第1回〜10回/ 第11回〜第20回/ 第21回〜第30回/ 第31回〜第40回/ 第41回〜第50回/ 第51回〜第60回/ 第61回〜第70回/ 第71回〜第80回/ 第81回〜第90回/ 第91回〜第100回/ 第101回〜第110回/ 第111回〜第126回/ 第127回〜第140回/ 第141回〜第160回/ 第161回〜第170回/ 第171回〜第180回/ 第181回〜第190回/ 第191回〜第200回/ 第201回〜第210回/ 第211回〜第220回/ 第221回〜第230回/ 第231回〜第240回/ 第241回〜第260回/ 第261回〜第280回/ 第281回〜第290回/ 第291回〜第300回/


デイリー句会/第291回〜第300回

 

■第300回句会(7月19日)/選者高橋信之

 

【最優秀/3句】

★石に置く夏の選挙の拡声器/小峠静水

しらしらと灼けた石に置かれたスピーカーも、忽ち石もろともに、灼ける。選挙運動の中の、見過ごされがちな一光景。(評:高橋正子)

 

★日盛りの音立て土が水を吸う/藤田洋子

音を立てて水を吸うまでに乾いた土は、凄ましい。炎熱に聞く土の声が生々しく、人間の生を意識させてくれる。(評:高橋正子)

 

★夏祭り太鼓の少年背伸びして/脇美代子

夏祭りの太鼓は、高めに置かれているのだろう。少年の腕が伸びて力強く打つ。ういういしく見える少年に、祭を引き受ける強い意志が読み取れ、未来を担う少年のすがすがしさとなっている。(評:高橋正子)

 

【優秀T/12句】

★白樺の幹の傾き夏鶯/八木孝子

高原の白樺の林にも、鶯が鳴いて、避暑地のような、すがすがしさがある。(評:高橋正子)

 

★水打ちて仏間に風の流れけり/石井信雄

水が打たれ、涼しくなった庭から仏間を通る風に、流れゆく長い時が感られる。(評:高橋正子)

 

★夕立ちが駆け抜けたあと山が近い/安増惠子

溌剌とした句。夕立に洗われた、鮮やかで、みずみずしい山の色が印象的。(評:高橋正子)

一雨のあとの涼しさが「山が近い」で広がってくる。(評:野田ゆたか)

 

★陽の射して無袋リンゴの青々と/守屋光雅

十分に日光を受けて育っている林檎の青い色が、明るくて健康的。林檎への慈しみがやさしい。(評:高橋正子)

無袋の実で袋の実の成長を知る。林檎の成長を見るのが愉しみ。(評:野田ゆたか)

 

★遺跡掘る麦藁帽子土に触れ/目見田郁代

暑い盛りに地面を舐めるように作業している様子が活写されています。(評:伊嶋高男)

麦わら帽子が地面に触れる位、慎重に遺跡を掘っている。炎天下、新しい発見を求め て進める発掘する人達が見えます。発掘作業は学生時代に憧れていました。(評:霧野萬地郎)

 

★西日浴び東京駅舎煉瓦燃ゆ/霧野萬地郎

「東京駅舎煉瓦燃ゆ」に脱帽です。詠み手の精神の崇高さが伝わって、読む側は思わず姿勢を正します。第300回を飾るに相応しい句だと思いました。(評:右田俊郎)

 

★長刀鉾夕日の空へ反る高さ/古田けいじ

野田ゆたかさんの祇園祭の説明を読ましていただき、情景が良く見えてきました。(評:磯部勇吉)

 

★つり橋や足下に遠く夏渓流/多田有花

涼しさが伝わります。高いつり橋遠く山々を見てその空間を抜ける風を感じました。(評:脇美代子)

マウント・レーニアの連作を楽しませていただきました。はるか遠くからその雄姿を眺めたことはあるのですが、山に分け入ったことはありません。渓流を見下ろす吊橋の足のすくむような絶景を、地元、黒部峡谷の鐘釣の渓流にダブらせて想像しています。(評:八木孝子)

 

★遠き日の母の甘酒懐かしき/堀佐夜子

私も昔母の実家へ連れられて行った時の祖母が汲んでくれた冷たい甘酒の味が忘れられません。(評:磯部勇吉)

 

★短夜や漁火のごと都会の灯/伊嶋高男

これも第300回を飾るに相応しい句です。都会の灯を漁り火と見た男のロマンに共感。(評:右田俊郎)

 

★靴音も声も持ち去る夏休み/日野正人

変声期の声,先生からは将来の進路も考えよと言われ大きな宿題のある夏休みである。(評:守屋光雅)

 

★百日紅ゆりかご窓に見えており/戸原琴

新しい生命の健やかな成長が伺えます。百日紅も光も風も、窓に優しいことでしょう。 (評:相原弘子)

 

【優秀U/11句】

★路地入るや水鉄砲の的にされ/音羽和俊

 

★なた鉾の先導騎馬の巡査かな/野田ゆたか

 

★藻の花の揺らぎの上の木々騒ぐ/碇 英一

 

★抱えきれぬ縞の西瓜を肩に載せ/吉田 晃

 

★長刀鉾夕日の空へ反る高さ/古田けいじ

 

★パラソルの影に抱かる幼き子/右田俊郎

 

★手庇に本土を見遣る雲の峰/平野あや子

 

★空蝉のかろく朽葉と掃かれけり/山野きみ子

 

★なによりも聞こえるかなたからの蝉音/相原弘子

 

★ほうたるを見にゆく径の闇迫る/磯部勇吉

 

★傾きて鬼灯だいだい色のつく/祝恵子

 

▼選者詠/高橋信之

蝉が鳴くせせらぐように海風に

高階の海向く窓の涼しい風

一本のポプラの大き揺れ涼し

 

■第299回句会(7月18日)/選者高橋信之

 

【最優秀3句】

★闇空の一角固し夏の富士/伊嶋高男

遠く闇を眺めて、黒い富士山の形に気づいたのであろう。そういった富士は、「一角固し」として、闇の中に平面的な黒が認識された。夏なればこその独特の黒なのであろう。(評:高橋正子)

 

★三輪車円を描いて夕焼ける/八木孝子

子どもの世界が、きりもなく続く感じがする。夕焼けてまだ明るい幼子の世界は、無垢。(評:高橋正子)

 

★明日からは夏休みだぞオーイ雲/岩本康子

「〜だぞ」と「オーイ雲」に康子さんの「バンザーイ」という開放感溢れる声が聞こえてきそうないきいきした句ですね。「オーイ雲、おまえどこまで行くんだい?」(評:八木孝子)

生徒ではなく、先生が夏雲に向って「オーイ」と呼び掛けているところに、作者の開放感が素直に詠われていると思います。お疲れ様でした。(評:伊嶋高男)

 

【優秀12句】

★朝涼や目覚めの鳥のよく語る/碇 英一

「目覚めの鳥のよく語る」は、日常だが、そこを捉えた言葉の表現には、作者独自の世界がある。作者の姿勢がいい。(評:高橋信之)

 

★散水車の後いく足取り軽やかに/戸原琴

愉快な作者である。散水車は、正確には、撒水車であろう。(評:高橋信之)

 

★立葵天辺に咲き雨上がる/磯部勇吉

句の姿がしっかりしている。作者の生活が確かなのである。(評:高橋信之)

 

★朝顔の鉢を抱えて下校せり/多田有花

育てることの嬉しさが伝わってくる。「抱えて」に実感がある。(評:高橋信之)

 

★子らの声高く弾んで夕立晴/八木孝子

「夕立晴」れて、「子ら」が喜び、作者が喜ぶ。そして、読み手も嬉しいのである。(評:高橋信之)

 

★蝉時雨窓打ちぎぎと鳴くもあり/矢野文彦

蝉は、鳴くことに専心しているとばかり思っていると、なかには、窓に向かって来て、打ち当たって、「ぎぎと」失態に声をあげるものもいる。同情したくなる。(評:高橋正子)

 

★海峡の霧笛呼び合ふ音重し/平野あや子

霧が深いのであろう。空気が湿って重い。安全を確かめるために呼び合う船の汽笛も、こもって遠く届かない。船や海に寄せる思いが深い。(評:高橋正子)

 

★夏の夕山黒々と襲い来る/音羽和俊

暮れてしまうと、山は急に、黒く大きくなる。昔話を聞く子ども心にも似た深い郷愁がある。(評:高橋正子)

 

★空蝉の琥珀の色や掌に軽く/安増惠子

掌に載せた空蝉は、ちょっと掲げて日の光にでも当たると、琥珀色といってよい色になる。「掌に軽く」には、「空蝉」らしいところが出ている。(評:高橋正子)

 

★朝涼し産みたて卵届けゆき/相原弘子

 

(ドイツにて)

★ビアホール走る給仕の太き腕/霧野萬地郎

 

★鉾が立つあたりの空は雲切れる/古田けいじ

 

▼選者詠/高橋信之

かっと夏の朝日が窓の全面に

夏曉けてゆく刻を大事に鐘を撞く

朝蝉のポプラの風に甘く鳴く

 

■第298回句会(7月17日)/選者高橋信之

 

【最優秀3句】

★夏の夜明の芋の葉の露透明に/吉田晃(添削)

夏の朝のすがすがしく、冷ややかな空気が伝わってきます。(評:高橋正子)

原句は、<芋の葉の露透明の夜明けかな>で、「芋」と「露」が秋の季語。(評:高橋信之)

 

★暁けて来し窓に蜩なだれ込む/磯部勇吉

暁けてくる窓を開ければ、蜩の声が窓から、静かに押し入るように聞えてくる。蜩の声が、朝の哀調を帯びてうつくしい。(評:高橋正子)

「蜩」は秋の季語。(評:高橋信之)

 

★もろこしの焼ける匂いを大皿に/堀佐夜子

もろこしの香ばしい匂いが、先ずは印象にある。焼きたてのとうもろこしを、大勢が集まって賑やかに食べようというところであろう。明るさが健康的。(評:高橋正子)

あの<焼ける匂い>を焦点を当て、もろこしの美味さが十分に伝わりました。(評:霧野萬地郎)

とうもろこしの香ばしい香りが漂ってきます。しょうゆの匂いも。佐夜子さんは「おいしさ」を詠むのがうまいですね。多田有花

「もろこし」は秋の季語。(評:高橋信之)

 

※季語のないもの、当季「夏」の季語でないもの等、季語の問題のある句が多い。選者泣かせの句である。インターネットは、俳句発表の場、交流の場としては、勝れたものがあるが、俳句を学び、また教えるには、多くの問題がある。季語の問題は、中でも難しい。学ぶにしても、教えるにしても、お互いの努力精進を要する。安易に考えていただきたくない。歳時記を常に手元に置くこと、当季でない句は、発表の季節を待っていただきたい。秋の句は、秋の季節に発表していただきたい。(評:高橋信之)

 

【優秀14句】

★長刀鉾大空ぐいっと押し上げる/安田明子

京都の祇園祭の臨場感のある句。私のふるさとには、京都の祇園祭の元になったといわれる日本三大祇園祭の一つがあります。子どもの頃は、「ギヨンサン」と呼んでいました。(評:高橋正子)

祇園祭の山鉾巡業の先頭を行く長刀鉾。その雄姿を思い起こします。(評:霧野萬地郎)

「鉾」は祭の鉾に限定し、夏の季語とした。歳時記によっては違いがある。(評:高橋信之)

 

★パパイヤの英紙に包まれ熟れ匂う/戸原琴

洒落た感覚が、海のように明るい。(評:高橋正子)

異国からの贈り物は本物の香りです。送り主の気持ちも伝わってきます。(評:守屋光雅)

はるばる異国から届くパパイヤの辺りに漂う甘い香りが

こちらにまで届くようです。(評:藤田洋子)

季語はないが季感のある句。(評:高橋信之)

 

 <レーニア山バックパッキング行>

★氷河より昇る夏霧絶え間なし/多田有花

立ち上る夏霧に、神秘的な雄大さを感じる。(評:高橋正子)

 

★席ゆずる涼しき瞳緑映ゆ/安丸てつじ

純真な青年の面映そうな瞳は、涼しいというのに相応しい。それを見届ける作者の眼差しにも、人間的な涼しさと深さがある。(評:高橋正子)

 

★冷房やモニター光る検査室/林 暁兵

検査室の現実が、静かに詠まれた緊張感のある句。(評:高橋正子)

 

★梅雨雲をちょっぴり透けて青い空/八木孝子

まことの青空と言いたい。梅雨雲の間の青空である。(評:高橋正子)

雲の裏に本当に青い空が少し此方の空も覗いておりました。青色の綺麗さに天候不順がつづく日々ちょびりの明るさ。嬉しいです。(評:目見田郁代)

 

★包丁のひとつを選び西瓜切る/相原弘子

大きな西瓜を切るときは、確かにこのような動作をする。広い刃の、昔ながらの錆びかかった菜切り包丁を選んでしまったのかもしれない。西瓜は、ざっくりと切るべし。(評:高橋正子)

西瓜を切る別注の包丁で昼寝の終わった頃井戸に冷えた西瓜がある。曳きあげる役は昔のぼくでした。幼い良き日今いずこ。いい句ありがとう。弘子さま。(評:小峠静水)

「西瓜」は秋の季語。(評:高橋信之)

 

★自転車の父を見送る油照り/太田淳子

父と娘とのあいだに交わされる、お互いの慈しみと優しさがいい。(評:高橋正子)

 

★見えを切る木偶の頭(かしら)や雷おこる/平野あや子

雷がおこったことで、見栄を切った浄瑠璃人形の頭に、ユーモアとペーソスが生まれた。(評:高橋正子)

淡路島は人形浄瑠璃が盛んな土地だと聞いたことがありますが、これは野外での場景ですか。(評:伊嶋高男)

 

★烏賊干して潮風涼し吹きぬける/安増惠子(添削)

烏賊干の白さが、潮風にいっそうの涼しさを生んでいる。(評:高橋正子)

吹き抜ける潮風の清々しい夏を呼ぶ海辺の風景ですね。藤田洋子

青空の下、浜辺にずらっと並んだ烏賊の列に吹いてくる風。夏らしい涼しさにあふれています。 (評:多田有花)

 

★合歓の花鈴鹿の坂は雨にぬれ/古田けいじ

鈴鹿の坂に降る雨と、合歓の花の出会いから生まれる気分は、日本の抒情といってよい。やさしく、すこし湿った哀調がある。(評:高橋正子)

 

★鬼百合は蕾を染めて咲くを待つ/右田俊郎

鬼百合の、朱色は特徴的。戦後の日本の夏を感じる。(評:高橋正子)

鬼百合のあの朱。遠くから見ても圧されそうです。蕾のころに、もうその朱が調っているのでしょう。(評:相原弘子) 

 

★一山にかなかな鳴いて小屋閉じぬ/守屋光雅

今日の仕事を終えて、用事の済んだ小屋の戸を閉める。かなかなが

鳴く山が手に取るように身近に感じられる。(評:高橋正子)

「かなかな」は秋の季語。(評:高橋信之)

 

★梅雨明けの空をぐんぐんジェット雲/音羽和俊

「ぐんぐん」は、若々しい。スカッとした夏本番が、期待できそう。(評:高橋正子)

 

▼選者詠/高橋信之

遠雷の音を残して遠ざかる

風雨雷玻璃一枚の内にいる

蝉音せり上がりゆき大空があり

 

■第297回句会/選者高橋信之(7月16日)

 

【最優秀3句】

★夕方の虹みな高き明日は晴れ/小峠静水

高々とかかる虹に、空の広さ、高さがあり、明日の晴れを約束する。(評:高橋正子)

 

★透明な光を跳ねる茅の葉/右田俊郎

茅の葉の繊細のそよぎが、朝早い景色を想像させる。朝の涼しさのような句。(評:高橋正子)

 

★昂ぶりをなだめて雌滝ゆるやかに/磯部勇吉

涼味満点ですね。雄滝を感じさせる句作りが巧みです。(評:伊嶋高男) 

 

【優秀10句】

★峰雲や海峡に向く砲台跡/平野あや子

取り合わせがいい。上五の「峰雲」、中七の「海峡」、下五の「砲台跡」、この三つのイメージがうまく響きあって一つの絵を作り上げた。(評:高橋信之)

 

★夏芝の砂地に張れる根の強し/碇 英一

日常のどこにでも見られる状景だが、作者の強い思いがある。作者が隠れていない。(評:高橋信之)

 

★パラソルの黒差す人の足長し/堀佐夜子

しゃれた風景をさらりと表現した。涼しい景色の絵にした。(評:高橋信之)

 

★ひやしあめ坂の上に店があり/大石和堂

添削の余地があると思うが、敢えて破調のままにした。よりリアルだからである。(評:高橋信之)

 

★夏空へ子等の声抜け地引網/阪本登美子

小さな手が、海の幸の重たさを力一杯引いている。網が近付くごとに、その歓声が大きく高くなっていった様子が目に浮かびます。こういった実体験がいつまでもできることを願います。(評:日野正人)

 

★点滴の夕焼け色に滴り落つ/戸原琴

この「夕焼け色」は、冷静なそして鋭利なまでの作者の観察。ご家族でしょうか、ご快復を祈念します。(評:霧野萬地郎)

 

★夏葱に肥料撒く人皺深し/守屋光雅

 

★海空の色積み上げて雲の峰/日野正人

 

★濁りなきカンナの朱の揺らぎ立つ/脇美代子

 

★吊るし旗「ラムネ」斜めに書かれいて/林 暁兵

 

▼選者詠/高橋信之

生きている今日の証しに蝉の鳴く

炎天の青一枚を眼に残す

炎天へ出てゆくことのなき一と日

 

 ■第296回句会(7月1315)/選者高橋信之

 

【最優秀3句】

★羅の僧地下鉄の客となる/林 暁兵

僧衣も、夏は羅となって、下に着ている白い衣が透けて涼しそうである。地下鉄の中に、その人が一人いると、あたりが涼やかな雰囲気になる。(評:高橋正子)

 

★停泊の巨船の発ちて梅雨明ける/平野あや子

沖に停泊して、動かなかった船も、梅雨明けの明るさを待つかのように出発していった。沖も空も晴れて、暑さなかにも涼しい気持ちがある。(評:高橋正子)

 

★大淀川瀬音まじりて草涼し/堀佐夜子

淀川の水辺までの葦の茂りや、土手草のそよぎが思い出される。豊かな水の瀬音と、川風にしばらく浸っていたい思いである。(評:高橋正子)

 

【優秀25句】

★川涼し横一文字の橋の影/伊嶋高男

「横一文字」がすっきりしている。そのことが季語「涼し」に実感を与えた。(評:高橋信之)

 

★祇園太鼓響ける夏を闊歩せり/岩本康子

「祇園太鼓」と「闊歩」する私に絞り込まれた。いい夏である。(評:高橋信之)

 

★花はちす生駒の山に晴るる雲/野田ゆたか

基本の写生が出来ているので、広々とした風景が「花はちす」を生かした。(評:高橋信之)

 

★点々と水面叩きてとんぼ去る/大石和堂

少年時代を呼び起こさせてくれて嬉しい。わたしの好きな句。(評:高橋信之)

 

★青田風みな吸い込まれ木の校舎/日野正人(添削)

久万中学校,子供が育つには最高の環境です。校舎を案内していただきました。ハングルを勉強していたのが印象的でした。(評:守屋光雅)

のどかで青田風の流れが見えてきます。暑さの日々ですが何だか元気をもらえた気持です。(評:目見田郁代)

 

★休日の雲無き空へ梅を干す/古田けいじ

干してある梅の一粒一粒へ、快晴の真昼が空気を分けてきます。眩しい休日です。(評:相原弘子)

 

★涼しさの一つ灯に寄るまどゐかな/小峠静水

涼を求めて家族の団欒の風景を思い描きます。(評:八木孝子)

 

★夕日ごと真っ赤なトマト籠に入れ/脇美代子

それだけでも真っ赤なトマトですが、太陽の色や香りまでも籠に入れて持ち帰る、さぞかし美味しいことでしょう。(評:日野正人)

夕陽の中でのトマトの取り入れ。太陽のぬくもりを残したトマト。「夕陽ごと」に引かれます。(評:古田けいじ)

完熟トマトの収穫が、夕日の中に見事に描かれています。生活の充実を感じます。(評:霧野萬地郎)

夕日と一緒に摘んで籠に入れるトマト、収穫の喜びがいっぱい。一日の終わりの充実感が溢れています。(評:八木孝子)

夕暮れの光景が見えてきます。夕日の中でもがれるトマトの感触がわかります。(評:相原弘子)

 

★湿原の木道消ゆる青き葦/石井信雄

どこまでも続く木道が見えなくなるほど広大な湿原。みどりの涼風が吹きぬける気持のいい俳句ですね。うらやましいの一言です。(評:伊嶋高男)

 

★日の盛り光りと影の彫りを濃く/山野きみ子

今日は街路樹の道を何回か歩きましたが、影と日向との対比は際立っていました。<彫りを濃く>は鮮やかな言い回しですね。実際に、影は地面をえぐったようでした。(評:伊嶋高男)

 

★ブナ一木影重くせり朝の雷/音羽和俊

ブナと雷の取り合せで、梅雨明け真近の朝を的確に描写しています。「一木影重くせり」が素晴らしいです。(評:安丸てつじ)

 

★夏木立速球受ける音のあり/林 暁兵

バシっというミットに収まるボールの音が夏の木立から聞こえてきた。涼しさと暑さが攻めぎあっている場所での風景でしょうか。(評:古田けいじ)

キャッチボールのミットに受けた音が聞こえるようです。(評:脇美代子)

今年の暑さは格別、その中で元気に野球している様子に清々しさを感じますね。(評:平野あや子)

 

★訃報来て大夕焼けの暮れるかな/右田俊郎

知人の訃報が届く。夕焼けは消え行くものを連想しさびしいものだが、訃報が来た日の大夕焼けは更にさびしい。(評:古田けいじ)

 

 <タンザニア、ンゴロンゴロにて>

★雲の峰草原を食む犀親子/霧野萬地郎

〈草原を食む〉がスケールの広大さである。遮るものは遠く雲の峰のみ。タンザニアの草原の風がある。動物園の犀は可愛そうである。光太郎の詩を思い出した。(評:守屋光雅)

雄大な草原の中にゆったりと草を食べている犀の親子、額の中の絵をみるようです。(評:平野あや子)

 

 <小倉太鼓祇園>

★ジャンガラと太鼓が遠く夏祭り/安増惠子

ジャンガラという太鼓の音が好い。遠い記憶の中に父のみやげであったろうか,同名のお菓子を食べた記憶が残っている。(評:守屋光雅)

よかよか特派員によれば今日は「流れがき」、そして明日が一番太鼓とともに「追い山」ですね。ふるさとの祭りは遠くにいても想い出すと胸中に熱いものが込み上げてきます。私の場合は青森のねぶたで、ラッセラーがキーワードです。ラッセラーと跳人の汗とぶねぶたかなです。(評:右田俊郎)

 

★青田風トンボ進んで流されて/吉田 晃

 

★雪渓を落ちる流れの音高し/多田有花

 

★雷鳴の四方へ轟き田の荒れる/藤田洋子

 

★寺境内近道すれば涼しくて/守屋光雅

 

★蜩の遠くに鳴きて近く鳴く/磯部勇吉

 

★日焼け肌白きブラウスなお白し/三浦絹子

 

★山清水その冷たさに喉うるおう/祝恵子(添削)

 

★山麓のビル立つ辺り虹の脚/安丸てつじ

 

★娘らはそれぞれ京へ宵々山/福田由平

 

★寄り合いへ連れ立っていく白団扇/八木孝子

 

▼選者詠/高橋信之

夏の夜明けにまず空の色現れる

池土手の夏草空を平らに切る

サングラス今は白木の卓に置かれ

 

 ■第295回句会/選者高橋信之(7月12日)

 

【最優秀3句】

★炎昼の空家にかかる南京錠/平野あや子

季語をしっかり捉えている。「炎昼」をしっかり捉え、句が深いのである。(評:高橋信之)

 

★向日葵の近づくほどに丈高し/藤田洋子

ほんとうにそうです。すぐそこへきて、その高さ、あの大きさ、この炎熱の中、なんと強い、明るいと見上げます。(評:相原弘子)

 

★寝入る子や天草干し場の乳母車/霧野萬地郎

浜の主婦が子供を乳母車に寝かせつけて忙しそうに天草を干している情景から潮の匂いがして来そうです。(評:磯部勇吉)

浜の匂い、潮風のかおりが凝縮した俳句ですね。天草には特別の思いがあります。(評:伊嶋高男)

 

【優秀11句】

★緑陰のベンチ大きく人を容れ/山野きみ子

安らぎがある。安らぎを与えてくれる嬉しい句。(評:高橋信之)

 

★梅雨明けのほぼ中天に月残る/林 暁兵

いい景色を言葉で捉えたのである。自然に包まれていると、世間の煩わしさから解放される。(評:高橋信之)

 

★シャワー音澄みて鼻歌朝涼し/吉田 晃

朝のシャワーを気持ちよく浴びているところですね。「音澄み」と「鼻歌」が、涼しさをよく表しています。(評:高橋正子)

 

★漁火や落ちて連なる天の川/磯部勇吉

天の川の連なるところに、時間の深さがあります。漁火も砂のような星もそれぞれに瞬いて、静かで大きな景色ですね。(評:高橋正子)

景の大きな素晴らしい句だと思います。新潟で見る天の川は、芭蕉をはじめ多くの人の共感を呼ぶのですね。漁り火がしみじみとした感慨を与えてくれます。この時期は何漁ですか。(評:右田俊郎)

 

★灯台のレンズ磨きや浜万年青/古田けいじ

浜万年青は、浜木綿とも。灯台のレンズが磨かれ、太陽光を反射している。浜万年青も白い花を輝かしく咲かせ、灯台守に夏の賛辞をおくっている。(評:高橋正子)

灯台のほとんどが無人化されてるとのこと,これだけは人がやらなければならぬ。灯台の白・レンズ磨きの布の白・浜万年青の白三拍子揃って海風が涼しい。(評:守屋光雅)

 

★月明かり差す風鈴のリンと鳴る/脇美代子

「風鈴のリンと鳴る」は、日常的な表現だが、しんと胸に染みいる音である。月明かりに心も音も澄んでいる。(評:高橋正子)

 

★炎昼や怒鳴る親追う子のあわれ/伊嶋高男

怒鳴られれば、ますます親の後を追ってゆく子どもは、あわれ。包み隠さぬ真昼間の光景だから、なおさらのこと。(評:高橋正子)

 

★静けさや沼眠らせる浅沙の黄/音羽和俊

浅沙の黄色の花が、静かな沼を引き立て、静かさを生かしている。「浅沙/あさざ」は、リンドウ科の多年生の水草で、六月から八月ごろに鮮黄色の花を付ける。「浅沙の花」が夏の季語。(評:高橋正子)

 

★噴水のしぶきを浴びて鉄の鶴/守屋光雅

鶴は噴水の蛇口になているのでしょうか。鉄の鶴に水飛沫が乾く間なく懸っているのが夏らしいです。(評:碇 英一)

鉄の鶴が意表をついて、明るい日差しと涼しそうな噴水のコントラストが伝わります。(評:林 暁兵)

 

★黒を着る乙女らの夏艶めきぬ/右田俊郎

乙女らは黒が好き、黒をお洒落に、華やかに着こなす若さ、夏なればこそ一段と艶めく。(評:八木孝子)

 

★ゆっくりと馬の尾ゆれて夏盛り/安増惠子  

体と独立した尾の動きは面白いく、「ゆっくり」が今の時候に合っている様に感じました。(評:碇 英一)

 

▼選者詠/高橋信之

句が書かれ石しろしろと夏の灯に

暑き日の静かに暮れる厨の音

団欒に西瓜の赤くやさしさを

 

■第294回句会/選者高橋信之(7月11日)

 

【最優秀3句】

★飛魚の海の蒼さが皿に余る/守屋光雅

洒脱な俳句で、武者小路実篤の絵の様ですね。好きな句です。(評:霧野萬地郎)

皿にはみ出る飛び魚から海の蒼さへとイメージが広がり、皿のさかなを詠んで,スケールの大きい句になっていると思います。(評:八木孝子)

 

★一斉に風鈴の鳴る浅草寺/伊嶋高男

平明な写生句なので、そのことが句に力を与えた。浅草の「浅草寺」を髣髴とさせる。(評:高橋信之)

浅草の賑わい、鬼灯市の風鈴でしょうか。仲見世の店ごとの風鈴でしょうか。浅草はいつ行っても絵になりますね。(評:山野きみ子)

 

★空蝉のまだ重たさを残しけり/日野正人(添削)

写生を超えた佳句。「空蝉」は俳句によく使われるいい季語なので、「蝉衣」と差し替えた。(評:高橋信之)

 

【優秀9句】

★袋から胡瓜はみだし届けられ/目見田郁代

無造作に袋に詰められた胡瓜が、たくましくて新鮮です。(評:高橋正子)

 

★軒先に江戸風鈴の乾く音/右田俊郎

ガラス絵の江戸風鈴は、よく晴れて風のある日は、乾いた音に聞えます。軒先に生まれる音が、素敵な夏空を想像させてくれます。(評:高橋正子)

 

★酸漿を売る低い声高い声/林 暁兵

酸漿の色や形より、酸漿を売る人の声を捉えためずらしい作品。酸漿市の賑わいが、目に浮かびます。(評:高橋正子)

 

★笹の葉の揺れて風鈴鳴りにけり/磯部勇吉

笹の葉を揺り動かす風に、風鈴も同時に鳴り始める。風を見、風を聞く夏らしい句。(評:高橋正子)

 

★冷房や地下一階の核医学室/碇 英一

核医学は、被爆をテーマとした医学でしょうか。地下一階の冷房のなかで、粛々と研究が続けられている様子と、おぞましい過去が思い浮かびます。(評:高橋正子)

 

★水馬ながれに逆らい元の場所/石井信雄

水馬の生態を観察して、ユーモアのある句になっています。具体的なので、場面がよくわかります。(評:高橋正子)

 

★竹林の隠す蕎麦屋や青葉木菟/脇美代子

風趣のある蕎麦屋さんですね。竹林があって、青葉木菟鳴いて。世俗から離れて、お蕎麦が楽しめたことでしょう。(評:高橋正子)

 

★夏氷の自転車囲む子の笑顔/音羽和俊

「夏氷」は、歳時記の季語では「かき氷/氷水」のことで。「かき氷」が出来上がるのを、待っている子どもたちの笑顔が、すてきです。自転車で売って回っているのでしょうか。珍しい光景です。(評:高橋正子)

 

★白雲の徐々に形なす梅雨の明け/山野きみ子

海に近い川沿いの、梅雨明けの空の刻々の変化を上手に詠まれていると思います。(評:伊嶋高男)

 

★草刈りの音弾けたり梅雨の明け/右田俊郎

梅雨に覆い茂った草を刈る音が梅雨明けの明るい空に向かって抜けてゆく感じが良く出ていると思います。(評:磯部勇吉)

 

★よしきりと同じ夕風楽しめり/古田けいじ

川面を渡って来る風を全身で受けて立っていると、よしきりも同じように気持ちが良いだろうと思います。(評:脇美代子)

 

★手花火に浮かぶ親子の似たる顔/平野あや子

庭の隅で,あるいは玄関先で、家族で楽しむ手花火、ほんの短い時間にふっと照らされる親子の顔、その似ている様子を捉えて家族の和やかな夏の宵がクローズアップされています。(評:八木孝子)

 

★到来の蒲鉾厚く冷酒呑む/霧野萬地郎

冷酒と蒲鉾両方の舌に心地よい冷たさが伝わってきます。萬地郎さんの満足そうな顔も。(評:多田有花)

 

★百日紅淡きふじ色空にとけ/祝恵子

ふくよかに咲く百日紅明るく優しい色が目に入ります。アスファルトの焼けた道歩きながら見上げると本当に「空にとけ」実感です。(評:目見田郁代)

 

▼選者詠/高橋信之

熱き夜の底に背骨を置いて寝る

缶ビール少し余して部屋を出る

エアコンの音立て空気押し出せる

 

■第293回句会/選者高橋信之(7月10日)

 

【最優秀3句】

★若竹の枝葉の茂り芯揺らせ/目見田郁代

竹の青い幹が、風を含んだういういしい竹の枝葉にしなやかに揺れている。すがすがしく、しなやかな様がよい。(評:高橋正子)

 

★朝涼しファウルボールは高々と/林 暁兵

朝の涼しさが、漲っている。ファウルボールが涼しげな高い空を、意識させてくれた。(評:高橋正子)  

 

★蟷螂が己の午後の影を食う/音羽和俊

日盛りに自分の影を映した蟷螂の仕草は、作者の自己投影とも読める。「影を食う」は、共感できる。(評:高橋正子)

カマキリの姿が上手く詠まれています。時間をも食ってるのかも知れません。(評:守屋光雅)

 

【優秀10句】

★面を打つ竹刀激しき夏の夜/吉田 晃

剣道の夜稽古でしょうか。なぜかすかっと涼しさを感じます。(評:堀佐夜子)

剣道場に響きわたる気合と竹刀の音が聞こえてきそうな句です。武具をつけての打ち合い、暑いでしょうね。(評:多田有花)

 

★冷房に宝石売場透き通る/山野きみ子

本当にお句のとおりです。売り場は取り澄ましているように思えたり、引き寄せれることも。(評:相原弘子)

 

★はまゆうは海から遠く街に咲く/古田けいじ

 

★花にやる水に夕焼け映りおり/戸原琴

 

★峰雲や満ちし入江の船だまり/平野あや子

 

★日の暮れて陽の色残す凌霄花/磯部勇吉

 

★白日を歩く流行りの黒日傘/霧野萬地郎

 

★橋涼し月と火星と連れもちて/堀佐夜子

 

★本堂の西日の屋根の紋光る/守屋光雅

 

★プチトマト両手に余る今日の糧/脇美代子

 

▼選者詠/高橋信之

夏樹くろぐろ蔭に蔭のいく層も

吹く風を好んで草の穂の高し

草の穂の高だか種を飛ばさんと

 

  ■第292回句会/選者高橋信之(7月9日)

 

【最優秀3句】

★夜涼し藺草の座布団青き張り/山野きみ子

「青き張り」に藺草の真新しい香りがしてきそうである。灯の下では、特に涼しい青い色である。(評:高橋正子)

 

★初蝉の一鳴き毎に空の青/日野正人

初めて耳にした今年の蝉の声に、空がますます高く、青く、本当の夏となったことに感慨が湧く。(評:高橋正子)

梅雨明け真近か、やっと蝉が鳴き出し始め空の青さに真夏が待ち受けています。(評:平野あや子)

 

★初蝉に風の匂いも新しき/藤田洋子

新しいと感じるものに出会うと、それまであった周りのものまで新鮮に感じられる。「初蝉」の声に、風までも新鮮に感じてしまう。そんな自分の驚きを爽やかに表現しているのがいい。(評:吉田 晃)

 

【優秀9句】

★一湾の空にあふるる星涼し/阪本登美子

海上の空にきらめく満天の星にひとしお涼気を感じます。(評:藤田洋子)

 

★ゆと一字染め抜く暖簾宵涼し/平野あや子

銭湯であろうか,温泉場であろうか,シンプルなのは涼しさを呼ぶ。(評:守屋光雅)

 

★酸漿の色地下鉄に流れ入る/林 暁兵

浅草の鬼灯市へは、陸上・水上のバス以外は地下鉄の利用が便利ですね。宵の口の浅草からの帰途、このような光景を何度も目撃しました。(評:伊嶋高男)

 

★朝涼し正装の人に出会いたり/戸原琴

朝の涼しさは、昼間の暑さを伺わせているが、正装をした人に出会い、気持ちまでも涼しくなる。(評:高橋正子) 

 

★明け易し母もう何かしていたり/岩本康子

毎日のことを淡々とこなしてゆく母の姿が、さわやかに詠まれている。「明け易し」が明るく、いきいきとしている。(評:高橋正子)

 

★梔子の香の流れ来るビル谷間/安田明子

無機質なビルの谷間も、梔子の香りに、生き生きとして、人の住む街であることがわかる。(評:高橋正子)

 

★緑陰のベンチ白シャツの読書人/安増惠子

読書に集中する人が、緑陰のみどり染まって、画のように詠まれている。白シャツが、読書人の真摯な純粋さを印象付けてくれる。(評:高橋正子)

 

★山百合の清しき白に出会いけり/脇美代子(添削)

中七が8音であったので、7音に整えた。「白さ」を「白」とすれば、より鮮明な「清しき白」となる。(評:高橋信之)

 

★山低き飛鳥の里に峰雲立つ/音羽和俊(添削)

下五の「雲の立つ」を「峰雲立つ」の字余りとした。この句には季語がなかったので、季語「峰雲」を入れ、句の情景をより具体的なものとした。(評:高橋信之)

なだらかな飛鳥に夏雲が立つと時間が現在と古代へ繋がっていることを意識させられます。(評:碇 英一)

 

★アンデスの旅に憧る花ジャガイモ/守屋光雅(添削)

一句のリズムを整え、「ジャガイモの花」を「花ジャガイモ」とした。リズムは、「ジャガ/イモ//花」が四つに切れ、「花/ジャガ/イモ」が三つに切れる。(評:高橋信之)

 

▼選者詠/高橋信之

食器の音涼しく洩れる近道は

しその葉の濃き紫のいく本も

草の穂の風吹く高さまで伸びる

 

■第291回句会(7月68)

 

【最優秀3句/選者高橋信之】

★木のままの改札口や山開く/小峠静水

言葉使いがいい。俳句として出来ているのである。切れ字の「や」と下五の「山開く」との組み合わせがいい。季語の「山開く」を動詞にした。(評:高橋信之)

 

<レーニア山バックパッキング行>

★短夜やテントの外に明けていく/多田有花

暁のキャンプの空気がさわやかに実感される。(評:高橋正子)

 

★夏星を仰ぎて始まる村芝居/安増惠子

むかしの風景がいきいきと蘇る。「夏星」が効いた。

(評:高橋信之)

 

 【優秀23句/選者高橋信之】

★山宿に遠雷聞え梅雨明ける/堀幹夫

迷いなくすっきりと梅雨の明けた感じがいい。(評:高橋正子)

 

★うねりては鉄路を越ゆる青田風/野田ゆたか

次々とうねりを返しながら進む青田風がいかにも涼しげです。鉄路を越えても、なお勢いを失わず、大きく悠々とした風景です。(評:日野正人)

線路の両側に水田が広がっているのでしょうね。たよりなげだった早苗がいつのまにか波打つような青田に変わっています。多田有花

青田を渡ってくる風の心地よさ。形が田毎に見えて鉄路を越えて行くのも確かにこの目に止まります。(評:相原弘子)

 

★とんぼうの力抜くとき翅伏せる/碇 英一

観察が鋭いです。涼しさと優しい感性が感じられます。(評:林 暁兵)

 

★朝涼の豆腐沈めし手桶かな/平野あや子

豆腐は朝がよく似合う。「朝涼」「手桶」、豆腐がいっそう白くなる。いい朝を迎えているのでしょう。(評:吉田 晃) 

豆腐屋は朝が早いですね。涼しそうで爽やかな生活が描かれています。林 暁兵

 早朝、近所の豆腐屋に手桶を持って買いに行かれたのでしょうか。豊かな生活ですね。(評:伊嶋高男)

 

★青きまま割られし竹に烏賊を盛る/吉田 晃

青竹の匂い・透き通る烏賊の刺身・いただく箸も竹を割いたもの。清涼感溢れる演出です合掌したくなります。(評:守屋光雅)

スパッとするどく切られた青竹に盛られた烏賊の白なんともすずやかで美味しそう。(評:平野あや子)

 

★草茂る角の空き地に厚味あり/霧野萬地郎

夏草がそこだけ繁っている空き地の厚みと同時に暑さも感じます。(評:碇 英一) 

 

★アーティチョーク咲いて明るい夕べの庭/八木孝子

 

★妻は紺夫は紅買う朝顔市/戸原琴

 

★鬼百合の純愛の花濃く咲き/目見田郁代

 

★とんぼ飛ぶ翅の傾くこともなく/相原弘子

 

★祖母の亡き家に咲き継ぐ白槿/脇美代子

 

★子つばめらおぼつか無くて軒に飛び/堀佐夜子

 

★スイカ売阿波の訛をもちて来る/平野あや子

 

★岩清水受ける手のひら真白なり/岩本康子

 

★次々と輪くぐり抜け金魚すくい/日野正人

 

★葉の裏に艶消し色の青葡萄/守屋光雅

 

★夕焼けの石段下より暮ゆけり/戸原琴

 

★早朝の散歩十日目立葵/林 暁兵

 

★朝顔の入谷に溢れ売り競う/山野きみ子

 

★川原には月に涼しき風の吹く/伊嶋高男

 

★瓜二つ朝の光りに輝やけり/祝恵子

 

★水面をかわせみ翠の一直線/古田けいじ

 

★真新しき橋を渡りて夏の風/磯部勇吉

 

▼選者詠/高橋信之

冷房の空気の軽い流れの中に

梅雨前線来て朝からの緊張に

星のない夜空の張りに梅雨明けか