■さら句会/入賞発表J■

第61回(10月24日)〜第65回(10月30日)

■第65回入賞発表(10月30日)/高橋正子選


【金賞】
★ひまわりの枯れ冷さまじく種残す/戸原琴
季語となる言葉が多く、季重なりが問われるが、この句の主題は、「冷さまじく」で、いい季感である。季語「冷まじ」は、寒いというほどでもなく、冷ややかでもない。秋深まる頃のいい季感である。この句の良さは、作者のスタイルがあることで、誰もが真似のできないところ。(高橋信之)

【銀賞】
★灯火親し手のひらに反る新書本/多田有花
ユニークな句だが、作者のいい実感が伝わってきて、リアルである。情景が明らかなのでいい。(高橋信之)

【銅賞2句】
★草々の紅葉してゆき野の起伏/おおにしひろし
★四方澄む菊の花びら開くたび/柳原美知子


【特選5句】

★菊日和平和な香り広がれり/能作靖雄
★山茶花のみずみずしさに透けて空/宮地ゆうこ
★日向ぼこほろほろこぼる金平糖/平野あや子
★銀杏の実寺の裏門開きしまま/祝恵子
★実をつけぬ斑入りの青木時雨けり/福島節子


【入選14句】

★きらめきの彼方は大島秋の海/岩崎楽典
★ざわざわと樹々の音鳴り冬隣/河ひろこ
★せせらぎを隔てて会釈草紅葉/脇美代子
★昼の月透けて青ひと色の空/山野きみ子
★落葉踏み深山の空気に身をひたす/藤田洋子
★庭先に杜鵑草咲き回覧板/堀佐夜子
★高稲架へ山の大きな影寄りて/藤田洋子
★バス停に深まる秋の雲を愛ず/古田けいじ
★秋の炉や宿屋の明けに顔も笑み/津村昭彦
★貝割菜ひとつひとつの魂ありて/相沢野風村
<オーストラリア春の旅:タスマニア島Marakoopa Caveにて>
★羊歯萌ゆる高さ深さの雨林かな/霧野萬地郎
★封筒の中の冬日に息かけて/小峠静水
★早生蜜柑一個十円ばら売りに/磯部勇吉
★行く秋を追いかけてみる野の小径 /右田俊郎


▼選者詠/高橋正子
 小田深山吟行
霧迅し雨恋山の青ければ
渓空を色失いて黄葉飛ぶ
時雨たる沢石水を集めたる


■第64回入賞発表(10月29日)/高橋正子選評


【金賞】
★日向ぼこ人それぞれに日を頒(わか)つ/小峠静水(正子添削)
一人ひとりの日向ぼこに射している暖かい日光。その光は、みんなに分けられて、大きな太陽から届いている。心の隅まで暖められる句。

【銀賞】
★白菜をばっりと割きて陰干しに/能作靖雄
白菜を割けば、ばりっと音がして新鮮そのもの。清冽な句。白菜漬けの用意だろう。並べられた白菜も清らか。

【銅賞】
★秋雨止めば空へ鳥湧く低きより/柳原美知子(信之添削)
冷えびえとした雨が上がって、鳥がつぎつぎ空へ飛び翔ってゆく。「低きより」は、小鳥の力強さである。


【特選5句】

★コスモスの壁へ影して共に揺れ/祝恵子
コスモスの盛り。庭のコスモスの影が壁にできて、その影も実際のコスモスと同じに揺れている。影とコスモスの関係は、不即不離で、当たり前のことだが、思えば不思議なことである。

★秋澄むや海を見据えし学徒の碑/平野あや子
★立ち上がる北斗の輝き冬隣/右田俊郎
★傾きて日はおみなえしの黄に残り/戸原琴
★朝寒や母の部屋より小さき咳/大給圭泉


【入選19句】

★風音も冷たきままに暮れにけり/小峠静水
★残雪や深き樹林を抜け切れば/霧野萬地郎
★菊の香の満ちし花屋の軒を借る/磯部勇吉
★落葉道入りてそばやの薄明かり/大給圭泉
★石段のどんぐり数えて上る子ら/池田多津子
★朝寒や背広の胸のあたりから/古田けいじ
★ポートタワーから眺むるや菊日和/冬山蕗風
★菊活けて義兄の退院待つ日なり/堀佐夜子
★裏側もくぐりて同じ秋の虹/相沢野風村
 木枯し1号吹いて
★木枯しや焼き芋売りの笛聞ゆ/都久俊
★落ちている石榴ルビーを散らしをり/加納淑子
★水澄みて掘割り影を深くせり/山野きみ子
★初雪の名残はなくて笹ひかる/守屋光雅
★電車来るこだまの音に野菊咲く/おおにしひろし
★秋雨や唇に熱きカプチーノ/多田有花
★掘り返す土ひやひやと冬近し/池田和枝
★湯の舟に紅葉と浴びる谷の宿/岩崎楽典
★大楠にきらめく風の天高く/宮地ゆうこ
★草々の光に彩なす秋の昼/岩本康子


▼選者詠/高橋正子
城坂に落ちて夜を経し木の実増ゆ
しいの実を炒りて硬さを歯と合わす
栗の実の栗鼠のごとくに溜まりたり


■第63回入賞発表(10月28日)/高橋正子選評


【金賞】
★造船の湾に響きて冬隣る/平野あや子
船を造る鉄や機械音が、鈍色の湾に響くと、寒ざむとして、耳に目に「冬隣る」感が強まる。「冬隣る」の季語が生きている。

【銀賞】
★枝豆や丹波の土をつけしまま/多田有花
「豆」は秋の季語であるが、「枝豆」は夏の季語である。丹波のふくよかに育った枝豆が、土つきのままである新鮮さを、すっぱりと捉えたところが魅力の句。枝豆らしい素朴な新しさがある。

【銅賞】
★葱の葉を引けば空気のぽんと鳴る/磯部勇吉
葱のおいしい季節になったが、葉を持って引くと、葉がちぎれて中の空気が、勢いよくぽんと音を立てた。冷たい空気に、ぽんという音は楽しい。


【特選6句】

★母と居る休日があり冬支度/岩本康子(信之添削)
久しぶりの休日に、家に居ることができて、衣服を取り出したり、暖房の準備をしたりと冬支度をした。母と居るからこそ感じられる落ち着いた気持ちがある。

★野に遊ぶ子らに草の実ついてくる/池田多津子
★鵯の来て赤き実のある屋上園/山野きみ子
★水底に紅葉の揺れて渓深し/藤田洋子
★箒草の紅葉辺りを明るくす/祝恵子
★どの家も秋草淡き彩ばかり/堀佐夜子


【入選18句】

★それぞれの杖音遍路の秋深し/宮地ゆうこ
★通草の実花店の籠に割れてあり/戸原琴
★深秋や父の形見の古日記/冬山蕗風
★コスモスや野に向いている道の駅/脇美代子
★野ぶどうを潰した子らの指染まる/右田俊郎
★菊花展の枠組出来るお堀端/河ひろこ
★家遥かこの身を透かす白き月/藤田荘二
★茨の実含み子どもの遊びけり/吉田晃(正子添削)
原句の「茨の実」は秋の季語だが、「野遊び」は、春の季語なので注意しておきたい。子どものふっくりとした元気なかわいらしさがいい。
★千畳を染めて飽くなき紅葉かな/大石和堂
<秋田県田沢湖付近初雪にて>
★初雪の路(みち)の温もり残しをり/相沢野風村
★綱引きに勝って孫跳ぶ秋天へ/古田けいじ
★べか舟のへさきに立ちし初の鴨/石井信雄
★雨やんで小庭の鵯のにぎやかに/守屋光雅
★秋雨に茶店の餅や羽黒山/岩崎楽典
★盥うどん美味し時雨を避けて食う/おおにしひろし
★初寒波先陣切りしコハクチョウ/能作靖雄
<オーストラリア春の旅:タスマニア島にて>
★囀りの飛び交う囚徒の橋堅固/霧野萬地郎
★かやぶきの屋根に煙りや照紅葉/大給圭泉


▼選者詠/高橋正子
ふっくらとした手で小さき木の実くれ
しいの実の尖りておりぬさびしかり
木の実降るだれかれ声を響かせば


■第62回入賞発表(10月25日〜27日)/高橋正子選評


【金賞】
★白鳥の湖押し上げて降りにけり/磯部勇吉
白鳥が空から一斉に、湖に羽ばたき降りてくる着水の様子が詠まれている。その一瞬、湖の水が押し上げられたように動く。優美な白鳥と湖の水のダイナミックな動きが新鮮。

【銀賞】
★山茶花の蕊に夕日の残りけり/加納淑子
山茶花の花は、蕊をはっきり見せて開ききる。その山茶花の一花、一花の開いた真中の蕊に夕日がはっきりと差して美しく、さびしさが昇華されている。

【銅賞2句】
★瑠璃色の秋風孕みセーリング/大給圭泉(正子添削)
瑠璃色の海を吹けば、風も瑠璃色。その秋風を大きく帆に孕ませてのセーリング。ひろびろと気持ちが広がる楽しい句。

★柿熟れて日本の色と思いけり/堀佐夜子


【特選5句】

★朝日さす障子のむこう金木犀/林緑丘
白い障子に、金木犀のある庭に、久しぶりにゆっくりした気持ちで、日本の良さを感じている。
緑丘さんは、インターネット俳句センター(水煙)の、当掲示板を開設してすぐにご参加、入会くださり、6年近くにもなるインターネット上での長いお付き合いです。改めて皆さんにご紹介します。北米勤務を経て日本に帰られ、一年ほどになられます。下記アドレスで最初のご投句をご覧ください。(高橋正子)http://www.shikoku.net/bbs/suien/0058.html
私もはじめてですが 林 緑丘 01/18 18:37 (H9年1997)
山に立ち 来し方探る 初霞

★秋の暮れ干潟を汐の浸しくる/右田俊郎
「汐の浸しくる」は、作者と自然とが一体化しているしみじみとした叙景で、それがよい。

★脱穀の音に棚田の暮れ残る/脇美代子
★稲架掛かる束は影もち乾きおり/祝恵子
★石鎚を地平に置いて晩稲刈る/おおにしひろし


【入選29句】

★林檎もぐ脚立眩しく軽々と/相沢野風村
★舞う鳶の乗り換える風秋深し/野田ゆたか
★バー超ゆる長き手脚を秋天へ/宮地ゆうこ
★新松子ことごと塔に届かざる/碇 英一
★大西日花野の果てに消えにけり/おおにしひろし
★秋の海静かに見ており十六羅漢/河ひろこ
★高さもてポプラの芽風牧を吹く/霧野萬地郎
★鈍色の海に陽の差し秋深む/岩本康子
★コスモスの色そのままの押し花絵/池田多津子
★竹垣に風の沿い吹く時鳥草/戸原琴
★街路樹の色づくころとなりにけり/多田有花
★山の影伸び来し里の吊し柿/小原亜子
★秋深し通学児童の服も濃く/日野正人
★せせらぎを掠め飛びあう赤とんぼ/冬山蕗風
★柿むく手母のしぐさを思い出し/林芳福
★角幾つ曲がれど紅葉紅葉かな/池田和枝
★旧道の川の高さに泡立草/柳原美知子
★柔らかき鋼の色もて零余子揺れ/古田けいじ
★山柿を実らせる空の青高し/吉田晃
★一斉にどんぐりの落つ夜の雨/碇英一
★山の湯に蜃気楼かな黄葉山/能作靖雄
★湿る土つきし芋掘りの児の土産/馬場江都
★初嵐礁に白き飛沫かな/下地鉄
★九十九折曲がりて新た山紅葉/岩崎楽典
★利き酒に誘われて行く秋の蔵/福島節子
★牡蠣旨き店を横目に家路かな/安丸てつじ
★街角に夕日冷たく草紅葉/山野きみ子
★山裾に夕日の差して竹の春/石井信雄  
★露ほどく如くに蔓を引き込んで/小峠静水


▼選者詠/高橋正子
しいの実のいまだ青くて石の間に
棟の実あおぎ見る子のまつげ冷ゆ
白粉花山ひやひやと暮れる下


■第61回入賞発表(10月24日)/高橋正子選評

【金賞】
★白菊を活ける長さにすぱと切る/おおにしひろし
「すぱと切る」は、潔く、白菊ゆえに清潔な句となった。一本の菊のすっきりとした姿がよい。

【銀賞】
★大根の重さ白さを沢水へ/守屋光雅

【銅賞】
★ひつじ田に夕日あたりて青深む/石井信雄(正子添削)
夕日の当たるひつじ田に透明感があり、切株から伸びた葉がいっそう濃く目に入る。刈り取られても、また静かに萌えるひつじ田に秋の深まりを感じる。

 オーストラリア海外詠
★南極の春の風らし海青し/霧野萬地郎
南極から吹いてくる風にも春の気配がある。海の色が青く、確かに新しい春がそこに来ているのを感じる。南極からの春の風に心が膨らむ。


【特選5句】

★葉の鳴りて大根ひきの朝仕事/守屋光雅
青々と茂った朝の大根畑で、大根を引く作業に生まれる音。みずみずしく、ひえびえとした葉が触れ合い、擦れて鳴る音。大根引きの生き生きした時である。

★赤レンガ秋の入日を染み込ませる/日野正人
★莢透けて黒枝豆の粒大き/碇英一
★四方から白鳥戻り湖暮るる/磯部勇吉
★秋深しバッタの腹の濃くなりぬ/藤田荘二


【入選15句】

 アフリカ海外詠
★連なりて青き空よりフラミンゴ/多田有花
★両岸のすすきの向きは風まかせ/山野きみ子
★谿紅葉踏み行く里の澄みし空/能作靖雄
★実南天色づくまえの覚束な/加納淑子
★日に照りて絵具そのまま銀杏の黄/都久俊
★高速路壁びっしりの蔦紅葉/岩崎楽典
★投網せる水面に映る鰯雲/右田俊郎
★一日の仕事を終えて秋落暉/岩本康子
★羽ばたきし鳩の向こうに秋の雲/高橋秀之
★虫の声細くて木々はざわめけり/池田多津子
★散り初めし銀杏葉浮かべ運河満つ/古田けいじ
★沼浅く水の匂ひに熟柿落つ/小峠静水
★帰途につく子の背に肩に落葉のり/大給圭泉
★雨粒の光り大輪菊ひらく/祝恵子
★工事中片側通行峪紅葉/堀佐夜子


▼選者詠/高橋正子
月の出を待ちいる柱幾本も
コーヒーを濃く淹れ芒ほどけたり
コスモスの咲ける限りが冷たかり