぷりの水が、たしかな水音をたてる。水音にある手ごたえのようなもの。明るい夏が近い嬉しさがある。(高橋正子)

★開け放つ部屋に春風存分に/堀佐夜子
平明な句で、迷うことなく作者の気持ちになって、部屋に入る春風の心地よさが満喫できる。家で過ごす心地よさもなかなかいいものである。(高橋正子)

【特選5句】

★素通りの風ばかりなる葉の桜/小峠静水
★松の花四十九日のお参りに/祝恵子
★出航の汽笛三声山つつじ/石井信雄
★ぎしぎしに土手占められて春ゆけり/吉田晃
★足裏でさぐり筍一鍬に/大給圭泉 

【入選@/5句】

★はじける陽若葉いきいき風に揺れ/相沢野風村
★夏葱に籠一杯の香の高き/碇 英一
★光る葉に蜂水平にもぐり込む/山野きみ子
★柿若葉三日見ぬ間に山隠る/能作靖雄
★みどりの日海のきらめき見て戻り/藤田洋子 

【入選A/13句】

★若葉輝る塀の内より水の音/馬場江都
★見上げれば橡の若葉の陽を透す/古田けいじ
★山頂に大樹一本みどりの日/霧野萬地郎 
★推敲を終りし朝や四月尽/安丸てつじ
★小手毬の真白くまろく枝撓る/堀佐夜子
★春暁の早瀬に鯉が跳ねる水音/おおにしひろし
★石楠花の渓の早瀬やたかぶれる/平野あや子 
★孫と乗るモーターボートやみどりの日/右田俊郎
★ポスターの都踊の艶姿/都久俊
★風止みてこでまりの花更に垂れ/藤田荘二 
★軽やかに尾を引き野へと春の蛇/野仁志水音
★両の手に揺れの重さやかすみ草/池田和枝
★低空の燕影つれ原っぱへ/祝恵子  

第189回入賞発表(4月28日)/高橋正子選

【金賞】
★鍬一つ囀りつづく田に残る/祝恵子
耕された田が広々として、小鳥の囀りが止むことがない。気づいて見ると、鍬が一丁、柄も湿って、田に置き忘れられている。時の経過が今にしっかりと焦点を当てて詠まれた。(高橋正子)

【銀賞】
 近江八幡水郷めぐり
★風光る湖水へひろぐ網の白/平野あや子
湖水を渡る風が光り、湖の水にさあっと広げられるのは投網だろうか、網の白が軽くて、さわやかである。さっぱりとした句。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★ひざまずき蒲公英の絮吹きにけり/相沢野風村
ひざまずいたのは、子どもの背丈に合わせるためだろう。目線を低くして飛ばす蒲公英の絮は、より長い距離を空まで飛んで行くようだ。(高橋正子)

★日矢が射る無き色の無きしゃぼん玉/野田ゆたか
「日矢が射る」は、しゃぼん玉の表面が強く光っていることを表し、無い色の無いほどの色を持って光っている。この句では、しゃぼん玉の張り詰めた張力にある強い光が詠まれている。(高橋正子)

【特選5句】

★風の音若葉大樹の梢から/古田けいじ
★筍の芯へ向かって白さ増す/日野正人
★滝水のどうと落ちきて若葉打つ/おおにしひろし
★若葉風鹿島の海をふくらます/柳原美知子
★村じゅうが淡き緑に田が植わり/池田多津子

【入選@/5句】

★そそぐ陽に藤房揺れて濃く淡く/大給圭泉
★小嵐に倒るゝもあり金魚草/碇英一
★眼前をよぎりしものや熊ん蜂/石井信雄
★行く春に赤レンガの駅下る汽車/山野きみ子
★ぼうたんの影をくずして散り始む/宮地ゆうこ 

【入選A/13句】

★朴の芽の解き始めたる空の青/磯部勇吉
★若葉から若葉へ石手川流れ/おおにしひろし
★雨雲に明るさ掲げ花水木/碇英一
★春祭り大道芸の港町/右田俊郎
★春の灯に写真の花の楽しかり/堀佐夜子
★光射す谷戸の古刹の花海棠/霧野萬地郎
★夏隣り陶土を捏ねる太き指/池田和枝
★山の気の迫る若葉明りの石の相/小峠静水
★夏隣闇やわらかく動きけり/小原亜子
★代を掻く泥こぼしつつ田を移る/澤井渥
★春の虹見たくてホース高く揚ぐ/堀佐夜子
★昼蛙鳴き声流れ旅の宿/大給圭泉
★講座終う一服の茶や春暑し/河勝比呂詩  

第188回入賞発表(4月25〜27日)/高橋正子選評@

【金賞】
★妻揚げし独活の青さと柔らかさ/安丸てつじ
揚げられて青い独活は、山独活であろうか。香りも、色も、そして柔らかさも揃った採れたての独活である。その独活を、からりと揚げたくれた妻を、さわやかに詠んだ。

【銀賞】
★朝市に紫陽花濡れて届きたる/山野きみ子
「濡れて届きたる」に、地味だが感動がある。朝市であるから届いたばかりのみずみずしい花には違いないが、雨に遇って濡れた、その紫陽花らしさに感動がある。

【銅賞/2句】
★春の夕ビルのこだまに子らの声/碇 英一 
都会のビルの谷間で遊ぶ子らであろうか。日が永くなり、子どもたちも夕方遅くまで賑やかに遊べるようになった。その声が、ビルの壁にこだましている都会の風景。真をついている。

★電線の雀飛び立つ若葉風/堀佐夜子
若葉風を大変よく感じ取った句で、季語の働きが大きい。若葉風が吹いて電線を揺らし、止まっていた雀らが飛びたった。若葉風が吹く景色が目に見えるよう。

【特選6句】

★代掻きを終えて大空映す田に/戸原琴 
★飯盒より噴き出す蒸気夏磯に/柳原美知子
★田起しの前の水口蝌蚪群るる/磯部勇吉
★青麦の明るき穂先一面に/日野正人
★松の芯すっくと長く青空に/岩本康子
★ひたひたと田に水入りて風光る/林緑丘  
 
第188回入賞発表(4月25〜27日)/高橋正子選評A

【入選32句】

★簗掛けの水をなだめて石を置く/小峠静水
★山吹の叢揺れやまぬ切り通し/霧野萬地郎
★本堂を隠すほどまで朝桜/守屋光雅
★花吹雪間歇泉の終りけり/今井伊佐夫
★荷をとけば潮の香あふる乾しひじき/大給圭泉
★貝殻を寄せては返す春の潮/石井信雄
★げんげ編む土の匂いを少し混ぜ/池田和枝
★引き潮も船も春ゆく闇の音/吉田 晃
★棚に陽が傾き藤の濃紫/おおにしひろし
★雲開き春陽差し込み本を読む/野仁志水音
★いつもある淡路島消ゆ菜種梅雨/都久俊
★桟橋の揺れるにまかす春の濤/平野あや子
★咲き終えし牡丹に残る金の蕊/加納淑子
★生け垣のはみ出しいたる小米花/相沢野風村
★風車小さな息でくるくると/高橋秀之
★一面に田水さざ波広がれる/池田多津子
★牡丹散らす陽のさんさんと庭にあり/宮地ゆうこ
★花藤の光りて重し雨雫く/祝恵子
★ 川暮れて一筋残る花の道/河ひろこ
★枝に並ぶ若葉小さき銀杏型/馬場江都 
★モンシロチョウひらリ夕べの森へ消え/古田けいじ 
★囀りを一つ聞き分け歩き出す/脇美代子
★茶畑の北守り来て高野槙/河勝比呂詩
★戸をそっと閉める燕の寝るころ/脇美代子
★我が五体立たせし空を春が行く/野田ゆたか
★苗床の若葉つやけくそよめけり/能作靖雄
★熊蜂の粗暴を許す藤の房/澤井渥  
★遠方の貼紙眺む春の夜/龍造寺規谷
★思いっきり竹の子背伸びをする朝/右田俊郎
★若葉風森一杯の窓開ける/小峠静水
★雨降れば躑躅色増す窓外に/安丸てつじ
★山辺を線路が走る鯉幟/大給圭泉

▼選者詠/高橋正子
目瞑らすほどに若葉の照れる朝
池水の深きも澄んで若葉風
弦楽の余韻連れ出し新樹闇  

第187回入賞発表(4月24日)/高橋正子選評

【金賞】
★若葉雨始発電車の濡れ来たる/平野あや子
原句では、「濡らし」と「来る」の主語が、違っているので添削した。若葉を降る雨は、たっぷりとして柔らかい。始発電車も雨に濡れて耀き雨の若葉の朝がある。

【銀賞】
★たんぽぽの長短ありて野がつづく/祝恵子
平らな野は、たんぽぽの茎の長短さえも見せてくれる。春の野の緩やかな起伏が、どこまでも延びて、のどかな景色となっている。

【銅賞/2句】
★藤棚を平らに吹いて川の風/おおにしひろし
藤棚の上の平らに目が行く。空と藤棚が接するあたりを川風がさわやかに吹いて心地よい日である。

★辛夷のみ暾の当りけり雑木山/今井伊佐夫
「暾」は朝日。雑木林のなかに、ひときわ辛夷の白が、朝日に耀いている。辛夷はたしかにそういう花で、心象に深く残る花である。

【特選5句】

★風が来て叉水掴む水澄まし/小峠静水
★かすめ飛ぶ燕に田水のひかり増す/宮地ゆうこ
★一山を包みて降れり若葉雨/藤田洋子
★近江過ぎ山の裾には竹の秋/今井伊佐夫
★若葉風選挙の声を載せ届く/碇英一 

【入選18句】

★ぼうたんや店のシャッター今開かる/堀佐夜子
★花水木寿司屋通りの風に色/山野きみ子
★文字を書く個々の音する春の教室/野仁志水音
★球場の喚声聞きてチューリップ/石井信雄
★お遍路の行く手煌めく伊予の灘/小原亜子 
★膝曲げて子供の視線に観る桜/相沢野風村
★梁にいて呼吸正しき燕かな/岩本康子
★地を蹴って前へ前へと若遍路/日野正人
★木道を子等が追い抜く水芭蕉/霧野萬地郎
★京菓子屋牡丹豊かに活けられて/古田けいじ
★夜気軽し白く波うつ雪柳/藤田荘二
★欅若葉幾重も透かし明るい陽/脇美代子
★山椒の若葉の濡れて匂いけり/磯部勇吉 
★朴の芽の曇り日ありて嶺いくつ/小峠静水
★満開の花に見送られ兄逝けり/冬山蕗風
★楓蘂降る真砂土の淡く染む/河勝比呂詩
★つつじ園傘さすほどの雨ならず/大給圭泉
★建てかけの家の映りし田が植わる/澤井渥  

第186回入賞発表(4月23日)/高橋正子選評 

【金賞】
★一心を空に放ちて桐の花/野田ゆたか
空に高く咲くうす紫の桐の花に、真っ直ぐな気品を感じるが、それが「一心」であろう。そういう心を思い切り空に咲かせている桐の花である。

【銀賞】
★隣り田の押しだす水に代を掻く/小峠静水
隣の田から流れ出る水を自分の田に入れて代を掻く。「押しだす水」なので、つぎつぎ、どんどん流れてきて、代掻きにも勢いがついてくる。

【銅賞/2句】
★春もずの山より水の滾滾と/宮地ゆうこ
もずは、今、山へ帰っているのだろうか。もずの鳴く山から、滾滾と水が湧き出して、なみなみと湧き流れる水に生気がある。

★洋(うみ)越えて着いたばかりの初燕/都久俊
大海原を越えてきた燕を、久しく会わない友を迎えるような気持ちで迎え入れている。着いたばかりの燕の羽色の美しさ想像する。作者の「よう来たなあ」のつぶやきなのかも。

【特選5句】

★軽トラの神輿若葉の村を練り/太田淳子 
★医師に犬託して歩く若葉風/祝恵子
★傘開くほどでもなくて花は葉に/山野きみ子
★日の脚や頭上染めたる八重桜/石井信雄
★山裾へ野の色淡し碇草/霧野萬地郎 

【入選18句】

★散歩道変えて楽しやライラック/堀佐夜子
★初蝶のとどまらずして立去りし/大給圭泉
★ままごとの卓に春草盛り合わせ/池田多津子
★草を刈る土手に遍路の鈴流れ/池田和枝 
★子の好きなたらの芽をとる鈴鹿嶺に/古田けいじ
★跳ねるとも跳ねるまいとも初蛙/大石和堂
★あれこれと為すこと思う葱坊主/磯部勇吉
★姫女苑雨後をひかり輝いて/加納淑子
★咲き満ちてなお密やかに豆の花/碇英一
★葉桜のしずく音に茶を啜る/能作靖雄
★雪柳玄関巾をおおきくし/相沢野風村
★砂吐かす潮添え浅蜊貰いけり/澤井渥
★パンジーにツナギの服の若き父/多田有花
★その先は紺碧の瀬戸花馬酔木/おおにしひろし
★ためらいつ摘む二代目の初山椒/河勝比呂詩
★音立てて竹が皮脱ぐ真すぐに/小峠静水
★玉葱を抜きて少女らはしゃぎたり/岩本康子 
★カンバスに春の別れの色を塗る/右田俊郎  

第185回入賞発表(4月22日)/高橋正子選評 

【金賞】
★青麦の闇を夜汽車の光り過ぎ/霧野萬地郎
「青麦の闇」は、詩的なイメージ。青麦の青い闇を、夜汽車が光って過ぎる面白さが楽しい。なにか、模型電車を見るようである。

【銀賞】
★葉桜の大きな影に停車する/藤田洋子
こういう景色は、よく見かけるが、句となって新鮮である。自分の車を、桜の葉蔭に憩わせるように停車して置いた。葉桜が重なり合って作る大きな蔭がさわやか。

【銅賞/2句】
★朝曇る空まだ濡れて柿若葉/大給圭泉
「空まだ濡れて」は、雨があがったばかりの曇り空の様子をよく捉えた表現。。濡れたような曇り空に、柿若葉の鮮やかなみどりが映えて美しい。

★自転車に油さしたる春深し/多田有花
自転車の手入れをしている休日であろう。自転車油がとろりと注されることに、春昼のけだるいような深さを感じる。

【特選5句】

★花みずき空の青きをなお青く/岩本康子
★燕来る校舎の青空まっすぐに/池田多津子
★訪う度に若葉の増ゆる歯科の玻璃/碇英一
★さくらんぼ葉陰に青く瑞々し/堀佐夜子
★窓を擦る若葉を見ながら発音す/野仁志水音 

【入選20句】

★蕗の葉に落花はりつく日照雨かな/磯部勇吉
★甥姪と童心となるシャボン玉/冬山蕗風
★武蔵野の春惜しみつつ土鈴買う/山野きみ子
★春空をぐるりと回る飛行機雲/日野正人
★葉桜の枝ごとそよぐ若き色/馬場江都 
★風通る樟の若葉の輝きに/加納淑子
★風さやか河原鶯鳴きやまず/おおにしひろし
★葉桜の夜へ自転車漕ぎ出だす/野仁志水音 
★風光る新造船の起工式/平野あや子
★いつのまにビル街覆う木の芽かな/相沢野風村
★土手おぼろ長き列車の橋渡る/馬場江都 
★恙無く結納終へて春日受く/平野あや子
★裾分けの浅蜊の返し胡麻豆腐/澤井渥
★春堤湧き雲よぎる飛行雲/祝恵子
★山吹の白さがゆれて朝はじまる/宮地ゆうこ
★街並みを守る運動松の芯/右田俊郎
★藤棚の白こぼしつつ光揺れる/池田多津子 
★幼児掃く長き柄に垂る門の藤/河勝比呂詩 
★春の宵こころ遊弋させてをり/大石和堂 
★地に触れぬ位置まで山吹咲き垂れる/古田けいじ 

▼選者詠/高橋正子
薫風に水ゆすられて豊かなり
ためらいもありて踏み行く桜蘂
昆布茶に梅の味して春の宵  

第184回入賞発表(4月21日)/高橋正子選 @

【金賞】
★むしかりの咲いて林に日をひろぐ/磯部勇吉
「林に日をひろぐ」に、日が差し込んで、むしかりの花が明るく白く咲いている林の様子がすべて言い表されている。むしかりは、季語にないが、季感のある植物で、すいかずら科がまずみ属の落葉低木。すこし高地でぶな林沿いに生え、雪解けしてすぐ4〜5月頃に咲く白い花は、登山していると林間に目立つ。(高橋正子)
http://www.mitomori.co.jp/hanazukan/hanazukan2.7.85musi.html

【銀賞】
★空どこかゆるみ風うけ鯉のぼり/大給圭泉
「どこかゆるみ」に、風がゆるやかに吹く空を想う。「空がゆるむ」という感覚は、作者の捉え方。ゆったりとおおらかに泳ぐ鯉のぼりはいいものだ。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★蜆売り五合枡(ごんごうます)に盛りにけり/河勝比呂詩
蜆を重さでなく、五合枡を使い、嵩で量るのも、昔ながらの蜆の売り方と買い方か。売るもの、買うものの善意が見える。(高橋正子)

★花冷に雲の流れの濃淡に/相沢野風村
自然を詠んで深いものがあるのは、作り手の内面の深さであろうと思い、いい心境である。(高橋信之)

【特選5句】

★泣いた子の手から花びら零れ落ち/野仁志水音
★列車止まる藤の盛りの見える位置/古田けいじ
★桜蘂踏んで夕餉の買い物に/多田有花
★こでまりの花風に揺れ日に弾み/加納淑子
★幼な日の雀の鉄砲吹きながら/堀佐夜子  

第184回入賞発表(4月20日)/高橋正子選 A

【入選22句】

★通草咲き風より軽くつる揺れる/脇美代子
★雨雲の晴れし高さを朴の花/おおにしひろし
★汐吹かす舌伸びきるや浅蜊桶/平野あや子
★桜蘂ベンチで語らう老に降る/碇 英一
★軒近く来て花吹雪立ち上がる/小峠静水
★花吹雪のなかをくぐって登校す/野仁志水音
★菜の花の丘を越え来て北陸路/林緑丘
★馬酔木咲く詩人の眠る墓のそば/右田俊郎
★明るさの一際冴える八重桜/日野正人
★花曇目がしら熱き弔辞かな/冬山蕗風
★花蘂を高箒ではく若き保母/祝恵子
★海峡の蒼き輝き春冷たし/岩本康子
★袖折りて会議に若葉の風迎う/碇 英一
★巣つばめの濡るるを問わずたちにけり/澤井 渥
★椿落ち皆一様に上を向く/石井信雄
★日差し待つ山の写真家富士桜/霧野萬地郎 
★山桜淡き緑を添えて咲く/磯部勇吉
★藤垂るる光のままに大樹立つ/宮地ゆうこ
★きらきらと赤子の笑みやサイネリア/池田和枝
★案外に春望月はしたたかに/野田ゆたか
★田起こしの背に連呼する選挙カー/能作靖雄
★墨色の田畑清し春の雨/守屋光雅

▼選者詠/高橋正子
ポプラ二本若葉の色を広げ立つ
堀内の若葉の冷えの身にしみぬ
薫風にお堀の水の溢るほど  

第183回入賞発表(4月18〜20日)/高橋正子選@

【金賞】
★流れ来る花と清水を手で受ける/林緑丘
「手で受ける」という「花と清水」が美しい。日本の美意識とは、こういったものであろうと思う。簡素で、清潔である。(高橋信之)

【銀賞】
★校舎包む銀杏若葉の匂う風/野仁志水音
「銀杏若葉の匂う風」に入学の気持ちが新鮮で、初々しい。作者のいい実感があって、言葉が浮いていない。(高橋信之)

【銅賞/2句】
★ぶらんこの子ら青空を往復す/祝恵子
軽く、そして生き生きとした句。作者の心が無理なく言葉に乗った。(高橋信之)

★ラムネ呑む風のきれいな峠かな/小峠静水
「ラムネ呑む」少年の頃を思い、開放感がある。作者の内面が「きれい」になったのである。(高橋信之)

【特選8句】

★れんげ田に囲まれて子ら登校す/池田多津子
★蕗の董遠くで落ちる水の音/相沢野風村
★囀や雲低ければ高らかに/今井伊佐夫
★花軽く吹き上げられて空に舞う/堀佐夜子
★春光を溶きては塗れり塗装工/野田ゆたか
★スイトピー夫婦二人の理髪店/池田和枝
★葉桜や見舞いの窓に影を差し/高橋秀之
★春光を吸いたる子の服たたみたり/岩本康子  

第183回入賞発表(4月18〜20日)/高橋正子選 A

【入選36句】

★たんぽぽの飛ぶとき首を伸ばしける/多田有花
★初蝶に風なき今日の空続く/藤田洋子
★叩かれて木の芽の青の匂いけり/都久俊
★春の夜の舟は朧の海を来る/吉田晃
★蚕豆の畑に降って雨匂う/おおにしひろし 
★登校の日差しへ降りし春落葉/野仁志水音
★不揃いのアスパラ五本今朝採れし/澤井渥
★濃淡の鯉の魚拓や花曇/今井伊佐夫
★少女らの顔に花影お弁当/岩本康子
★初蝶や池を巡りて蒼天へ/石井信雄
★開き始じむ花水木丸くまるく透け/祝恵子
★桜蕊降る只中に木の校舎/安丸てつじ
★蛸釣れば瀬戸大橋の影揺らぐ/河勝比呂詩
★夜桜の滴を溜めて輝ける/日野正人
★花曇体重計の針定まらず/柳原美知子
★かたくりの陽に背を向きて軽く揺れ/相沢野風村 
★棚の巾あふれて藤の咲き初め/古田けいじ
★剪定の枝どさと落ち括られて/山野きみ子
★箱苗の青の勢い一列に/池田多津子
★黒潮の匂う飛魚皿に余る/脇美代子
★池ひとつ埋め尽くせし落花かな/霧野萬地郎
★ぼったりと厚き釉薬に花映る/藤田荘二
★吹き上がる海風丘の麦畑/右田俊郎
〈天然記念物 石割桜〉
★石割りて桜揺れてる朝まだき/守屋光雅
★汽車ポッポ紐にぎりしめ夏近し/大給圭泉
★ゴルフ場若葉の先に白き嶺/能作靖雄
★ヒトゲノム解読完了桜散る/磯部勇吉
★休日のビル街白き花水木/馬場江都
★花の雨傘を傾け石畳 /河ひろこ
★遠足の列は無きものうねるもの/大石和堂
★門灯の明り広げて八重桜/加納淑子
★燈台の足元埋め花菜咲く/都久俊 
★花の影水面に映す田圃かな/今井伊佐夫
★さくら蘂紅き参道続きたる/碇英一
★夕厨筍の香の満ちて立つ/安田明子
★春光をピアノに弾く若き指/柳原美知子

▼選者詠/高橋正子
道端にカラーの花の白を売る
筍を草のはこべに埋めて売り
桜蘂落ちて紅さをなお重ぬ  

第182回入賞発表(4月17日)/高橋正子選評 

【金賞】
★揚雲雀空の蒼さにとまり鳴く/おおにしひろし
「蒼さにとまり」が、曇りない空の一点となって鳴く雲雀の姿をよくあらわしている。

【銀賞】
★田水張られ畦くっきりと縦横に/池田多津子
田に水が張られ、縦横に走る畦が浮いてきれいな田園風景を作っている。田の準備がされてくると、見ているものにもうれしい気持ちが湧く。

【銅賞/2句】
★白ペンキ重ね春めく百葉箱/相沢野風村
百葉箱が白いペンキで塗り替えられて、日差しに映えて、春めいて思える。

★桜蘂降らせる風に親しめり/福田由平
桜蘂が降る頃の風の心地よさ、葉桜となってゆく若緑の風の心地よさ。風を心身でたのしめる余裕の心境がいい。

【特選6句】

★雪柳深夜に白黒映画観て/小峠静水
★白球を追う目に飛び込む子カモシカ/能作靖雄
★田水の映す青き山々動かざる/池田多津子
★花菜風膨らむ先の海平ら/山野きみ子
★きらきらと蒲公英の絮風を待つ/加納淑子
★たんぽぽの絮とぶ川の流れへと/祝恵子

【入選/13句】

★縁の障子今日は若葉の影遊ぶ/脇美代子
★歩を緩め春野の風を全身に/霧野萬地郎
★屋根替や多摩丘陵に光る寺/石井信雄 
★燕飛ぶ曳山まつり山車も出て/河勝比呂詩 
★満目の花菜を走る小学生/霧野萬地郎
★呼べば来る帰れぬ白鳥春愁う/磯部勇吉
★雪解けに高き水位の木曽川渡る/古田けいじ 
★軽く噛みアスパラガスの充実を/宮地ゆうこ
★蒲公英の絮土手一面に陽に風に/堀佐夜子
★春満月砂丘に影なく海の鳴る/右田俊郎
★紙風船母の息こめ子に届く/大給圭泉
★遠足の朝(あした)おにぎり艶々と/岩本康子
★花蘂を受けて弁当静かなり/岩本康子

▼選者詠/高橋正子
さくら蘂紅強きは葉の蔭に
春月に揺れずゆらりとポプラの樹
からたちの花の白さにアスファルト  

第181回入賞発表(4月16日)/高橋正子選評

【金賞】
★海光の薮へ深まる竹の秋/平野あや子
藪深く届く海光には、その寂しさに混じる明るさがあって、葉の黄ばんできた「竹の秋」である。

【銀賞】
★青麦に潮目のごとく風が寄す/脇美代子
「潮の目の」を「潮目」と端的な表現にした。青麦畑が海原のようで、風が吹き寄せると、まるで潮目ができるようだ。自在に吹く風が感じられる。

【銅賞/2句】
★風おぼろ左右に開く自動ドアー/小峠静水
「おぼろ」は、「朧」すれば霞の夜の現象をいうが、「風おぼろ」は、風がおぼろな感じであるという作者独特の言い方。春愁を含んだ感じであるが、自動ドアーが、音もなく左右に開く様子も、また春愁の気分である。

★しっとりと重さを持ちて里桜/古田けいじ
里の桜は、枝ぶりのままに咲いているのだろう。咲き満ちて花枝は重さを感じさせるほどである。里桜の自然な姿がよく出ている。

【特選6句】

★こでまりの花のはじめに風少し/藤田洋子
★木道を少し外して猫柳/霧野萬地郎
★花冷えに探す蕎麦屋の灯し頃/山野きみ子
★夕づきし花苑斜めに陽の残る/馬場江都
★剪定の鋏のはずむ遅日かな/石井信雄
★大根の花群白し春惜しむ/おおにしひろし

【入選16句】

★水底の春落葉まで木漏れの陽/宮地ゆうこ
★春の田やしばし合鴨飼われおり/河勝比呂詩
★春満月小枝を照らし静かなり/相沢野風村
★持ち比べ軽きレタスを買ひにけり/都久俊
★春満月こころを満たすものあまた/加納淑子
★花よりも色よき芽吹き赤芽樫/澤井渥
★さび色の落ちしもくれん雨の道/祝恵子 
★菜の花の潟へなだれて風匂う/磯部勇吉
★春の日がまあるく包む句集読む/野田ゆたか
★春満月を浴びつつ眠る庭の花/堀佐夜子
★囀りに音階のあり旅の朝/大給圭泉
★花吹雪青き空から降り注ぐ/日野正人
★飛行機雲春満月のかたわらを/多田有花
★菜の花や立たされ坊主の下校する/右田俊郎
★春風や竿さす舟に花吹雪/能作靖雄
★異国語の交じる朝餉や春の雨/池田和枝