■さら句会/入賞発表(30)■

第170回(4月1日)〜第180回(4月15日) 

第180回入賞発表(4月15日)/高橋正子選

【金賞】
★満月の光に我と残る花/多田有花
春の満月のやわらかさと、侘びていながらすがすがしい、残る花の
下に身を置く「我」が、春月と残花の自然によく溶け合っている。
(高橋正子)

【銀賞】
★手に余るほど児はたんぽぽを摘んでおり/祝恵子
たんぽぽ摘みに夢中になっている幼子の様子が愛らしい。ふっくら
した手にあまるほどのたんぽぽは、無垢の象徴。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★春泥に踏み跡ふかく畦巡る/宮地ゆうこ
「踏み跡ふかく」の実感が強く、畦を巡って農作業をする作者の「
生」がそこに映し置かれている。読者はその「生」をためらわず感
じることが出来る。(高橋正子)

★鯉幟泳ぐ高さに城さやか/おおにしひろし(正子添削)
原句の「鯉」を「鯉幟」とし、「空」はこの場合当然分かるので省
略した。遠景に城を置き、自由に泳ぐ鯉幟がさわやかに詠まれた。
構図がいい。(高橋正子)

【特選6句】

★耕され田水ゆっくり満たされる/池田多津子
★新講座始まる街に燕来る/加納淑子
★大空に連凧つねに定まらず/霧野萬地郎
★春の日や薩摩の空の藍極む/池田和枝
★沢水の落ち口光るふきのとう/守屋光雅
★竹林のやわらかき土春日差し/太田淳子 

【入選15句】

★誕生日子の声春夜越え届く/日野正人
★夜桜に新入生の群浮かぶ/能作靖雄
★鳴き声も耳に入らず花盛り/相沢野風村
★通勤の空に真白きハナミズキ/岩本康子
★花水木遠回りする街角に/古田けいじ
★裏窓のとくに桜の明るかり/磯部勇吉
★朝掘りの筍茹でる糠の泡/平野あや子
★樹より地に華やぎ移す花の塵/山野きみ子
★踊る葉をまるめて刻む春キャベツ/河ひろこ
★すり鉢に香りの残る木の芽和/石井信雄
★旅人は北へ北へと花を追ふ/右田俊郎
★投函へ今の内にと春小雨/堀佐夜子
★囀りや遠出にはしゃぐ園児たち/河勝比呂詩
★もてあます待ち合わせ時間花辛夷/大給圭泉
★種選ぶ暗さになれし笠電球/小峠静水

▼選者詠/高橋正子
春月にうらうら路を歩きけり
春月を歩いてプリンを二つ買い
夜の匂い残れる花に立ち居出て  

第179回入賞発表(4月14日)/高橋正子選

【金賞】
★降る花のさんさんと風軋みだす/小峠静水
下五の「軋みだす」は、写生ではなく、作者が作り出した言葉だが
、光と風のリアルな体験で、桜散る実感が伝わってくる。(高橋信
之)

【銀賞】
★朝の気にふれて輝く松の花/加納淑子
作り手の感動が強い。「輝く」は、強く響く言葉だ。(高橋信之)

【銅賞/2句】
★淡き光漏れ来る牡丹の蕾から/古田けいじ
これから咲く牡丹のほのかな気品と美しさが漂い見とれるようです
。(藤田洋子) 

★水脈一線花の向こうを横切りぬ/柳原美知子
「花の向こう」に海が見える。そこを船が通り過ぎた。「水脈一線
」を引きながらである。焦点が定まって、構図のいい絵となった。
(高橋信之)

【特選5句】

★水底にふえる暗がり水草生い/霧野萬地郎 
★アスパラガス伸びてそれぞれ畝に影/宮地ゆうこ
★句集読む目を休めれば松の花/堀佐夜子 
★裏木戸にアーチの連翹真っ盛り/石井信雄
★落花ゆく川の流れのあるままに/藤田洋子 

【入選20句】

★その枝に触れ花桃の花散れる/おおにしひろし(正子添削)
★炭焼きの煙り立ち昇る花曇り/都久俊
★耕せりバイクいつもの畦に置き/池田和枝
★桜餅大小ありて子と作る/宮地ゆうこ
★子供らの花壇を縫って投票場へ/馬場江都 
★花びらのどれもが輝く桜吹雪/日野正人 
★花散りて日輪雲間にあわあわと/岩本康子
★枝を変え囀り高きコガラかな/岩本康子
★対岸もぼんぼり揺れる夕桜/相沢野風村
★青大将ゆるゆる道を譲りくれ/澤井渥 
★瀬戸けぶる霧観測所夏近し/平野あや子
★しじみ蝶青き命を煌かす/磯部勇吉
★春灯を水に遊ばせ戎橋/野田ゆたか
★葉桜や親子してゆく理髪店/右田俊郎 
★ユニホーム着て待つ角のつつじ咲く/祝恵子
★小店より談笑洩れる春の宵/河勝比呂詩
★風船の離れしときに体浮く/大給圭泉
★ふるさとを湖底に置いて桜かな/今井伊佐夫 
★お役目を終えて静かに舞う桜/小原亜子
★松川や水面に遊ぶ花吹雪/能作靖雄

▼選者詠/高橋正子
ポプラ若葉次第に増えて朝の窓
春きゅうりさっぱり切って朝の卓
戦争が終わって春夜のモーツァルト  

第178回入賞発表(4月11〜13日)/高橋正子選@

【金賞】
★啄木忌吾どっぷりとふるさとに/河勝比呂詩
4月13日が啄木忌。貧困と不遇のうちに27歳の生涯を閉じた啄
木だが、ふるさとへの思いを詠った詩や短歌は、よく知られている
。ふるさとに癒されるように「どっぷりと」浸れるのは、啄木の忌
日だからであろう。(高橋正子)

【銀賞】
★咲き満ちて軽々風を受く桜/柳原美知子(正子添削)
咲き満ちた桜の軽さは、作者の気持ちの軽さとも言える。桜のさや
さやした様子がよく受け止められている。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★新聞に若布包まれ浜で買う/大給圭泉
浜にあがったばかりの若布か、水気を吸ってくれて、ちょうどよい
新聞に包んで売ってくれた。潮の匂いのする浜の若布がうれしい。
(高橋正子)

★青麦や風を孕みて色を変え/池田和枝
青麦畑が風を孕んで、風の靡き具合で、青麦の色が薄く光ったり、
濃い色にそよいだりする。「色を変え」は、さわやかな風の動きを
表している。(高橋正子)

【特選5句】

★桜にも影というもの蘂降らす/おおにしひろし
★Eメールの音なく届くおぼろ月/堀佐夜子
★花の影水に映して散りつづく/祝恵子
★落椿体内時計壊れけり/相沢野風村
★囀りに彩られつつ夜の明ける/下地鉄朗  

第178回入賞発表(4月11〜13日)/高橋正子選A

【入選@/10句】

★家中に筍茹でし香の満ちる/脇美代子
★花と影共に流れる小川かな/林緑丘
★淡墨の色帯びて散る桜かな/今井伊佐夫
★いたどりをかじれば青のみずみずし/池田多津子
★春の畝土黒々と真直ぐに/太田淳子
★梨咲いて丘いちめんの白き風/宮地ゆうこ
★花吹雪総身にまとい立ち尽くす/平野あや子
★ブルゾンの片手ポケット花冷える/大石和堂
★花吹雪山が動いてゐるごとく/小峠静水
★地虫出づ真紅の背中に黒の斑/石井信雄 

【入選A/19句】

★紺いろの夜空に白き花かがり/おおにしひろし
★鳥一つ芽吹く葦から水脈を引く/古田けいじ 
★八百年欅の芽吹きこまやかに/磯部勇吉
★さくら散る風吹き来れば屋根に玻璃に/堀佐夜子
★ガラス器に10本程のチューリップ/祝恵子
★春昼や一両電車の過ぎ行けり/右田俊郎
★和太鼓のどんと臓腑に春の昼/多田有花
★父祖の地に影をひろげて桜咲く/宮地ゆうこ
★校庭に新しい顔と芽吹く木々/池田多津子
★花吹雪浴びて少しの冷えの道/山野きみ子
★花烏賊を干す軒並ぶ伊豆海道/霧野萬地郎
★溝浚え泥てらてらと日の返す/澤井渥
★野球部のシートノックや桜散る/野田ゆたか
★下校列母と握手の一年生/守屋光雅
★遠汽笛花ひたすらに夜を降れり/柳原美知子
★引越しの荷物春空に高く積む/日野正人
★御室山八十八カ所花の雨/福田由平
★池しんと花しんとせる朝(あした)かな/岩本康子
★花見上ぐ手押し車も転げそうに/能作靖雄


▼選者詠/高橋正子
桜散るおおかた散って日が暮れる
抱え来し薔薇の葉むらのひやひやと
花散りし夜のテレビの野球戦  

第177回入賞発表(4月10日)/高橋正子選評

【金賞】
★窓の外に海と桜と触れ合えり/柳原美知子
原句は、主語の統一が必要。「窓の外」は、「まどのと」と読ませ
た。窓の開かれた外には、海に桜が重なって見え、海と桜が触れ合
う景色となった。海の色と桜の色のコントラストが美しい。

【銀賞】
★紙風船まろき空気を詰めており/小峠瀬水
紙風船には、どこかのどかさがあって、息を入れてゆるやかに丸く
なった風船は、見るものの気持ちを和ませてくれる。

【銅賞/2句】
★春田吹く風に土の香運ばるる/右田俊郎
春の田を吹いてくる風に、ふと土の香が混じっているのに気づく。
土の香は、柔らかで湿った田の土におのずと立つ香だろう。人は土
の香に心が落ち着く。

★花散れば浴びに行くなり車椅子/堀佐夜子
散る桜の花びらを存分に浴びたい気持ちは、花を愛する人なら誰も
が持つだろう。車椅子に座る膝にも、髪にも、花びらを受けて、自
然のままに散る桜を楽しんでいて明るい。

【特選5句】

★時計塔針を隠して花の白/山野きみ子
★耕せば水動きだす畦水路/相沢野風村
★土手を埋め村に溢れて桜咲く/馬場江都
★街中の景色丸めてしゃぼん玉/池田和枝
★耕耘機土のよろこび高く散る/宮地ゆうこ 

【入選/22句】

★菜の花の斜面仰ぎし黄の昏み/平野あや子
★ためらわず空へ舞たる桜かな/多田有花
★桜一片空の中から降りてくる/藤田洋子
★鶯の声まろやかに朝の授業/岩本康子
★辛夷街道白の明るき美濃に入る/今井伊佐夫 
★青柳が暖簾を揺らす同じ風に/都久俊 
★まひる野の更にまぶしき桜かな/大石和堂
★風を追い一ひら一ひら桜散る/池田多津子
★いってきます少女駆け出し桃の花/大給圭泉
★トラックに里より揺れて荷の躑躅/脇美代子
★抑えても思ひ溢るる花の下/加納淑子
★御所開き上がる下がるも花に人/能作靖雄 
★山頂に中継アンテナ山すみれ/澤井渥
★薄墨の寺へ桜吹雪の中を/おおにしひろし 
★春の日へ背伸ばす我も街路樹も/古田けいじ
★子等走りボールを蹴れり花吹雪/霧野萬地郎
★花冷えの初登園に泣く子かな/高橋秀之
★鰊待つ爺がいて婆は大根切る/越前唯人
★故郷の春の林の中に佇つ/磯部勇吉
★日照り返し幹黒々と柿若葉/堀佐夜子
★追伸に躑躅を待つと安芸の友/河勝比呂詩
★耕されすき込まれゆく菜の花畑/祝恵子  

第176回入賞発表(4月9日)/高橋正子選評 

【金賞】
★離れ来て路地を明るくゴム風船/加納淑子
誰かの手を、またはどこかから離れて来た風船が路地に迷い込んで
、思いもかけぬ明るさをくれた。下町の生活の明るさが、のどかで
ある。

【銀賞】
★散る花の再び宙を目指しおリ/小峠静水
散ってゆく花は、下方へと散り急ぐのだが、中には、途中から地を
舞う風に吹かれて再び宙へと向かうものもある。落花の様子がよく
捉えられている。

【銅賞/2句】
★葱坊主丈ちぐはぐに真っ直ぐに/堀佐夜子
葱坊主が畝に立って、よく見れば丈がまちまちで、それがどうでも
よいのかと思うと、真っ直ぐに立っていて、しっかりしているので
ある。ものの見方に力強さがある。

★桜散る高きところをモノレール/祝恵子
頭上を走るモノレールだが、その高さは、桜が散る高さである。し
たがって、快速に走るモノレールを散る桜が飾って、さわさわとし
ている。

【特選5句】

★家中に写真飾って桜どき/おおにしひろし
★小さき口紙風船をふくらます/加納淑子
★桜湧くヘッドライトへ次々と/多田有花 
★咲いてもう花の冷えなる嵐山/野田ゆたか
★銀杏幼葉高き窓辺に明るかり/岩本康子 

【入選/15句】

★水芭蕉映りし水に青空も/脇美代子
★七曲がる天城旧道木の芽雨/霧野萬地郎
★風に向く蕾曲がりて紫木蓮/相沢野風村
★囀りや障子に影をよぎらせて/山野きみ子
★陽を受ける形に盛ん紫木蓮/古田けいじ 
★花万朶堤はさくらまたさくら/福田由平
★桜舞う錦港湾の朝風に/池田和枝
★揺らしつつ吊橋渡る花の山/澤井渥
★咲き初むる桜に雨の光りけり/磯部勇吉
★花筵校門入るや駆け出す子/右田俊郎
★群雀に泡食わせたり春疾風/河勝比呂詩
★陽炎に初島動きいるごとし/大給圭泉
★花冷えに龍井茶点つ昼下がり/能作靖雄
★新しきラケット軽く花月夜/多田有花 
★橋抜けて舟立ち止る花の川/山野きみ子

▼選者詠/高橋正子
菜の花を風吹き来れば頬冷ゆる
積まれいて花冷えすぐに新句集
母へ多く送る句集に花の冷え  

第175回入賞発表(4月8日)/高橋正子選評

【金賞】
★初燕バス待つ朝を旋回す/古田けいじ
今年もまた燕がやって来て、心に明るさをもたらしてくれた。春の
朝の冷ややかな空気を颯爽と切って旋回する燕は、幸せの使者であ
ろう。

【銀賞】
★山に咲くミモザ斜めに風の中/藤田洋子
斜めになって山に咲くミモザは、自生のミモザということであろう
。斜めがリアルである。その観察によって、読み手は風雨に耐えた
幹を想像でき、自生のミモザが強い花であることを思う。

【銅賞/2句】
★一もとの桜の落花海へ向く/平野あや子
海の近いところの一本の桜である。散る花は海の方へと誘われて散
ってゆき、海と対比されて美しい。一もとである桜のさびしさが、
心境を深めてくれている。

★一列に黄色が動く一年生/相沢野風村
この句の「黄色」は、当世の小学生が交通安全のために、黄色い帽
子をかむり、黄色い傘をさしていることを知っていて理解できるも
の。行儀よく一列に並んで通学する小学一年生がほほえましい。

【特選5句】

★さえずりや机の上の鳥獣図鑑/小峠静水
★はくれんの白さ向こうにゆかんとす/福田由平
★国上山かたくりの花連れ上る/磯部勇吉 
★花の降る大道芸の小道具に/山野きみ子
★飛花落花風すさぶ街を縦横に/加納淑子 

【入選/16句】

★凧遠く川の流れのある所/脇美代子
★八重椿木の下闇に真白に/堀佐夜子
★花吹雪乙女の髪に咲き誇る/日野正人
★さんさんと川原明るく柳の芽/多田有花
★日没のますます木蓮華の燃え滾る/都久俊 
★せせらぎの清しき野辺の青き踏む/おおにしひろし
★蜃気楼今朝は疾風の魚津沖/能作靖雄
★理髪灯春雨に色混じりおり/河ひろこ 
★辛夷咲く筆捨山へあと二キロ/澤井渥 
★ひさかたに春降る雨の温さかな/越前唯人 
★ベランダに花を咲かせる春疾風/石井信雄 
★ほのぼのと母のこの味ふきのとう/大給圭泉 
★ひらがなのならぶ下駄箱いちねんせい/宮地ゆうこ
★花の散るゆらめく鯉の川のゆれ/祝恵子
★隣室に帯解く音や花疲れ/河勝比呂詩
★いたんぽの皮するするとうすみどり/池田多津子

▼選者詠/高橋正子
花ポプラ雲の淡さを浮かべたり
きらきらとすずめのてっぽう天に伸び
春の田の風に集まり雀ども  

第174回入賞発表(4月7日)/高橋正子選

【金賞】
★植木市匂い明るく広がれり/相沢野風村(正子添削)
作者は仙台の近くに住む。植木市に並べられる花に、沈丁花などよ
く匂う花があるのだろう。その匂いが明るく広がって、みちのくの
遅い春の明るさが伝わってくる。(高橋正子)

【銀賞】
★川風を総身に受けて花みつる/石井信雄
川風を受けた満開の桜の、さわさわとした姿が詠まれている。川風
を受けた桜を内面に受け止めている透明感のある句境がいい。(高
橋正子)

【銅賞/2句】
★はくれんの白きばかりにゆきあたる/福田由平
行くところ行くところ、白れんが白く咲いている。行き当たる白に
身が洗われるよう。(高橋正子)

★まっさらな靴を鳴らして入学す/野仁志水音
靴を鳴らして入学の門をくぐる嬉しさが素直に詠まれている。まっ
さらな靴にまっさらなスーツを着た大学新入生のすがすがしさがよ
い。(高橋正子)

【特選5句】

★自らの光を放つ夜の桜/日野正人(正子添削)
★ぜんまいを手折れば軽き水の音/宮地ゆうこ
★花更けてやさしき月の真上なる/加納淑子 
★潮風が河口の桜騒がせる/おおにしひろし(正子添削)
★初蝶の土手の傾斜をすれすれに/祝恵子 

【入選@/5句】

★花しずく古書街濡れて夕暮れる/山野きみ子
★乗り換えの始発単線花万朶/平野あや子 
★鶯の声誘いたる森しんと/岩本康子 
★電車過ぎ風に遊べる花吹雪/大給圭泉(正子添削)
★囀りの檜葉より落ちて飛びにけり/守屋光雅 

【入選A/9句】

★ものの芽の間を明るき川流れ/多田有花 
★畑へと急ぐ夕暮れ桜匂う/脇美代子
★野も人も空もかぎろふ四月かな/越前唯人
★禁煙を勧める母や豆の花/野田ゆたか
★陽に透ける銀杏並木を出勤す/古田けいじ 
★桜散る保育園の庭に散る/堀佐夜子
★留守役に後塵立てて花衣/河勝比呂詩 
★花冷の鳴かない亀に手を叩く/小峠静水
★花かがり堤に浮かぶ蜃気楼/能作靖雄


▼選者詠/高橋正子
山桜散り果て少し力湧く
春の田に生きとし生けるもの育つ
春空に群れ鳥淡くまた濃ゆく  

第173回入賞発表(4月4〜6日)/高橋正子選@

【金賞】
★春光の角を打ち延べ板金工/野田ゆたか
板金の角は、特に光が集まっているように思えるが、その角をまる
で光を打ち延べるかのように叩いている。のどかな中にも春光のき
らめきが眩しい。(高橋正子)

【銀賞】
★花の高さに海が見え町が見え/おおにしひろし
「花の高さ」に一句の焦点が絞られ、平明な言葉に詩がある。この
句は、お花見の嘱目吟で、松山総合公園の小高い丘からの展望は、
三津の海が見える。この港から、子規や漱石が松山と東京を行き来
した。(高橋信之) 

【銅賞/3句】
★しゃぼん玉無心に吹けばまろやかに/相沢野風村
しゃぼん玉の「まろやかに」は、いい発見だが、これは、作者の心
の内に見たもので、作者の心が「まろやかに」なのである。(高橋信之)

★囀りて急降下して音こぼす/大給圭泉
空高くで囀って急に降りて来ると、その鳴き声が降りたところにこ
ぼれるようである。囀りを通り一遍でなく捉えている。(高橋正子)

★花冷えや寄り合い揃わぬまま始む/河勝比呂詩
その地区の話し合いの会を「寄り合い」というが、夕食後などの決
められた時間にはなかなか集まらないのが大方の「寄り合い」の常
である。まばらな人の集まりが、花冷えをいっそう冷えびえとさせ
、郷土性のある句となっている。。(高橋正子)

【特選6句】

★清明の夕陽が照らすビルの壁/多田有花
★咲き満つる花の影より川光る/石井信雄
★蕾持つ花揺れ止まぬ青き空/岩本康子
★花冷えに熱き珈琲一人飲む/堀佐夜子
★雉一声春を背負って駈けにけり/能作靖雄
★入学式終りし講堂春夕焼/加納淑子  

第173回入賞発表(4月4〜6日)/高橋正子選A

入選@/10句】

★引越し荷花湧く中へ出で立ちぬ/平野あや子
★花冷えの町はゆっくり動きだす/池田多津子
★水にふれ風にも触れて柳の芽/小峠静水
★蒔き終えて目印に置く種袋/脇美代子
★花冷えの銀座の角に靴磨き/山野きみ子
★久方の朝日に花の溢れ出る/安丸てつじ
★花冷えや鉛筆くるくる削りおり/祝恵子
★水平の枝先海へ山桜/藤田洋子
★朝市や姉さんかぶりは花の下/大石和堂
★小綬鶏の山の丸さを鳴き包む/宮地ゆうこ 

【入選A/16句】

★菜の花を新しき部屋のテーブルに/古田けいじ
★石垣の裾を隠して雪柳/都久俊
★つばくらめよぎりて残る水尾の沼/下地鉄朗
★花の冷え少しご馳走今日のひる/福田由平
★うぐいすの声のまろかに終わりけり/碇英一
★燕の巣日除けテントの裏にあり/澤井渥
★満開の桜の囲う小学校/澤井渥
★スノーフレーク見えない風に揺れている/馬場江都
★啄木鳥のつつく音して春の昼/右田俊郎
★眉の濃き得度の僧に草萌ゆる/大給圭泉
★春風をリュックに詰め行く男の子/日野正人
★頬杖を付いて人待つ花の冷え/片平奈美
★花の岸大川のぼる筏舟/山野きみ子
★ゆっくりと流れるときを桜散る/吉田晃
★桜芽の勢い四方に広がれり/日野正人
★淡色の布裁つ音もさくら時/宮地ゆうこ

▼選者詠/高橋正子
螺旋階のぼり桜を真上より
佇めば花に花の香ありと知る
両開く塔の窓より初燕  

第172回入賞発表(4月3日)/高橋正子選

【金賞】
★春たけのこ見えてそこだけ明るき藪/宮地ゆうこ
筍の秀先のわずかな緑色と、産毛のような光りが藪のなかに見える
と、「そこだけ明るき」となる。筍が出はじめるときの喜びである
。(高橋正子)

【銀賞】
★燕来て家の内外掃き清む/脇美代子
燕がやってきて、清らかで明るい季節となった。家のなかも、庭も
きれいに掃除をしてさっぱりとなった。主婦のすがすがしい生活が
ある。 (高橋正子)

【銅賞/2句】
★春の夢故郷の道を母が行く/古田けいじ
春の夢に現れたのは、故郷の道を歩む母で、母も故郷も、作者の在
りし日のなつかしい思いに満たされている。母に会えた嬉しさがあ
りありとしている。(高橋正子)

★花ぐもり鋏は確か散髪屋/河勝比呂詩 
散髪屋が、寡黙に確かな鋏使いで髪を抓んでいる。几帳面な鋏の音
は、花ぐもりにいっそうはっきりした音となって、花ぐもりの静け
さをよく伝えている。(高橋正子)

【特選5句】

(平山郁夫氏美術館にて)
★陽光に囀り高き美術館/岩本康子
★チューリップの青い蕾の出揃いし/馬場江都
★どの町も邑も雨の夜の桜/おおにしひろし(正子添削)
★築地早や仕事終わりぬ春の昼/霧野萬地郎
★大河より立山望む土筆かな/能作靖雄 

【入選@/5句】

★白椿備前にいけて湯を沸かす/林緑丘 
★花の雨公園の木馬濡らしおり/大給圭泉
★生け垣のまっすぐに芽吹き初む/池田多津子
★桜芽の勢い四方に広がれり/日野正人
★散り花の手に一杯の軽さかな/祝恵子 

【入選A/9句】

★桜咲く右は吉野への道標/都久俊
★しばらくは上見て歩く桜の日/多田有花
★柔らかき風を呼びおり雪柳/加納淑子
★チューリップ花開ききる昼下がり/澤井渥
★竹の秋節の間隔長かりし/相沢野風村
★崖上の古木の桜大枝垂る/石井信雄
★雪柳続くかぎりに高速路/山野きみ子 
★物売りに花冷えの貌覗かるる/小峠静水
★竹垣の縄のゆるびし落椿/堀佐夜子


▼選者詠/高橋正子
夜桜の幹の黒さと花の白
 岩本康子さん来松
遠来の友に夜桜白かりき
開ききって夜の桜のみずみずし  

第171回入賞発表(4月2日)/高橋正子選

【金賞】
★遠山に白きを添えし花辛夷/岩本康子
遠い山に際だって見える白が辛夷である。遠い山へ目を遣る心。辛
夷をあわあわと思う心が、しみじみと静かである。(高橋正子)

【銀賞】
★徂く春の麦赤らみて風となる/小峠静水(信之添削)
知らぬ間に春が徂こうとし、麦もほのかな熟れ色が兆しはじめてい
る。さわさわとゆれる麦は、まさに風に違いない。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★春のときを刻みはじめし花時計/守屋光雅(信之添削)
花時計の花も咲き始めた。大きな針が春のときを刻み始めたとは、
メルヘンのようなうららかさ。(高橋正子)

★草摘んで降り来し土手の遠くあり/脇美代子
草を摘んで帰るときに振り返る土手の遠いこと。一人来た道の、帰
りの、なんとはなしの寂しさが、叙情的に詠まれている。(高橋正
子)

★雑穀を炊いて暮れけり花曇り/多田有花
雑穀の素朴さが、花曇りの空の気分によく似合って、普段の心の落
ち着きが感じられる。(高橋正子)

【特選5句】

★濡れてなお菜の花あたりを明るくす/祝恵子
★さえずりのやがて膨らむ森の朝/霧野萬地郎
★大根の花ゆれ零す朝の雨/宮地ゆうこ
★墨堤の桜開きて雨になる/山野きみ子
★豆の花小さきものに目のゆく日/加納淑子 

【入選@/5句】

★満開の桜眩しき海のあり/大給圭泉
★たんぽぽのわた毛見送る空の碧/平野あや子
★クレソンの青を包みし春の水/脇美代子
★潮満ちる満開桜に触れるほど/古田けいじ
★新入生青葉に吹かれ校門へ/野仁志水音 

【入選A/8句】

★薄曇り生駒は見えず連翹忌/堀佐夜子
★入学を待つ日の雨の静かかな/吉田晃
★松川や桜並木の花水仙/能作靖雄
★白れんの純白を置くこころかな/相沢野風村
★芽吹く木に大きく見えし鴉の巣/澤井渥
★木の芽時息子がパパと呼ばれおり/河ひろこ
★せせらぎに花の一枝をさし出す/おおにしひろし
★大楠に寄り添うごとし山桜桃(ゆすら)咲く/河勝比呂詩


▼選者詠/高橋正子
ガーベラを挿したる瓶の透けている
花の雲雨の一日の過ぎにけり
外に出でてたちまち四囲の花の中

第170回(4月1日)/高橋正子選評

【金賞】
★桜咲く空も戦火の地へ続く/藤田洋子
桜が咲く空が晴れやかな空とならず、戦火のイラクへと続いて、桜
は悲しみの花となっている。桜と戦争。忌まわしい戦争の過去を思
い出させる。

【銀賞】
★耕の土生かされて日に遊ぶ/山野きみ子
「耕]は春の季語。勤勉に、よく耕された土に暖かな日がさして、
土が生き生きとし、楽しんで遊ぶかのように思える。

【銅賞/3句】
★潮騒に夜桜くっきり浮かびけり/吉田晃
潮騒の聞こえる土手の夜桜であろう。咲き満ちた桜が潮騒を背景に
白く浮き立って艶美である。

★キャンパスへ空気明るく四月来る/野仁志水音
大学のキャンパスの明るさを両手に受けたようなフレッシュな気持
ちが、さわやか。

★花びらを肩にひとひら入社式/高橋秀之
新しく入社する人がいると、迎え入れる人たちにも、さわやかな希
望が湧く。肩にひとひらの花を見た迎える側の優しさがあたたかい。

【特選5句】

★紫木蓮くちばし揃え咲きはじむ/石井信雄
★夜桜や反戦デモの灯が進む/古田けいじ
★美容室合わせ鏡に初ざくら/平野あや子 
★子ら発ちて朝のしずけさ諸葛菜/宮地ゆうこ
★たちかえる芽吹きの香り森に充ち/多田有花 

【入選16句】

★耕しの馬穴に捨つる小石少々/小峠静水
★列車からふと見る母校に芽吹きあり/野仁志水音 
★躊躇はずさくら一輪落す鳥/加納淑子
★花の雨草の芽つんつん育ちゆく/堀佐夜子 
★若緑朝日に濡れてひかり立つ/相沢野風村
★花冷えがヘッドライトにしろじろと/おおにしひろし
★湯上りの身のほてりける春の宵/都久俊
★ああこれがタラの芽か棘が痛そう/澤井渥 
★峠行く桜の花道つづら折り/池田多津子
★河童らの囲碁さすあたり黄水仙/霧野萬地郎 
★わが庭に来て幾年ぞ初蛙/河勝比呂詩
★新学期待ちて学校桜咲く/大給圭泉 
★山独活の香に手差し伸ぶ狭き棚/能作靖雄 
★去年より高い所にたら芽ふく/脇美代子 
★春風に手作り風車回り出す/祝恵子 
★トンネルを出でて花のトンネルへ/岩本康子

▼選者詠/高橋正子
花もろし西行在りし日とはいつ
若柳のみどり目に沁み暮れにけり
朝桜いんいんとして並木たり