■さら句会/入賞発表B■

第21回(8月28日)〜第25回(9月3日)

■第25回入賞発表(9月3日) /高橋正子選評


【金賞】
★鶏頭の無駄省かれて濃い赤に/吉田 晃
鶏頭の花は、花茎から絞り上げたように、たくましいまでの濃い赤色をしている。それを「無駄省かれて」と掴みとったところに、押しも押されぬ力強さがある。さすが、男性の句である。

【銀賞】
★秋耕の父の足跡くっきりと/冬山蕗風
秋蒔きの準備のころは、雨がほどよく土を湿らせてくれる。そんなときに、畑に入っている父の確固たる足跡を見た。足跡に父の存在の確かさと、同時に足跡だけになっている寂しさがある。

【銅賞/2句】
★観覧車四方八方いわし雲/池田和枝
観覧車に乗って高くあがれば、四方八方に鰯雲が広がって、ひろびろとした空をじかに感じる。鰯雲の空に身を入れた楽しさがある。

★工作の揺れる魚の青涼し/池田多津子
モビールのように作られた水族館の魚だろうか。しっかりと塗られた青い魚が無垢。


【優秀28句】

★陽も背負い肩に食い入る登山の荷/能作靖雄
日陰もないところを登ると、背後から日が照りつける。肩には、登山の荷が重く食い込む。登山の苦しい場面であろうが、臨場感を持って読める。

★ワレモコウ教卓にある新学期/岩本康子
吾亦紅を好む生徒たちは、しとやかな一面も見せる女学生だろう。新学期の教室に教師を迎え、あたらしい気持ちで二学期を出発しようという教師と生徒のいい関係がある。

★虫の音の深く沈んで白みゆく/守屋光雅(正子添削)
★角ばって蕾膨らむ白桔梗/堀佐夜子
★並走す通勤電車の窓九月/右田俊郎
★ペダル踏む畦道近道九月に入る/霧野萬地郎(信之添削)
★遅咲きの朝顔大きく蒼深く/池田和枝
★片言で迎えらる茣蓙赤のまま /平野あや子
★秋めく日シャカシャカ卵ほぐす音/祝 恵子
★茅の輪結う初めの縄を街の灯に/小峠静水
★和紙包む灯り柔らか秋夕餉/岩本康子
★朝まだき林を覚ます秋の蝉/岩崎樂典
★晩学の行く手に沸立つ雲の峰/加納淑子
★貰いきし甲賀鈴虫鳴きはじむ/都 久俊
★遠く近く雲は流れて秋の空/安増恵子
<Kさん送別>
★歳月や楠の上行く秋の雲/碇 英一
★布袋草樹のざわめきにゆらぎ寄る/戸原 琴
★秋暑しグラウンドの声校舎呑む/日野正人
★尼寺へ越えゆく峠葛の花/平野あや子
★風涼し関所の廊下みしっと鳴る/澤井 渥
★秋旱河原に石器らしきもの/磯部勇吉
★鉦叩叩く独りの夕餉刻/おおにしひろし
★たらの花曲がれば御岳見えてくる/古田けいじ
★玻璃皿にゼリー崩れて秋暑し/山野きみ子
★露の玉転がりこらえ稲の葉に/岩崎楽典
<槍・穂高縦走>
★頂の秋見ゆるものみな澄めり/多田有花
★栗の毬たわわに揺れておぼろなる/宮地ゆうこ
★土器片をジグソーパズルに秋暑し/磯部勇吉


▼選者詠/高橋正子
虫音耳に痛しと思う野を登り
奥部屋に虫音を少し遠く聞く
虫かごの竹ひご爽やかにも並び


■第24回入賞発表(9月2日) /高橋正子選評


【金賞】
★少年の夏を経て来し背の高さ/碇 英一
夏休みを過ごし、たくましくなった少年への賛歌。そこに、在りし日の少年時代がよみがえっている。少年へのまぶしさに歳月の深さを感じる。

【銀賞】
★爽やかに遠嶺明るい杉木立/霧野萬地郎
遠く目に映るものが、爽やかで明るい。爽涼の気分に浸されている作者がここにいることは幸せ。

【銅賞】
★夕風の薔薇の蕾に来て淋し/加納淑子
すっくと立っている薔薇の蕾に、夕方の風が吹き、心静かに見ているだけに、淋しい感じがする。夕風を纏う薔薇の蕾が、ほんとうに美しい。


【優秀23句】

★靴どっと出入る電車九月に入る/祝 恵子(正子添削)
電車のドアが開くと、どっと人の足が乗り込んでくる。たくさんの靴やズボンが寄り重なっても暑苦しさを感じない。そんな涼しい九月がやってきた。

★二学期の教室に風新しき/池田多津子
夏休みが明けて、さあ二学期という教室。教室を吹き抜ける風が爽やかである。新しいのは、教師の気持ち。

★新生姜朝餉の膳の一皿に/堀佐夜子

★螻蛄鳴くや甲賀静かに暮れてゆく/都 久俊

★茹であがる熱きジャガイモほくほくと/守屋光雅

★柘榴の実色づきつるりと固さあり/岩崎楽典

★あめつちの混沌として秋豪雨/宮地ゆうこ

★爽やかに連峰槍の影を受く/多田有花

★我が影の長くなりたる秋の朝/岩本康子

★蟋蟀の声は遠くに家族風呂/高橋秀之

★胡弓の音月の誘いにひょうひょうと/池田和枝

★芋の葉に音打つ雨となって来し/小峠静水

★マンションの上に幾重にも夕焼雲/冬山蕗風

★道祖神穂たでなびきし信州路/平野あや子

★妻の刻(とき)己の刻や地虫鳴く/おおにしひろし

★秋の燈の静かに灯る平和かな/日野正人

★白き紙虫六本の足の影/戸原 琴

★蒼鷺や漁夫の桟橋短くて/澤井 渥

★空蝉を葉に止まらせて秋の木々/吉田 晃

★鶏羽を引きずり歩く残暑かな/磯部勇吉

★肌にふと秋一筋の風に触れ/山野きみ子

★ちちろ集く子へのメール終る時 /古田けいじ

★風の盆残暑も知らず踊り明く/能作靖雄


▼選者詠/高橋正子
虫の音の止みし一つのさみしけれ
鉦叩石のかげより打ち続く
水引草思えばいつも庭にあり


■第23回入賞発表(8月30〜9月1日)/高橋正子選評@


【金賞】
★枝豆に塩ふるみどり溢れさせ/山野きみ子
茹であげられた枝豆に塩を振りかけることで、枝豆の緑が鮮やかに際立ってくる。みどりが溢れるのである。あふれるような生き生きとした気持ちがある。

【銀賞】
★岩陰の海の蒼濃く秋早し/河ひろこ
岩陰の海の水は、澄んでいて、はや秋を感じさせてくれる。意外にも早く訪れた秋に、心にも秋の身支度をと思う。

【銅賞】
★朝顔の期待の色の二つ咲き/守屋光雅
期待の色は、おそらくきれいな青い色。そうではなくて、錆び朱のようなしっくりとした色。詠み手だけが知る色であるが、晴れ晴れと咲く大輪の朝顔を思う。


【優秀43】

★虫の音の夜空に高さ限りなく/日野正人
空の限りない高さまで、虫の音が届いている。澄んだ虫の音が「高さ限りなく」で表されている。

★稲刈りのジーンズTシャツ夕日映え/能作靖雄
夕日を受けるまで稲刈りをしていた、ジーンズにTシャツ姿が明るい。よく働いた一日の充足感がさわやかに伝わってくる。

★路地入れば竹の春なる明るさに/加納淑子
<槍・穂高縦走>
★水澄みてそれぞれ渡る丸木橋/多田有花
★窓開けて走る山路の雲は秋/太田淳子
★余生とは真白き未来蕎麦の花/野田ゆたか
★川底の石色々に水澄めり/磯部勇吉
★式部の実色付くを見て森を出る/古田けいじ
★弁天堂ぐるりを囲む蓮の花/都 久俊
★防災の日に改める袋など/霧野萬地郎
★秋の夜の外灯淡し円錐に/相沢野風村
★水引草滝絵の前に活けらるる/戸原 琴
★風の盆へ妻の大きな旅カバン/守屋光雅
★天の川宇宙の果てにまた宇宙/安丸てつじ
★秋手入れ枝の切り口しらじらと/馬場江都
★両頬に笑窪を溜めて九月来る/磯部勇吉
★晩夏の野過ぎ行く日々の速かりき/右田俊郎
★大いなる雲行く果ての夜長かな/宮地ゆうこ
★秋灯の眼鏡置かるる季語辞典/碇 英一
★朝霧の消えて天守の真っ白き/池田多津子
★馬歩くそれにあわせてアカネ飛ぶ/安増惠子
★空深くバロック流す良夜なり/堀佐夜子
★蟋蟀や夜の気配やさしうす/鬼頭雅子
★想い出に二重丸して休暇果つ/池田和枝
★新涼や空飛ぶものはみな高し/小原亜子
★窓開けて走る山路の雲は秋/太田淳子
★水澄みて凛と写すや山と空/霧野萬地郎
★花梨酒をつくる花梨に刃を入れる/おおにしひろし
★露草に雨の雫の重ねらる/祝 恵子
★清々し水の落ち行き稲の花/吉田 晃
★かなかなや東京知らぬ子等の声/小峠静水
★近かりし紀和の煙突秋に入る/平野あや子
★久々の雨に蜜柑の青強く/池田多津子
★橋脚に渦巻く潮の秋めけり/澤井 渥
★のぼりゆく馬籠の坂を秋日影/金子孝道
★えのころで撫でて心の傷いやす/やぎたかこ
★秋ふうりん光に遊べる夕べかな/岩本康子
★切り採りてまだ濡れている女郎花/脇美代子
★山寺や五百羅漢の夕焼ける/冬山蕗風
★待ち切れず見つめる吾子に桃を剥き/高橋秀之
★秋月やランドマ−クの観覧車/津村昭彦
★敷石に下駄ひびかせて秋祭り/石井信雄
★人多き駅のホームや秋暑し/岩崎楽典


▼選者詠/高橋正子
虫音りり夜をあおあおと鳴きとおす
おにぎりの飯の白さに飛蝗飛び
雨匂う稲穂の道の曲がりたる


■第22回入賞発表(8月29日)/高橋正子選評

【金賞】
★秋天や留めるものの無き高さ/大石和堂
抜けるように青く高い秋天を、「留めるものの無き」と感じた。留めるものとは、なんだろうと哲学的な問いが湧く。切り込みが深い。

【銀賞】
虫の音に取り囲まれて闇にいる/祝恵子
灯を消して、静かにしていると、虫の音が四方から聞こえてくる。虫の夜がふっくらとして感じられる。

【銅賞】
真四角の柿の葉すしをむく夜長/平野あや子
柿の葉すしは、お土産なのだろう。柿の葉にきちっと四角に包まれたすしを、むく所作に、夜長の思いが湧く。熱いお茶も淹れられているだろうから、よいひと時である。


【優秀28句】

★鳴き止まり鳴き継ぐ蝉の樹を仰ぐ/馬場江都

★まだ青きみかん畑を登りゆく/右田俊郎

★夕焼けを大きな風車回しおり/河ひろこ

★降り来れば太平洋の秋の青/右田俊郎

★街路樹の葉擦れ乾ける秋の夕/岩本康子

★木曽駒が暮れて広がる蕎麦の花/古田けいじ

★教会の十字架(クロス)の上の鰯雲/馬場江都

★唄われよと胡弓が囃す風の盆/能作靖雄

★驚きをとどめて案山子立ちつくす/多田有花

★身離れの秋刀魚の骨の潔し/日野正人

★仰ぎ見る雲の薄きや秋を知る/大石和堂

★日盛りや積まれしマネキン目を剥けリ/林暁兵

★菜園に繁る青紫蘇揺すり入る/脇美代子

★鰯焼く夕日も匂いを嗅ぐ中に/吉田 晃

★青空の瑞々しきに鱗雲/岩本康子

★陽に割れしトマト甘さを溜めにけり/脇美代子

★秋の朝申命記尽きモーゼ死す/碇 英一

★宿坊の膳こまごまと名残茄子/平野あや子

〈橘賞受賞・虫の闇歩くひとりの旅心/信之〉
★師の墨蹟額装なりて虫を聞く/守屋光雅

★風を呼び風に叩かれ猫じゃらし/小峠静水

★秋光をたっぷりと浴び青蜜柑/おおにしひろし

★校名に村の名残る夕かなかな/堀佐夜子

★水揚げの籠より跳ねる車海老/澤井 渥

★旅客機の秋の夕日を染めて消ゆ/磯部勇吉

★ねこじゃらし刈られしままに匂ひ立つ/小原亜子

★マンションを霧に溶かして向こう岸/岩崎楽典

★一振りのバニラに秋の風来たる/宮地ゆうこ

★楠の葉をすべて揺らして天高し/多田有花


▼選者詠/高橋正子
夜更けての梨の実の白切り分ける
夜を歩き鋭(と)き虫の音の広がれる
城砦の青き秋灯蛾が舞えり


■第21回入賞発表(8月28日)/高橋正子選評

【金賞】
★葡萄棚影濃きままの房を採る/小峠静水
葡萄棚にまだ葉がよく重なって、影を作っている。葡萄の房も粒が揃って各々の粒に影がある。その房をそっくりそのまま採る。表現に衒いがなく、レベルの高い句といえる。

【銀賞】
★日を受けて稲穂の先の明るく透く/日野正人
稲穂の先が明るく透けて、日の光りが美しい。明るく拡がりを感じさせてくれる句。

【銅賞】
★新涼や卵の殻で瓶洗う/都久俊
卵の殻を瓶に入れて、振り洗うと、瓶はきれいに透き通ってくる。新涼の感じが、透明な瓶、清潔な白い卵殻によって、楽しく表現されている。余談だが、茶渋のついた水筒に卵殻を入れて洗うと、水筒はピカピカになる。これは私のお勧め。


【優秀20句】

★風高く吹けば高きへ秋アカネ/吉田晃

★朝さやか荒神様の水を替え/祝恵子

★白き月一山を経て金色に/金子孝道

★目の高さに群れとなりいし赤とんぼ/鬼頭雅子(正子添削)

★風揺らす葉より白露のこぼれ落つ/右田俊郎

★踏み入れば縄文の丘飛蝗とぶ/磯部勇吉

★スケボーの少年の飛ぶ天高し/霧野萬地郎

★フルートの煌きさっきみた蜻蛉/古田けいじ

★北へ向かう青さ透かせて鰯雲/宮地ゆうこ

★新生姜切れば香りのみずみずし/池田多津子

★腰屈め竪穴住居涼しかり/磯部勇吉

★つくつくし子のかくれんぼもういいよ/金子孝道

★赤とんぼ吾子の帽子で一休み/高橋秀之

★浜名湖の広くなりたる今朝の秋/澤井 渥

★はたはたと祭りの幟秋は来ぬ/岩本康子

★緑陰の杣道通り故郷へ/冬山蕗風

★駅頭に阿波の踊りや高円寺/岩崎楽典

★威しテープ歩く背丈に輝ける/相原弘子

★百日紅根元にくるり箒の跡/戸原琴

★芋の葉を銀のしずくの遊びおり/右田俊郎


▼選者詠/高橋正子
娘の秋扇たたまれ青き色が見ゆ
思い出の富士の登山の鈴ひとつ
十六夜の句をしたためて墨匂う
..2002/ 8/30(Fri)3:35

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