■さら句会/入賞発表K■

第66回(10月31日)〜第70回(11月6日)

■第70回入賞発表(11月6日)/高橋正子選評


【金賞】
★鴨来る朝の川面の輝きに/多田有花
生き生きとして、心が輝いている句である。「朝の川面の輝き」は、鴨が来た喜びである。水と光と鴨とが作る明るい動きに透明感がある。

【銀賞】
★黄落の光の広し大銀杏/碇 英一

【銅賞】
★塀ごしにひかり一筋朴落葉/加納淑子


【特選5句】

★かりんの木の実をはずされて軽き身に/祝恵子
あの重そうなかりんが、木からはずされて木が軽々となった。木の気持ちは、詠み手の気持ちで、これから冬を迎える心準備ともいえる。空も木も人もいよいよ冬となる。

★野良猫の通う道あり石蕗の花/福島節子
野良猫の通う石蕗の道が、初冬の冷たさをよくあらわしている。野良猫と石蕗を取り合わせた作者の感性にしなやかな個性がある。

<白馬岳山行その2>
★青空に赤い実ばかりをナナカマド/福田由平
ナナカマドは、その実のつき方と、赤く円らな小さい実にかわいらしさがあって特徴的。まだ小鳥が来ていないのだろう。熟れた姿そのままで青空にある。空が深く思える。

★広やかに大気の凛と紅葉映ゆ/山野きみ子  
★立冬の空透き透る蒼さあり/おおにしひろし


【入選18句】

★久々に帰り来る子に牡蠣を買う/脇美代子
★切れ目なく続く白波冬近し/高橋秀之
★相席の鍋焼うどん湯気ゆたか/宮地ゆうこ
★夕映えに鵙の音一瞬瀬音呑む/平野あや子
★油絵の黄バラ鮮やか秋灯下/堀佐夜子
★庭隅に残菊ありてあたたかき/池田和枝
★大仏のうしろ紅葉の山燃える/霧野萬地郎
★柿紅葉一枝揺れる風の筋/青海俊伯
★熱燗や暦二枚の六畳間/冬山蕗風
★赤い靴履いた子に舞ふ粉の雪/右田俊郎
★秋天の深き底より鳶落ちる/能作靖雄
★直筆の二書の明るき秋灯下/藤田洋子
★部屋なかば陽のさし込みし今朝の冬/都久俊
★群雀刈田わたりてうねり飛ぶ/池田多津子
★京菓子の土産を持ちて菊日和/大給圭泉
★六地蔵ぽつぽつ濡らす秋時雨/岩崎楽典
★背をたたき朝の挨拶冬初め/吉田 晃
★こんにゃくのほかほか煮えて紅葉園/磯部勇吉


▼選者詠/高橋正子
日矢青く太しは時雨の雲を抜け
渓を来て柞(ははそ)黄葉を眼に深く
 おおにしひろしさんの釣果
秋日濃し小鯛に海のきらめきを


■第69回入賞発表(11月5日)/高橋正子選評


【金賞】
★青空の桜紅葉にやわらげる/戸原琴(信之添削)
一枚の青空の強さに桜紅葉が加わると、青空も和らいで目に入る。この「やわらげる」は、作者独特の感覚から捉えられたものであるが、青空に収まる桜紅葉の日本的な色合いをよく表出している。

【銀賞】
★踏み出せば靴を包んで朴落葉/脇美代子

【銅賞】
★草紅葉して荒庭を明るくす/加納淑子
荒れた庭の草々も、紅葉して意外な美しさを見せてくれる。作者の気持ちも明るくなったのであろう。その気持ちも含めて「明るくす」となった。

★湖に日差し傾き菱紅葉/大給圭泉
湖の片隅に張り付いたような菱紅葉。それに傾いた日差しが届き、しずかな景色にしずかな心境を得ている。


【特選6句】

★日差し濃く秋嶺襞を深くせり/小原亜子
★三日三晩時雨れて山の眠りけり/磯部勇吉
★漁火の音なく燃ゆる冬の闇/右田俊郎
★抱きて結う残菊ほのと陽の温み/河ひろこ(正子添削)
★寒波来て教室紺の服色に/池田多津子(正子添削)
★駅名の上に美濃の字柿続く/澤井渥


【入選15句】

★島影のとけて秋いろ水平線/宮地ゆうこ
★ボリュームを少し落として「枯葉」聞く/堀佐夜子
★ゴム跳びをする子らの声柿紅葉/多田有花
★城攻めの船に乗りたる菊人形/岩崎楽典
(53番園明寺にて)
★邪宗門秘めて札所に大銀杏/おおにしひろし
★荒海や崖っぷちの石蕗の花/岩本康子
★白く太く飛騨の大根届きけり/古田けいじ
<白馬岳山行>
★大ガレに息整える渓は秋/福田由平
★湯豆腐をつつく夕餉の拉致報道/冬山蕗風
★手垢古る冬の歳時記身ほとりに/平野あや子
★触れながら照葉の揺れる磨りガラス/霧野萬地郎
★新藁積み軽トラ曲がる交差点/祝恵子
★綿虫のひとつひとつの日暮れかな/小峠静水
★長靴で歩く楽しさ落葉漕ぐ/守屋光雅
★冬隣り畳の光る深日差し/碇英一


▼選者詠/高橋正子
もみじして蓋える空の青が洩れ
大学のもみじの樹下の長き通り
籠にある蜜柑の照るは夜更けても


■第68回入賞発表(11月4日)/高橋正子選評


【金賞】
★渡り鳥水平線の紺に消ゆ/冬山蕗風
くっきりと紺色となっている水平線を、瀬戸内海ではまず見ることはない。太平洋であろうが、そんな果てしない海を鳥がさらに遠くへと渡ってゆく。渡り鳥の不思議な力をみる。

【銀賞】
★木の実ごま回せば円く曲がり行き/碇 英一

【銅賞】
★連山の一つを近くに冬夕陽/岩本康子
自分のところから始まる連山の一つを、夕陽が照らし浮かして、寒々とした景色のなかにも暖かさを感じさせてくれている。


【特選5句】

★蹲の丸にすっぽり秋の空/青海俊伯
蹲に張られた水の円形に、秋空がくっきりと映っているので、そのまま秋空が蹲にはまったようになっている。こんなにして楽しむ秋空もいい。

★木枯に日の押しやらる空の果て/山野きみ子
★秋航へ発つや汽笛のこだまして/霧野萬地郎
★どんぐりを拾えばほのと濡れており/古田けいじ
★獅子柚子を座の真ん中に句会かな/岩崎楽典


【入選19句】

★ご城下の「なもし」言葉や文化の日/池田和枝
★自転車を連ねて運ぶ菊の鉢/祝恵子  
★水鳥の重たく浮きて余呉暮れる/小峠静水
★クリスマスソング本屋に流れ文化の日/守屋光雅
★手に届くまでの柘榴のたわみかな/野田ゆたか
★とりどりの菊に流るる雲の影/柳原美知子
★蓮枯れて水輪の三重に城の堀/平野あや子
★菊薫る空は何処か初雪ぞ/能作靖雄
★潦冬のぶらんこ空(くう)を切る/磯部勇吉
★冬初めガラスくもりて灯のひとつ/相沢野風村
★敷き詰めるふんわり明るいカーペット/池田多津子
★霜月や句集読むとき陽(ひ)の恋し/おおにしひろし
★冬仕度終えし身体を湯に浸す/多田有花
(正倉院展と東大寺)
★天平の高き甍や照紅葉/安丸てつじ
★開幕待つロビーの窓や鳥渡る/宮地ゆうこ
★潮風の寄せて色づく蜜柑山/大給圭泉
★茶の花や霧にも葉にも隠さるる/戸原琴
★木戸深く伸びる日差しやお茶の花/脇美代子
★鳥急ぐ鎮守の紅葉塒とし/堀佐夜子


▼選者詠/高橋正子
夜空寒むケーキを買える背にありて
千円と取り換う新書時雨たる
ストーブの出されしばかりが炎の清し


■第67回入賞発表(11月1日〜3日)/高橋正子選評


【金賞】
★遠く日の風吹き残る切り干しに/小峠静水
しなやかなリズムに叙情と確かな写生があって、心静かな晩秋の風景が詠まれている。「遠く日の」で一息入れて読む。切り刻んだ切干大根に遠くから日が差して、風も切干の間に残っているのである。

【銀賞】
★暮の秋脱ぎ置く服の膨らめり/碇 英一
脱いだ服の嵩に膨らみを感じた。服は厚手の服だろうし、着ていたぬくもりがまだ残っているのだろう。そんな服を詠んでいて、晩秋のそぞろ寒さの中にも人の暖かさが感じさせてくれる句である。

【銅賞2句】
★林檎かじる時永遠に若し/多田有花
林檎をかじる自分をふと振り返れば、そういう自分は、若いときの自分そのものである。林檎にはそういう若さへと誘う作用がある。

★目覚むれば雨で始まる十一月/祝恵子


【特選5句】

★遠くより金柑の黄の日に照りて/堀佐夜子
次第に寒くなると、金柑の葉の濃い緑と、実の濃い黄色が日に照っているのが、遠くからも目に入るようになる。その対照的な色の強さが、人間にもなにかしら強い心構えをさせてくれる。

★障子貼り新しき色に包まれる/池田多津子
★ビルを呑む雲の勢い冬近し/岩本康子
★田に長く懸大根の白襖/守屋光雅
★霜月の足音かたく駅へ向かう/宮地ゆうこ


【入選23句】

★夕ほのか凛々として菊咲けり/おおにしひろし
★休漁の朝三日月の町眠る/平野あや子
★満ち潮を待つや巻貝秋の磯/岩崎楽典
★外房の波荒くなり冬近し/冬山蕗風
★夜の明けを待たず初雪となりにけり/河ひろこ
★雨やんで銀杏色の陽のさせり/古田けいじ
<タスマニア島にて>
★牡蠣割って少年たちまち皿に盛る/霧野萬地郎
★せせらぎの音にこぼるる龍の玉/戸原琴
★ひつじ田を鋤きて癒しの匂いあり/能作靖雄
★吐く息の白さや今日も生きてあり/安丸てつじ
★秋風や没日の音を聞き漏らす/野田ゆたか
★灯油缶ふたつ買い足し冬支度/池田和枝
★冠雪の富士に白雲湧き止まず/戸原琴
★人影の闇に溶け入る暮の秋/多田有花
★すぐそばに小鳥来ていて沢の音/藤田洋子
★懸崖菊地に香をこぼし日をこぼし/柳原美知子
★旅客機の窓に雪富士連れて飛ぶ/磯部勇吉
★秋灯に父子で握る腕相撲/山野きみ子
★櫨紅葉風にむかいて山揺らす/林緑丘
★蟷螂の鈍き動きや煙る雨/右田俊郎
★歯にしみし水の痛さよ冬近し/相沢野風村
★吾子の絵を見つけほほ笑む文化の日/高橋秀之
★烏瓜いっしんに陽を集めをり/大給圭泉


■第66回入賞発表(10月31日)/高橋正子選評


【金賞】
★初雁の雲に入りたり一列に/相沢野風村(信之添削)
「初雁」という季語が、この句を大きく美しくした。渡る雁を見ていれば音もなく雲の中へと入ってゆく。かがやかに美しいものの、はかなさがある。(高橋正子)

【銀賞】
★大根干す軒より仰ぐ峰白き/能作靖雄(信之添削)

【銅賞】
★桟橋に秋日を連れて船の着く/山野きみ子


【特選5句】

★柿をむく窓のむこうに低き雲/多田有花
低き雲は、雨雲というわけではなく、座っている位置から見える低い雲ということであろう。「柿をむく」に落ち着いた心境がある。

★風とまり素直な落葉となりており/大石和堂
風に舞っていた落葉も風が止むと、木から静かにはなれて落ちる。落葉から見ると、それが無為自然で「素直な落葉」となる。

★滑子とる手に冷たさの残りけり/磯部勇吉
★夜の卓に野菊一輪色深み/柳原美知子
★籾殻のまかれ菜っ葉の一列に/祝恵子


【入選16句】

★漁早し入江に霧の匂いける/宮地ゆうこ
朝早く漁港は霧が多いのですが、霧の匂いとは巧い表現です。潮のたっぷりの匂いでしょうか。鋭い感覚です。(相沢野風村)

★目の前に富士現れて薄の穂/脇美代子
★葱青々と太く長く天に伸び/堀佐夜子
「日本平に宿泊す」 
★雪の富士日本平の窓の中/大給 圭泉
★シリウスの輝き増して冬隣/右田俊郎
★幼子や足を踏ん張りみかん山/高橋秀之
★誰が植えし学校の菊盛りなり/都久俊
★異人館へ続く坂道秋の暮れ/平野あや子
★星流る京に別れし子の方へ/古田けいじ
★穂芒を夕茜に投げ燃やす/おおにしひろし
<オーストラリア春の旅:タスマニア島・ペンギン上陸>
★ペンギンも人も厚着の歩きして/霧野萬地郎
★店先にハロウィン南瓜の飾られて/岩崎楽典
★落葉踏む歩幅老いたる音させて/小峠静水
★栗炊けば縄文の世のつよき味/藤田荘二
★異人館へ続く坂道秋の暮れ/平野あや子
★薄穂に真昼の空の澄み渡る/脇美代子


▼選者詠/高橋正子
座布団に脚を畳みぬ寒さ来て
朝寒の燈にしばらくはもの書きぬ
切り藁の撒かれ刈田のひろびろと