■さら句会/入賞発表(27)■

第148回(2月28日)〜第153回(3月9日) 



第153回入賞発表(3月7日〜9日)/高橋正子選評 @



【金賞】

★すぐ止むも明るき空の春の雪/堀佐夜子

すぐに止む春の雪であるけれども明るい空から降ってきて、し

ばらくは、優しくほのかな思いにさせてくれる。春の雪の軽さ

がいい。



【銀賞】

★春の水堰の高さを透明に/相沢野風村

堰を落ちるすべすべした春水の透明感がよく捉えられている。

「堰の高さ」をしっかりと目に収めて、句の焦点が絞られてい

てよい。



【銅賞/2句】

★猫柳きらと光りて雨後の日矢/河勝比呂詩

雨上がりの猫柳に雨滴が残って、「きら」と光りが見える。雨

上がりの日矢が爽やかな気持ちにさせてくれる。「きら」は、

小さな光で、猫柳のふっくらした形が目に見えるよう。



★春光を残して庭師帰りけり/林緑丘

庭師が来て、庭木が剪定され、すっきりと明るくなり、空の光

もよく届くようになった。庭師が春光を残して帰ったのは事実

。春先の庭は光で眩しい。



【特選5句】



雨上がり青さを増すや蕗のとう/大給圭泉

草萌えやボール一つの忘らるる/碇英一

木の芽揺れ本棚に影届きけり/脇美代子

花櫁過ぎれば近き水の音/宮地ゆうこ

料峭に雲を飛ばして富士硬し/山野きみ子  





第153回入賞発表(3月7日〜9日)/高橋正子選A



【入選35句】



春燈に未完の木の家ふくらめり/柳原美知子

音高く余寒の柱時計鳴る/藤田洋子

海鳴りを間近に置いて葱の花/おおにしひろし

年々に菜の花旅情を膨らしむ/山野きみ子

春雨に静かな雨量ありにけり/野田ゆたか

溶接の火花盛んに春夕べ/古田けいじ 

冴えかえる木々の揺らぎのぎこちなく/福田由平

<アンコール遺跡を外れて>

楽団はみな傷痍なり花の茣蓙/霧野萬地郎

さくら草鉢いっぱいの薄紫/池田多津子

青空に雲雀吸い込まれ筑波峰/大給圭泉 

雨あとの日を散りばめて犬ふぐり/藤田洋子

黒土に芍薬芽吹く濡れたまま/古田けいじ

やわらかき山河に降りて春の霜/多田有花

深ぶかと陽の差す図書館柳の芽/脇美代子

川原へと歩めば水の温む音/池田多津子

福寿草一つ遅れて芽生えたり/今井伊佐夫 

遥かなる春陽にむかい揚雲雀/おおにしひろし

雲の影行きて木蓮また輝く/宮地ゆうこ

木蓮の高きより雨のひかり落つ/宮地ゆうこ

如月の風を割きつつタスキ繋ぐ/日野正人 

初音聞く日溜りの奥耳澄ます/岩本康子

紅梅の蕾の色にあられ舞う/能作靖雄

カラフルな車両すぎさり土手青む/祝恵子

つかの間の春の霙や肩濡れし/林緑丘

糸柳風に梳かれて芽吹き初む/磯部勇吉

春の雪コートにまといて一本道/野仁志水音

子らいつもひとかたまりに春の雪/多田有花 

若布採るゴム長靴に潮の入り/澤井渥

春あらし鯉水底に動かざる/石井信雄

電球を廻して点す啓蟄の灯/小峠静水

紙風船折り目忘れし丸さかな/小峠静水 

病む床に連翹の枝飾りたり/右田俊郎

啓蟄や雨沁む土の黒々と/池田和枝

春暖炉寒くもなきに手を翳す/都久俊

腹ばいて京間に残る暖かさ/大石和堂





▼選者詠/高橋正子

城山の城に残れる春夕日

むらさきのすみれの暮れて丈低き

藪つばき沢にて沢のはなやぎを  





第152回入賞発表(3月6日)/高橋正子選評



【金賞】

★剪定に鋏研ぐ水白濁す/相沢野風村

剪定のために鋏を研ぐのだが、刃をしっかりと研いだ研ぎ水が

白く濁って、早春の水の冷たさが感じ取れる。刃と向き合う姿

勢に緊張感がある。木もすっぱりと剪定されるであろう。



【銀賞】

★吊橋を引張り合て山笑う/今井伊佐夫

吊橋のかかっている谷間を作る二つの山。春の山となって、吊

橋を引っ張っているが、ユーモアがあって、春の山の息吹く明

るさが感じられる。



【銅賞/2句】

★風船の放されてゆく深き空/小峠静水

風船が放されて、空の深みのある限りどこまでも昇ってゆきそ

うである。空の深さを知らされる。



★まだ固き白木蓮の芽木凛と立つ/平野あや子

華やかな白い花を空に開く白木蓮であるが、まだ蕾の固い芽木

の状態を詠んだもの。その凛とした姿があって、一斉にあの白

い花を開くことができるものと納得させられる。



【特選5句】



★春の雨匂えり明日の米を研ぐ/脇美代子

★黒潮の香はその侭に初鰹/下地鉄

★一叢の芹の豊かに水車跡/澤井渥

<クメール宮廷舞踊(アサプラ)見学>

★女神みな夏の夜空へ手を反らす/霧野萬地郎

★薺咲き破れ板塀を明るくす/加納淑子 



【入選17句】



★梅園の梅の真下に蒲公英黄/おおにしひろし

★石橋の影の映りし春うらら/大給圭泉

★春霖に包まれ我が町冷えており/岩本康子

★啓蟄の雨が田畑を叩きおり/多田有花

★上向いて咲く蒲公英に雨はじけ/藤田洋子 

★見下ろせば運河静かに春の雨/古田けいじ

★雛の灯を早くください日が暮れる/河野斎 

★堀端の水切る背びれ風光る/能作靖雄

★春陰の坂下時の止まるごと/山野きみ子

★春塵の街のあちこち目覚めけり/福田由平 

★いかなごの初の釘煮に味ふたつ/高橋秀之 

★春の雨粘土細工を持ち帰る/祝恵子

★スタンドのアドーバルーン春の色/堀佐夜子

★画材にとふと足元の仏の座/斎藤のぶこ

★春光や連子の窓の影を踏む/石井信雄

★みおつくし波間に微か春の星/河勝比呂詩 

★踏み入るを固く拒むや犬ふぐり/右田俊郎 



▼選者詠/高橋正子

突風の吹いて揺らせる庭なずな

鴨往にし池の空白空映す

ミモザの黄のあまりに強し鳥曇  





第151回入賞発表(3月5日)/高橋正子選評



【金賞】

★春の雨岬へ雲の集まれり/大給圭泉

海へ突き出した岬に春の雨が降っているのだが、遠くから見れ

ば大方の雲は岬に集まっている。その雲が春の雨を降らせて、

絵となる構図である。



【銀賞】

★スコップに啓蟄の土斜めなり/小峠静水

啓蟄の土にスコップを入れると、そこに掬われる土は、スコッ

プの傾斜にしたがって斜め。そういったものの見方も面白いが

、啓蟄には、土をいじりたくなる心情がいい。



【銅賞/2句】

★やっとこさ段取り八分種を買う/今井伊佐夫

飛騨弁が、自然に使われていて、生活実感が表現されている。

種を買いに出掛けた店の雰囲気も想像でき、「段取り八分」の

ところで種を買うのが作者らしい。



★馬酔木咲く海岸通りを路線バス/右田俊郎

馬酔木が咲く海岸通りの明るさを路線バスが走って、映画のよ

うな雰囲気がある。馬酔木の白が清楚。



【特選5句】



★さんしゅゆの色に始まる美濃の山/古田けいじ

★春めきて車窓の夕日に傘忘る/能作靖雄(正子添削)

★青空に白鳥帰る今朝のこと/守屋光雅

★橋くぐる船音弾み水温む/平野あや子

★淡雪や海に降るとき海に消え/多田有花 



【入選19句】



<トレンサップ湖の水上村にて>

★湖果てるまで煌めけり大夕焼け/霧野萬地郎

★春の雪生まれたままの村に住み/堀佐夜子

★春の田の生まれし水を浸しおり/相沢野風村

★玄関に小さき小さき雛飾り/野仁志水音

★湯けむりの道で売られる蕗の董/河ひろこ 

★たちまちに玻璃一面の春の雪/碇英一

★凍て返る生徒の去りし教室に/岩本康子

★袴取り土筆湯水によこたえる/都久俊

★いちめんに白子干されて浜の風/宮地ゆうこ

★うすうすと春陽を溜めて柳枝垂る/おおにしひろし

★金魚田のつづき蓮田の枯れつくす/澤井渥 

★一輪車箒も置かれ梅の庭/祝恵子

★路地奥の梅咲きしかと歩を返す/磯部勇吉

★囀りの大樹に暮色せまりけり/加納淑子

★春空を四角に切りて連子窓/石井信雄

★今朝聞きし花の名忘れ春一番/小原亜子 

★春霙地虫ならずも躊躇せる/河勝比呂詩 

★恋猫の手負いと知らず追いにけり/福田由平

★反抗期もぐり込みおる春炬燵/池田和枝 



▼選者詠/高橋正子

土手青み目に眩しさをくれており

桜つぼみのどこかきらりと青き色

半熟の朝の卵に春寒し  





第150回入賞発表(3月4日)/高橋正子選評



【金賞】

★ものの芽に風荒々し月替わる/山野きみ子

春一番であろう。3月になったばかりのときに、いたいけなも

のの芽に、荒々しい風が吹いて、これから本当の春になって行



く。季節の変わり目のはげしさに出会う時である。



【銀賞】

★花菜満つ無人駅舎のホームまで/おおにしひろし

無人の駅舎までは、道沿いや空き地や、それに小さな畑に花菜

が咲き満ちて明るい景色を作っている。普段、殺風景な無人の

駅舎も今は花菜で明るい。



【銅賞/2句】

★如月や鳥が群れ飛ぶ明るさに/多田有花

如月のよさをなんと言おう。群れ飛ぶ鳥が静かで、羽音が聞き

取れそうである。空が広くて深い。そんな如月が好きである。



★水琴の地底の音に春きざす/平野あや子

地底に鳴る水琴屈の音も、春めいて聞こえる。地底に鳴る水音

より春がひそやかに始まる。 



【入選14句】



★天空の一角青く春の雪/多田有花

★いくつもの橋もくぐりて春一番/古田けいじ

★しばらくは卒業の余韻我もまた/柳原美知子

★畝の間の水光りおり麦青む/澤井渥

★紙の雛仕上げに薄く紅をひく/小原亜子

★冴え返る雨の舗道の光りおり/相沢野風村

★一時は激しく降れり春の雪/磯部勇吉

★猫柳県境近く水に這う/小峠静水

★大根を抜きしままの畝朝日射す/大給圭泉

★月遅れ昔に習う雛納め/河勝比呂詩

★白木連のまだ風避けの厚き皮/碇英一

★外泊に帰る寒さも嬉しかり/福田由平

★ふるさとに老いし父母あり雛送り/右田俊郎

★終雪に地虫隠れし畝静か/能作靖雄



▼選者詠/高橋正子

独活の香の少しばかりをてんぷらに

春あらし朝しらしらとするときを

独活刻み指にその香の移りたり  





第149回入賞発表(3月3日)/高橋正子選評



【金賞】

★星消えて香を強くする沈丁花/古田けいじ

星が消えるとたちまち闇は深くなる。闇が深ければ、いっそう

強く沈丁花の香は漂う。星は消えているものの、沈丁花の一つ

の花が星のように心象に残る豊かな句である。



【銀賞】

★木の校舎陽炎い若さはるかなり/能作靖雄

木の校舎には、それが古い校舎であれ、新しい校舎であれ、雰

囲気と香りがある。春の日に陽炎う校舎に学校に通ったころの

「若さ」を思い起こす。春なれば湧く感懐である。



【銅賞/2句】

★畝均し春夕焼の影平ら/宮地ゆうこ

冬野菜を抜いた後の畝を均し、次の植えものの用意をする。夕

焼けの影の伸びる、きれいに均された畑に今日の充実がある。



★目覚めれば車両に迫る春の山/高橋秀之

乗り物に乗っていて、いつか眠ってしまって、目が覚めると山

が近くに迫り、まぎれもなく春の山となっているのに驚く。春

の山をあきらかに見た喜びがある。



【特選5句】



★古雛に菓子の色のみ明るかり/守屋光雅

★春潮の茜を分けて舟帰る/吉田晃

★春の雨土手の草色分けており/岩本康子

★子どもらへあられ用意の紙包み/碇英一

★春一番鉄扉を叩き通り過ぐ/山野きみ子 



【入選@/21句】



★菜の花の束ねを解いて湯をとおす/祝恵子

★大窓の曇りを拭い三月来/多田有花

★誰も居ぬ職員室の春暖炉/都久俊

★うてな見せクリスマスローズの白く咲く/馬場江都

<アンコールの遺跡:バンテアイ・スレイにて>

★睡蓮をわたり女神の小さき寺/霧野萬地郎 

★福寿草固く寄り添いふくらみぬ/今井伊佐夫

★白和えにほのと芹の香噛みしめる/池田多津子

★病棟の眠る外なき春の暮れ/福田由平

★桃の花活けて蕾の散りており/大給圭泉 

★せめてもと雛の絵を描く春燈に/堀佐夜子

★曳き船のはや視野になし春の潮/石井信雄 

★芽柳にやさしき風の絶え間なし/加納淑子

★遠く田に畦行く人や春寒し/磯部勇吉

★雛霰妻が買いきし掌(て)に遊ぶ/おおにしひろし

★鐘おぼろ回旋橋のまわりゆく/平野あや子 

★芽ぐまんと大樹小樹も風ン中/小峠静水

★背丈また伸びし我が子や春の川/池田和枝

★日陰雪なんじゃもんじゃはまだ裸/小原亜子

★水温む時計の針の止まるとき/相沢野風村

★雪洞のゆらぎの照らす雛の笑み/右田俊郎

★順風に一射浴びせて春疾風/河勝比呂詩



▼選者詠/高橋正子

雛の日のことを静かに豆腐切る

雛の日を皿絵の雛と過ごしけり

春宵の風さわさわと高架の下  



 

第148回入賞発表(2月28〜3月2日)/高橋正子選評 



【金賞】

★春潮のただひたすらにまっ平ら/右田俊郎

春潮がじつに平らに凪いで、光を反射して潮が音もなく流れる

様に、春潮の大きな意思があるように感じる。



【銀賞】

★土雛の裏に明治と書かれおり/今井伊佐夫

土雛が作られた年号の明治が刻まれ、明治、大正、昭和、平成

の波乱の時を経た土の雛に、重みと深い色あいが感じられる。

土雛にその土地で生きてきた人の歴史が読めるようである。



【銅賞/2句】

★山鳩の聞こえ芽吹きの光りおり/大給圭泉

木々の芽も光りに輝くようになって来ると、山鳩ものどかに鳴

いて春らしくなってくる。のどかで、光の溢れる早春が心地よ

い。



★駅頭の人の華やぎ卒業日/野田ゆたか

卒業の季節である。駅には、卒業式を終えた親子や友達同士が

卒業の喜びで華やいで行き交っている。時節の人事を季節感溢

れるものとしてよく把えている。



【特選5句】



段ごとに草萌えてくる棚畑/脇美代子

花咲くと見えで粗しき牡丹の芽/碇英一

青々とレタスを盛れば鳥の声/おおにしひろし

<アンコール:プノン・バケン山頂にて>

万緑に埋もる王国黄の気球/霧野萬地郎

白衣たち輪になりて食ぶ桜餅/河ひろこ 



【入選/25句】



雛菓子の紅ほのぼのと薄紙に/藤田洋子

春光に大窓一枚磨き上げ/岩本康子

いきいきと雨は降りけり草萌えに/多田有花

コーヒーの香り満ち立つ春炬燵/堀佐夜子

来る雨に辛夷蕾を裂きにけり/古田けいじ 

山畑の畔の野蒜や緑濃し/石井信雄

春空の真っ青にチャイム鳴る/池田多津子

日翳れば春水藍濃く増す流れ/山野きみ子

藻の色の鮮やかなりし春の磯/平野あや子

笑う山へ野外授業の子らの列/宮地ゆうこ

味噌汁の苦味のうれし蕗の薹/守屋光雅

野焼きして土留め見えて水谺/小峠静水

蒼深き雪嶺滑空飛機下りぬ/能作靖雄

頬杖をつきし車窓や鳥曇/池田和枝

岩海苔とちりめん入れて今朝の粥/安丸てつじ

(卒業式の夜)

薄寒き部屋で制服まだ脱げず/野仁志水音

旅客機の灯のぽかぽかと春の星/磯部勇吉

春雨を抱きて庭のふくるるる/林緑丘

雨降れば木蓮ふわっと蕾持ち/祝恵子

風吹けば風のいろして猫柳/加納淑子 

二分咲きの梅を添え置く宿の膳/今井伊佐夫

<アンコール遺跡:プノン・バケン山にて>

夕焼けや象の背に揺れ山へ入る/霧野萬地郎

勝手口友置き去りし春大根/河勝比呂詩 

夕東風や明日の予報は雨とう/澤井渥 

卓上に点る椿に遅速あり/福田由平