■さら句会/入賞発表I■

第56回(10月17日)〜第60回(10月23日)

■第60回入賞発表(10月23日)/高橋正子選評


【金賞】
★行く雲に白鳥の声暮れている/守屋光雄(正子添削)
日暮れに鳴き交わす白鳥の声が、空高く響いて北国の遥かへと広がる奥深さがある。行運(ぎょううん)は、下5の「暮れている」に合わないので添削した。

【銀賞】
★閑けさに木の実の落ちる音と知る/小峠静水
この静かな心持ちは、芭蕉的心境であろう。自然に耳を澄ませ、あたらしく「木の実の音」を知る。自然に深く入った心境がいい。

【銅賞】
★稲干さる穂先滴り雨上がる/祝恵子(正子添削)
稲架に架けられた稲の穂先から静かに雨が滴り、ひんやりと雨が上がっている。晩秋の静かで、晴れやかな気持ちが良く出ている。


【特選5句】

★奈良山や古墳を包む鵯の声/碇英一
古墳を包むかのように鵯がしきりに鳴いて、奈良山にはゆっくりとした時がある。作者は、自然体でそれを感じ表現した。その風景は貴重。

★残り咲く萩の紅濃き雨あがり/岩本康子
★鍬の影ながく花野を戻りけり/宮地ゆうこ
★すすき原揺れの向うに日本海/河ひろこ
★凛々と静けさとどめ添水鳴る/青海俊伯


【入選15句】

アフリカ海外詠
★朝もやにキリンの首の高かりし/多田有花
オーストラリア海外詠
★早春の山の端十字の星見つけ/霧野萬地郎
★阿武隈の段々畑蕎麦の花/冬山蕗風
★釣瓶落し光のおもさ顔に受く/宮地ゆうこ
★紺深き今朝の潮路や秋更くる/平野あや子
★朝の日に黄色ふくらむ大輪の菊/柳原美知子
★白鳥の呼び合う声の夕空へ/磯部勇吉
★ポットの湯また沸きだしぬ夜長かな/都久俊
★月冷えてセーター薄し夜半かな/下地鉄
★ホグランプ紅葉を照らし走り去り/河野斎
★鳥渡る街に人力車夫走る/山野きみ子
★洗面所玄関厨杜鵑草/古田けいじ
★白き風車ゆくり廻るよ湖の秋/堀佐夜子
★式部の実落ちし水際のせせらげる/おおにしひろし
★落葉入りふるさとよりの届きもの/大給圭泉


▼選者詠/高橋正子
萩もみじ草と靡きて野の一草
秋草に肩先冷ゆをおぼゆまで
秋草の枯るるは匂いほかほかと


■第59回入賞発表(10月22日)/高橋正子選評


【金賞】
★木の実落ち流れに深き音の立つ/碇英一(信之添削)
木の実が落ちる流れが澄んでいる。木の実が落ちれば、深い音となる。そこに静かで深々としたのもがある。

【銀賞】
★二つ割り津軽の林檎の蜜の芯/右田俊郎
イメージがはっきりした即物的な句であるが、余計を言わないだけに、作者の思いをはっきりと伝えている。ふるさと津軽への賛歌と懐かしさである。

【銅賞】
★五分搗きの温もり残る今年米/青海俊伯


【特選5句】

★川渡り次ぎなる渡船へ秋を歩く/祝恵子(信之添削)
一つ、川を船で渡り、また次の船に乗る。その船着場まで秋の風景を楽しみながら歩く。川の水も、草も秋のただ中に輝いている。

★秋桜揺らぐことなく月に照る/藤田洋子
★晴れた朝ま白に障子張り替える/池田多津子
★泡立草分けてひとすじ径のあり/磯部勇吉
★秋夕日沖より射して海眩し/山野きみ子


【入選19句】

★秋の虹相模湾までまたぎけり/脇美代子
★露けさの野辺にある椅子遊び蔓/平野あや子
★井戸水にナメコ選り分け手に滑る/守屋光雅
★登校生菊の玄関に迎えられ/日野正人
★菊の香へ鰈を吊るし干しにけり/柳原美知子
★キリマンジャロの雪をはるかにキリン立つ/多田有花
★草紅葉車椅子には近過ぎて/堀佐夜子
★庭の菊小さく光る蕾増え/古田けいじ
★沖に日の差して一湾鰯雲/小原亜子
★伸びるだけ伸びて吹かるるつた紅葉/小峠静水
★岩清水集めて流る谷紅葉/能作靖雄
★秋の虹虹脚消えて雲となる/相沢野風村(正子添削)
★篠山の枝豆のような友一人/都久俊
★散り敷きし木犀の花遠回り/おおにしひろし
<オーストラリア春の旅:Tinbinbilla自然保護区にて>
★春浅し穴戻りするはりもぐら/霧野萬地郎
★秋の夜闇ゆるがして救急車/大給圭泉
★高速路まっすぐ空へカンナ燃ゆ/宮地ゆうこ
★道のべの白き匂いや蕎麦の花/冬山蕗風
★雨未明木犀だけに降りかかる/吉田晃


▼選者詠/高橋正子
すすきの穂ほどけしものがみなゆるる
栴檀の黄葉(もみじ)に雲の通いけり
秋風の蝶を荒ばせ音もなし


■第58回入賞発表(10月21日)/高橋正子選評


【金賞】
★小鳥来て声澄みわたる厨にも/柳原美知子
小鳥が来る嬉しさは、誰にもあるが、毎日の厨ごとに、小鳥が来てくれると、天気もいい日なのだろう心がはずむ。その気持ちが「澄み渡る」。

【銀賞】
★雨上がる澄んだ空から銀杏の実/古田けいじ
雨上がりのひんやりした澄んだ空から、銀杏の金の実が落ちる。透明な句。

【銅賞2句】
★山紅葉貫ぬく道のひとつあり/相沢野風村
★藁塚の整然とあり影も添う/池田多津子

【特選5句】

★ビル前に林檎売りいて寡黙なり/祝恵子(正子添削)
ビルの前で、赤い林檎を売る人は、寡黙。林檎のつやつやとした明るさに比べ、林檎売りの寡黙な思いが対照的。

★子を抱けば秋風頭上を通り過ぐ/脇美代子
子は、現実は「孫」かもしれないが、「孫」の呼称は、「父・母・子」が表す語にくらべて、普遍性に欠ける。「子」としたので、この句を誰もが共有することができるようになった。抱く子のぬくみ、秋風の吹く空の高さをよく感じさせてくれる。広々としたところへ出てのこと。

★飛行機の音無き高さ秋深し/堀佐夜子
★陰げる山照る山重ねて山粧う/小峠静水
★秋時雨過ぎて夜明けの星澄める/おおにしひろし


【入選20句】

★丘ひとつ小花敷き詰め春祝う/霧野萬地郎
★竿竹の娘売り声蔦紅葉/福島節子
★抱く児の足ふっくらと秋日ざし/山野きみ子
★さくら散る町を飛び交う白オオム/霧野萬地郎
★石塔や衆生のコスモス盛りなる/碇英一
★コスモス畑見渡すかぎりの明るさに/宮地ゆうこ
★月の出を山並みに置き仕事終える/日野正人
★朝の日を受け那須岳の初紅葉/冬山蕗風
<キリマンジャロ>
★頂の振り向くたびに遠くなり/多田有花
★夕風にすすき散らされさざめけり/右田俊郎(正子添削)
(長崎県平戸島を訪ねて)
★南蛮の香り残れる島の秋/岩本康子
★山茶花や驟雨にけむる稲荷堂/加納淑子
★午睡(うまい)さむ児に満つ笑顔木の実独楽/平野あや子
★子供の絵筋で表す秋の風/都久俊
★雨樋の落葉の堰に滴れる/磯部勇吉
★現より夢に入り来し秋の蚊や/石井信雄
★山道の取りて届かぬ通草かな/津村昭彦
★風ぐせのつきし白萩寄りあいて/大給圭泉
★秋風が自転車の声を飛ばしおり/河ひろこ
★日の落ちしあとの縁側うすら寒/金子孝道
No.1509 2002年10月22日 (火) 08時21分

▼選者詠/高橋正子
虫の音の高まり暮れる木のマッス
秋夜風篁煽りきりもなし
林檎手に送られきしがほのぼのと


■第57回入賞発表(10月18日〜20日)/高橋正子選評


【金賞】
★稲架解かれ束ねる竹の軽く鳴る/脇美代子
稲架が解かれていく様子を丁寧に見て、稲架に使われていた竹が束ねられ、軽く触れ合う音を聞き留めた。「軽く鳴る」に作者の素直な思いがあってよい。

【銀賞】
★秋の雨水平線より晴れてきし/岩本康子
秋雨がこのように詠まれると明るい。遠くはるかに心をやり、そこに晴れてゆく日の光りを感じた。色彩と光りとが醸すニュアンスがいい。

【銅賞2句】
★秋の夜の耳に近づく風の音/相沢野風村
★占いに五指を開いて秋の暮れ/河ひろこ


【特選5句】

★野葡萄のそれぞれに色深めけり/磯部勇吉
野葡萄の色づき具合がそれぞれに違う。少し日向に熟れるもの、日蔭のもの。山にあればこその自然の生んだ色がいい。静かな心境がしっかりと詠まれた。

キリマンジャロ海外詠
★サングラス空と氷河を映しけり/多田有花
一緒に登った仲間のサングラスに映る空と氷河。雄大な景色の一部が映っている。晴れ晴れと清々しい気持ちを、サングラスをかける人との繋がりで表した。

★雨止んで落葉色もつ石畳/柳原美知子
★秋雨に濡れて壁画の魚飛ぶ/祝恵子
★峡谷を進めば狭き空高し/池田多津子


【入選29句】

オーストラリア海外詠
★機窓より春暁に見る地球の弧/霧野萬地郎
★鰯雲街残照の中にあり/大給圭泉
★視野全て月に濡れたる蒼さかな/小峠静水
★川澄めり堰落つ水の泡連れて/澤井渥
★月残し飛機次々と離陸せり/戸原琴
★雲の下雲が流れる野分けあと/大給圭泉
★秋風に突き放されてしじみ蝶/山野きみ子
★萩白し水は碧に重くなり/藤田荘二
★鶺鴒鳴く小さき朧の日の空に/碇英一
★街の灯を優しく包む後の月/下地鉄
★刈田には藁焼く煙日暮れまで/右田俊郎
★減反の峡にコスモス満ち満ちて/太田淳子
★星月夜漁り火強く瞬きぬ/加納淑子
★日矢射して石鎚遠き芒原/おおにしひろし
★夕日射す竿一本の唐辛子/岩崎楽典
★秋晴や苔青々と八一歌碑/野田ゆたか
★萩散りて池深きより静まりぬ/藤田荘二
★白鳥の一群渡るラグビー場/守屋光雅
<ゴルフ場にて>
★球それて紅葉始めし木のほうへ/古田けいじ
★朝寒や喉に絡みし粉薬/池田和枝
★稗の穂の刈り捨てられし夕間暮れ/吉田晃
★錦秋の能勢路を終の棲家とす/安丸てつじ
★春日野や瀟瑟のなか角を切る/大石和堂
★晩稲刈る棚田吹き舞う風の声/能作靖雄
★大漁旗かかげし浜の秋祭り/平野あや子
★正面に落ちゆく夕陽からすうり/宮地ゆうこ
★葉を落とし青空覗く熟柿かな/冬山蕗風
★運動会ビデオと並び吾子走る/高橋秀之
★大鳥居潜りてよりの夜店の灯/堀佐夜子


▼選者詠/高橋正子
 マイセン展
マイセンの黄薔薇や秋を深めたる
日本語の山・河美しく秋深き
石塔に葉を深ぶかと花コスモス


■第56回入賞発表(10月17日)/高橋正子選評


【金賞】
★穂薄の向こう水平線までの海/山野きみ子
若々しく、しかも安定した句。穂薄も秋の海も、光りに満ちている。

【銀賞】
★草の香に杭うちて立つ祭の灯/祝恵子(正子添削)
草のあるところに杭を打ち、祭りの灯を灯す用意をする。祭りを迎える嬉しい気持ちが、静かでほのぼのとしている。

【銅賞2句】
★噴水の勢い白し秋の空/守屋光雅
澄んだ秋空に上がる噴水を真正面から詠んで、明快である。「勢い白し」に、水の力が十分に詠まれている。

★今日新た風をくぐりて小鳥来る/藤田洋子


【特選5句】

★高々と竹馬揃う運動会/古田けいじ
さわやかに晴れた空の下での運動会。子どもたちが上手く竹馬を乗りこなして、勢ぞろいした。父兄席から感嘆の声が上がるときでもある。竹馬がさっさっと土を擦る音まで聞こえてきそう。

★焼き椎茸かおりの中で裏返す/宮地ゆうこ
★山紅葉影移り去り鮮やかに/相沢野風村
★真四角の刈田に風の急ぎ行く/青海俊伯
★小鳥来る肩のあたりの気配ふと/小峠静水


【入選19句】

★鵙烈し授業開始の静寂に/吉田晃
★古代米両手に抱えて稲木へと/池田多津子
★秋野菜朝日に輝く小さき畑/岩本康子
★秋風にシャツ膨らませ坂上る/馬場江都
★なお高く鳴いて夕鵙山へ入る/藤田洋子
★空蒼くコスモスそよぐ傾斜面/能作靖雄
★空に浮くものみな光り秋高し/磯部勇吉
★遠き帆の沈み行くなり秋の果て/右田俊郎
★それぞれの木の香の違う庭手入れ/澤井渥
★玄関の大壷野菊どっと活け/おおにしひろし
★阿武隈川のほとりに淡く蕎麦の花/冬山蕗風
★あの山もこの集落も秋高し/加納淑子
★月残し飛機次々と離陸せり/戸原琴
★鳥の声しきり金木犀の香を揺らし/柳原美知子
★海風の運ぶ潮の香秋深し/高橋秀之
★サクと切り白き一片林檎売り/脇美代子
★群れぬけし牧場の山羊も霧の中/平野あや子
★鉋屑匂う団地のカンナの黄/堀佐夜子(信之添削)
★校庭にチャイムの響き秋の暮れ/大給圭泉

▼選者詠/高橋正子
枝豆を脇に抱えて青き夜
新聞にくるまれ枝豆玄関に
玄関灯きらめき点きぬ夜が深し