デイリー句会/第281回〜第290回

 

  ■第290回句会/選者高橋信之(7月5日)

 

【最優秀3句】

★二階部屋西日は長く部屋に入り/目見田郁代

二階の部屋には、西日がとくに長く差し込む。夏の少々の気だるさと懐かしさが、西日の色に滲んでいる。(評:高橋正子)

 

★涼風が格子の形で吹き抜ける/日野正人

涼しい風が、格子窓から、真っ直ぐに入って吹き抜ける。風がよく通るところなのである。涼風は清風である。(評:高橋正子)

 

★大西日浦曲に戻る観潮船/平野あや子

渦潮を見てきた船が、西日に金色に染まる浦曲にもどってきた。スケールの大きな渦潮が、楽しめたことを伺わせている。(評:高橋正子)

 

【優秀9句】

 <祇園祭>

★月鉾のぐらりと揺れて辻回し/大石和堂

祗園祭りのシーン。おもいださせます。ぐらリとずばりがいい。(評:小峠静水)

京都の優雅な祭り,動きがあって見物人の歓声も聞こえます。一度見たいものです。(評:守屋光雅)

祇園祭はテレビでしか見たことがありませんが、そばで見ると凄い迫力でしょうね。「ぐらりと揺れて」にその感覚がよく表れています。 (評:多田有花)

 

★竹箒涼しき朝の音させて/藤田洋子

朝の涼しい様子がわかり、細やかな心がみえます。(評:小峠静水)

今、夏の落ち葉が激しく箒で勢いよく集めています。毎朝近所からも音が聞こえます。(評:脇 美代子)

洋子さんは涼しさを詠むのが上手ですね。竹箒の音と涼しさがよくあっています。(評:多田有花)

 

★我に吹く薔薇百本の香りかな/守屋光雅

楽しくいいことあればバラ園は我に吹いてきますね。豪華な香りの感動です。(評:目見田郁代)

薔薇園の真っ只中でうっとりとしている光雅さんの様子が手に取るように見えます。(評:山野きみ子)

 

★夕涼や金具の音する船溜り/伊嶋高男

 

★影踏んで歩む先あり大緑陰/小峠静水

 

★バリバリと胡瓜清しき固さかな/碇 英一

 

★とんぼうの翅透き通る白き壁/岩本康子

 

★花茣蓙の一枚買われ抱えられ/相原弘子

 

★滴りを掌に受く箱根路/脇美代子

 

★炎昼に影も出来ずに車椅子/堀佐夜子

 

▼選者詠/高橋信之

冷房の堅き表紙よ英和辞典

匙に掬う抹茶の氷菓のみどり濃き

玻璃全面ポプラ青葉の大きな揺れ

 

 ■第289回句会/選者高橋信之(7月4日)

 

【最優秀2句】

★今年竹きらきらと伸び雲流れ/目見田郁代

竹全体が、きらきら輝いている。すこやかである。白い雲ものびやか。元気で過ごしたいと思う気持ちにさせてくれる。(評:高橋正子)

 

★どっかりと淀に映りし梅雨の月/堀幹夫

梅雨の中休みで、月がきれいである。「どっかりと」は、揺るぎようのない月で、淀川の水にはっきりと映っている。淀川の水の流れが、想像できて涼しい。(評:高橋正子)

暫くぶりのお月さん,淀川の大きさを表すのに〈どっかりと〉は効果的。俳味があります。(評:守屋光雅)

昨夜今夜の、大きな梅雨の月。淀に映ってよりよく輝くことでしょう。(評:相原弘子)

 

【優秀10句】

★折り紙の投網懸かれる七夕竹/山野きみ子

折り紙の投網を透けて、竹の葉の青い色が、優しく、清らかに

見える。もうすぐ七夕ですね。願いもさまざま。(評:高橋正子)

 

 <レーニア山バックパッキング行>

★夏川の水汲み上げて晩ごはん/多田有花

「夏川」、「晩ごはん」も素直な表現で、キャンプのさわやかさが。よく表されています。「水汲みあげ」も、若々しい。余談だが、来年レーニア山頂で、詩の朗読会が行われる予定。(評:高橋正子)

<レーニア山について>

何年か前に、Mt.Rainierへは車で行きました。野の花や雪渓が多く、又、タコマ富士と云われるだけあって、見事な姿を思い起こします。(霧野萬地郎)

 

★電柱の一本浮かせ大西日/相原弘子

平野に立つ一本の電柱が西日を受けて象徴的です。ぎらぎらとした緑の平野とか田畑の様子が見えます(評:霧野萬地郎)  

 

★サングラス透かす眩しさ空も海も/霧野萬地郎

サングラスを通しても、空と海はきらきらとして、夏の太陽がいっぱいである。映画の主人公のサングラスから見た景色のようですね。(評:高橋正子)

 

 <博多山笠飾り山(北条時宗)

★人形のよこ顔涼し夏の月/安増惠子

博多祇園山笠は見たことがありませんが、スケールの大きい山笠の様子が生き生きと描かれています。京都の祇園祭の山鉾と同じで、夜見るほうが情緒がありそうですね。大きな夏の月で一層華やかになりました。(評:伊嶋高男)  

 

★歩きつつ氷菓食う旅の気軽さ/堀佐夜子

気軽な服装をして、アイスクリームを食べ歩く様子は、夏らしくて様になりますね。旅の気軽さが良く出ています。(評:高橋正子)

 

★きささげの木陰に憩う半夏生/伊嶋高男

きささげの木陰が、涼しそうです。「憩う」に、本格的な夏に向かう、ゆったりとした心構えがよく出ていると思います。(評:高橋正子)

 

★終電車暑き闇から抜けてくる/林 暁兵

終電車で家路に着こうというのでしょう。終電車の時刻になっても暑さが消えません。動かない空気の中から、ホームに滑り込んだ終電車に、ほっとするものを感じます。(評:高橋正子)

 

★烏賊釣の漁火千々に連なれる/平野あや子

烏賊釣りの漁火が涼しく、美しいですね。夏の夜の味わいです。(評:高橋正子)

 

★風の朝紫陽花それぞれの傾きあり/音羽和俊

そろそろ梅雨も終わりそうです。紫陽花もよく咲いて、それぞれに花を傾けています。朝の涼しい風が、楽しめますね。(評:高橋正子)

 

▼選者詠/高橋信之

いく匹も蝶遊ばせて樹の空間

子らの声丘へ涼しく上ってくる

月白き空から届く涼しい風

 

■第288回句会/選者高橋信之(7月3日)

 

【最優秀2句】

★夕風のとんぼの加速水平に/碇 英一

夕陽に光る夕方の風に、飛んでいるとんぼが、勢いを得て飛んでいく姿が、真っ直ぐで爽快。(評:高橋正子)

 

★おしろい花ぱっと明るし雨上がり/堀佐夜子

夕方雨が止んで、まだ明るいときに咲くおしろい花は、色が冴えて、目に飛び込んでくる。すっきりと目覚めたような気分になる。(評:高橋正子)

 

【優秀10句】

★潮満ちて涼しい月が昇り行く/三浦絹子

瀬戸内海の満ち潮の涼しさは、たとえようもないほどである。そこにやはり、プラチナのような黄色い月がのぼると、涼しさは、この上もない。(評:高橋正子)

 

★黄蝶のはっとする色夏空へ/目見田郁代

小さいモンキチョウの色は、夏空に舞っていても、驚くほど鮮明である。命の新鮮さがよく伝わってくる。(評:高橋正子)

 

★山開き朝刊カラーの岩手山/守屋光雅

山開きの朝の、夏を迎えた新鮮な気持ちがよく出ている。インクの匂いがしている朝刊に、岩手山の夏の姿が涼しげである。(評:高橋正子)

 

★早出しの林檎も手毬ほどになり/堀幹夫

林檎によせる愛情をかんじます。(評:三浦絹子)  

 

★船涼しみるみる島のふくれきし/平野あや子

島通いの船の、退屈を覚えぬ乗船時間なのでしょうか。親しさに島は近づきます。(評:相原弘子)

 

★鳴り止まぬ瀬音緑をくぐり来る/脇美代子

せせらぎが緑を濾して絶え間なく聞こえてくる、涼味万点の美しさですね。(評:山野きみ子)

 

★昼寝覚め半拍おいて人の声/林 暁兵

「半拍」の間が昼寝覚めをよく表していると思います。(評:碇英一

 

★対岸の町金色(こんじき)に夏夕日/岩本康子

 

★夏潮や手漕ぎの舟の音が来る/吉田 晃

 

★夏日差す砂漠の彼方蒼き湖(うみ)/多田有花

 

▼選者詠/高橋信之

<新居浜船木・臥風先生句碑>

句碑静かなり炎天の静かなれば

池まっ平ら昼を涼しくまっ平ら

夏料理いろいろつくね豆腐もある

 

 ■第287回句会/選者高橋信之(7月2日)

 

【最優秀3句】

★分蘖の始まる青田の水の張り/相原弘子

分蘖(ブンケツ・ブンゲツ)は、平明な言葉ではないが、広辞苑の説明では、「稲・麦などの、根に近い茎の関節から枝分かれすること。」とある。「水の張り」がいい。(評:高橋信之)

 

★真青なる空に噴水はじけをり/阪本登美子

「噴水はじけ」に、気持ちのありようと、景色のありようがでている。青空にあがる噴水は、いかにも涼しげである。(評:高橋正子)

 

★パラソルの濃き影ととも歩きたり/岩本康子

日差しが強い。恃むところは、自分が自分に差しているパラソル。自分が歩けば、パラソルの影も歩く。パラソルの影へまた、自分の身を入れる。そういった一人二役のようなところが面白い。(評:高橋正子)

 

【優秀9句】

★海ほおずき口に含めば幼き日/安増惠子

そういえば、縁日できゆっきゆっとならしましたね。(評:祝恵子)

男子とてこの気持ち分かります。そして、幼き日の思い出に浸ってタイムスリップです。2週間前に青森での小学校同級会に参加してきたばかりで、感じ易くなっています。(評:右田俊郎)

「海ほおずき」と聞いただけで懐かしくなります。幼い日の縁日、街へ出かけていった祖父のお土産の海ほおずきがとてもうれしかったことを思い出しました。今は、どこへ行ったら手に入るのでしょうか。(評:八木孝子)

 

★たっぷりと夕風を受く青トマト/碇 英一

青い頃のトマトが目に見えます。夕風の心地よさに、明日の午後には色付きが始まるかもしれません。(評:相原弘子)

 

★髪形のしゃきっと決まる半夏生/平野あや子

日々のみだしなみ。暑さ本番となるこれから、尚、それを思います。(評:相原弘子)

 

★なにがいい鰻がいいと老いし母/林 暁兵

暁兵さんの親孝行の一端を垣間見させて呉れているのですね。川柳の味わいもあって楽しくもあります。こういう句、私は好きです。(評:右田俊郎)

 

★土間に待つグラジオラスと友の妻/音羽和俊

写生句だが、読み手に強く伝わってくるものがある。月並みではない。(評:高橋信之)

 

★青バナナ垂れいく先の花大き/八木孝子

 

★泉から溢れし流れ石を踏む/伊嶋高男

 

★雨雲の切れて青空映る植田/堀佐夜子

 

★風鈴の軽ろき音色を夢で聴く/安増美喜子

 

▼選者詠/高橋信之

暮れ際の槿の白を際立たす

梅雨晴の海へ落下の日の速度

声透る涼しく透る夕闇に

 

■第286回句会/選者高橋信之(629日〜71)

 

【最優秀3句】

★茅の輪くぐり青きにおいを吸いこみぬ/守屋光雅

茅が束ねられて、神事に使われるというだけで、すがすがしい。青い匂いを吸って、心身共に清められ、暑い夏を無病息災に過ごせる。いい行事である。(評:高橋正子)

夏越えの行事、茅の輪の青いにおいを吸い込んで新しい気持ちで一年の後半を迎えるすがすがしさが感じられます。(評:八木孝子)

まだ新しい青々とした茅の輪を実際にくぐって、<青きにおい>を思い切って吸い込む。この季節を象徴し行事をすんなり受け止めることが出来ました。(評:霧野萬地郎)

 

★朝涼の肺満たしゆく空の色/脇美代子

空の色が、肺を満たすというのは、ユニークな感じ方。空の色の涼やかさがとてもいい。大変澄んだ心境に、共感する。(評:高橋正子)

 

★緑陰の一つの影を連れて出づ/小峠静水

緑陰に同化した自分の影を引き出すように連れて出る。巧みな句。

自分の影が失われなかったことに、涼しさと実在が意識される。(評:高橋正子)

 

【優秀26句】

★涼しくて杜のなる音聞いており/ 恵子

杜の音が、いかにも涼しげ。しかし、杜の音は、どんなのだろうと、また、逆に思ってしまう。(評:高橋正子)

 

★枇杷の珠光りの種を包みけり/ 英一

枇杷の種の、つやつやした様子をこうも言った。枇杷の実も灯ともるような色だが、種はさらに輝くものである。(評:高橋正子)

 

★遮断機の音乾きつつ梅雨空へ/日野正人

確かな梅雨明け方へ時は移っている感覚を「乾きつつ」に見ます。(評:碇 英一)

「音が乾く」ユニークな感覚ですね。遮断機の乾いた音に梅雨明けを願う気持ちを感じます。(評:八木孝子)

 

★海静か飛魚(あご)の滑空どこまでも/磯部勇吉

どこまでもが良いですね。こんな光景見たら、私は飛魚になりたいという気分になるかもしれません。(評:林 暁兵)

静かな海に飛び上がるあごの群れ、私の住む海では、飛魚が採れないので、一度見てみたいです。 (評:平野あや子)

 

★衣更えして演目はシベリウス/ 暁兵

謹厳実直なイメージがシベリウスにはあります。フィンランディアを聴く時などは、脱帽して直立不動。衣更えが妙に響き合って独特の雰囲気を醸し出しています。(評:右田俊郎)

 

★少年の如き勢い西瓜喰む/安丸てつじ

スイカにがぶり付いて食うてつじさんの様子を想像しています。一番美味い食べ方でしょうね。(評:霧野萬地郎)

よく冷えた真っ赤な西瓜。遠慮なくかぶりつくあの味。誰もが少年です。(評:相原弘子)

 

★風鈴の鳴り止まぬ日の白い雲/相原弘子

そよ風くらいの強さで風鈴を鳴らす風も白い雲をゆっくり流す風も、同じだろうかと思うと、なんとも不思議です。風鈴の音の強弱と雲の流れる早さが比例しているのでしょう。風の持つ不思議な魅力を感じます。(評:日野正人)

 

★額の花青冴え冴えとガラス器に/八木孝子

ガラスの器に浮かぶアジサイが鮮やかです。作者の生活が見えるようです。(評:守屋光雅)

 

★面影は笑顔の中に夏帽子/太田淳子

旧友との出逢い。読者に、句の行間にある楽しさが伝わってきます。(評:野田ゆたか)

帽子の中の笑顔に昔のあの面影を見つけた喜び。(評:平野あや子)

 

★蜻蛉の生まれる朝の清流に/吉田

 

★日盛りを入る美術展の静けさに/山野きみ子

 

★ゆであがるシャコは鎧をつけしまま/安増惠子

 

★萍や今日吹く風と明日の風/磯部勇吉

 

★田の上の塩辛蜻蛉羽根光り/堀佐夜子

 

★中庭の金魚鮮やか雨上がり/岩本康子

 

★朝焼けがさめて船発つ火の島へ/霧野萬地郎

 

★部屋に満つ梅の香りに目覚めけり/古田けいじ

 

★昼寝の子白き足裏窓に向け/野田ゆたか

 

★果てしなき緑の田圃にとんぼ生る/右田俊郎

 

★踊り下駄入荷と壁に梅雨夕焼/平野あや子

 

★茅の輪をばくぐり続けて餓鬼大将/大石和堂

 

★炎昼の汗退くまでの地下本屋/音羽和俊

 

★そら豆はもう終いかと風呂上がり/伊嶋高男

 

★ライ麦の稔りは空へ捧げられ/戸原琴

 

★地酒造る蔵にのうぜんかずらかな/多田有花

 

★安曇野の水で育つや花山葵/堀幹夫

 

▼選者詠/高橋信之

夜へ向かう白粉花のみずみずし

月白し梅雨の晴間の夕べなる

夕べ平らに歩く涼しく歩く

 

■第285回句会/選者高橋正子(6月28日)

 

【最優秀3句】

★青萩の揺れればありぬ濃さ淡さ/相原弘子

萩がすでに風に吹かれて、葉裏が見え、葉表が見え、つまり、緑の濃淡を見せて、ゆたかな葉叢は咲く花を待つばかりである。(評:高橋正子)

まだ花の咲くには早い萩の葉に風がさやぎ葉の濃淡をとらえられた弘子さんさすがですね。(評:平野あや子)

 

★一日目花の大きく百日草/碇 英一

夏の間中、しっかりと咲く百日草の咲き始めの花が、大きかった。夏の日盛りへ向けての草木の心意気が読める。(評:高橋正子)

 

<カンボジャ>

★仏跡へ象の背揺れる籐の椅子/霧野萬地郎

象が歩くたびに揺れる背中の籐椅子に座って、仏跡をたずねる。ゆらゆらと象に連れられて行くことの意味がいい。(評:高橋正子)

 

【優秀8句】

★冷素麺ほぐす器の氷鳴る/藤田洋子

身近な日常を詠んで明るい。生活に詩を取り入れて明るい。(評:高橋信之)

 

★兄弟の同じシャツ着て麦わら帽/平川康子

母親の姿も見えて、あたたかい家族の風景である。「麦わら帽」がリアルで、読み手との共通の場を作る。(評:高橋信之)

 

★ひまわりの太き茎立つ保育園/安増惠子

メディアでは子どもたちの不幸が報じられているが、「ひまわり」のように、明るく、強く育ってもらいたい。(評:高橋信之)

 

★日の盛茅輪くぐりに興じたり/林暁兵

「茅輪」をくぐれば、健康になって、何かいいことがありそうで、わくわくしてきます。(評:高橋信之)

 

★暖簾奥中庭向きて夏の下駄/目見田郁代

いいところに目が向いています。涼しげな「暖簾」です。(評:高橋信之)

 

★ささやかな幸せここに金魚玉/平野あや子

「幸せ」に大小がなく、生活の身近なところにあるのは、嬉しいことです。(評:高橋信之)

 

★梅雨明けの近き夕べの白かりし/岩本康子

近頃の夕方は暮れるのが遅く、いつまでも白々としていて共感を覚えます。(評:山野きみ子)

日が長く、なかなか暗くなりませんね。雷が鳴ったりして、梅雨が明けるのも近いなという期待が高まってきます。(評:多田有花)

 

★夢にまた試験出てくる熱帯夜/音羽和俊

眠られれぬ夜にこの夢見ますよね。着眼が秀逸で感心しました。流石に古希を過ぎたら出てこなくなりました。何だかさみしい気もします。(評:安丸てつじ)

 

▼選者詠/高橋正子

夏浜に天日の塩のにぎり飯

海光にボトルの麦茶逆さ飲む

夏潮の潮目の紺に鳶も来て

 

■第284回句会/選者高橋正子(6月27日)

 

【最優秀2句】

★梅雨晴れの風吹きとおる礼拝堂/岩本康子

礼拝堂の意味が大きい句。祈りの空間が、梅雨の晴れ間の風の流れにあることは、人にとっても生きた空間である。(評:高橋正子)

 

★白きもの白く乾きて日の盛り/平川康子

<白きもの真っ白に洗い夏来る/阪本登美子>という句があるので、類句であるが、これも俳句の宿命であろう。類句を恐れては、俳句が作れない。この句を良しとした。(評:高橋信之)

 

【優秀7句】

★山登る植田は徐々に狭くなり/祝恵子

静かな抒情であるが、淋しくはない。「山登る」作者の内面に張りがある。(評:高橋信之)

 

★木々揺らす風軽くなり梅雨晴間/日野正人

軽い句である。「梅雨晴間」の軽やかで、少し弾んだ気分をうまく詠んだ。(評:高橋信之)

 

★航跡を一直線に梅雨の川/山野きみ子

梅雨川は、大川など。そこを航跡をあらたに突き進む船や、水量を増やした川の流れが、目に見える動きとなって、実感を呼び起こす。(評:高橋正子)

 

★夏空へ撒かれてきらきら水光る/吉田 晃

撒水のホースの先が、空へ向いているのだろう。だから、空へ撒かれてとなる。眩しい夏の太陽を反射して、きらきらしている水のシンプルさが涼しい。(評:高橋正子)

 

★ざくろ散る火星へ向う探査船/伊嶋高男

ざくろの花の朱色と、赤い星、火星とが、相通じるのだろう。ざくろの花が散るのは、花火のようでもあるし、ロケットの噴射されたあとのなんらかの残滓のようにも連想されて、夏らしい話題。(評:高橋正子)

 

★蛸の足伸びきっていて量られる/平野あや子

かなり大きな蛸なんでしょうね。蛸の運命は茹で蛸か、お刺身か。おいしそうです。(評:多田有花)

 

★紫陽花の毬の大小海峡の町/安増惠子

観光案内を見ている思いです。紫陽花の毬の大小、色合いが目に浮かびます。(評:相原弘子)

 

▼選者詠/高橋正子

薮すでに七夕竹を育てたり

青竹の夏へ向きゆく雲を掃き

薔薇館海風通る街の筋

 

■第283回句会(6月26日)の最優秀句/選者 高橋正子

 

【最優秀3句】

★寺の池蜻蛉の種類増えており/祝恵子

いつも来るお寺の池に、今日来てみれば、蜻蛉の数が増えている。眺めていると、いろんな種類の蜻蛉がいる。時が明るく進んで、蜻蛉の世界が、まばゆい。(評:高橋正子)

 

★ひょうたんの花を揺らして風が来る/安増惠子

ひょうたんの花は、花柄を長く咲くので、風がきても、涼しげに飄々とゆれる。俗塵を感じさせないので、余計にすずしげである。(評:高橋正子)

 

★花閉じし紫かたばみ閉園す/伊嶋高男

かたばみは、日光を感じて黄色い花を閉じ、かわいい葉を閉じる。夕方の閉園の時間には、かたばみも花を閉じたというのだろう。静かで、少しさびしい日の光に共感するものがある。(評:高橋正子) 

 

【優秀15句】

★潮風と走る波の穂海開き/阪本登美子

波の音と、日差しが感じられる句です。海へ行きたいなあという気分にさせられます。多田有花

<走る波の穂>上手な表現でさすがだと思いました。海がいきいきと躍動してきます。山野きみ子

 

★うすものを軽やかに着て紺の風/山野きみ子

絽の着物でしょうか、紗の着物でしょうか、「紺の風」が軽やかで優雅、涼しげな日本の夏。(評:八木孝子)

 

★青芝を踏む柔らかさ土踏まず/霧野萬地郎

土踏まずに青芝の柔らかさを踏むクッション感覚、伝わってきます。(評:八木孝子)

 

★青胡桃落つるもありて拾ひけり/磯部勇吉

この時期の胡桃は、青い実を付けた枝葉が整然と青葉を広げているのが好きですね。川沿いの道に大きな胡桃の木があるので、時々眺めに行きます。(評:伊嶋高男)

 

★紫陽花のそれぞれ子らの高さに咲く/日野正人

 

★向日葵のもう咲いておりバス通り/岩本康子

 

★自転車に夏日夏風連れ走る/碇 英一

 

★プラットホーム沙羅の一枝持つへ風/相原弘子

 

★ズームして山百合風に定まらず/平川康子

 

★梅の実の地に落ち黄色く香りけり/古田けいじ

 

★ねじ花の素直にねじれて立っている/脇美代子

 

★掛け時計遅れしままに明け易し/堀佐夜子

 

★逃げ水の中から父の自転車来る/音羽和俊

 

▼選者詠/高橋正子

いろいろの色の漁船の梅雨港

太陽は高し青葦吹かれたり

梅雨川の浅きところはせせらげる

 

■第282回句会(6月25日)/選者 高橋正子

 

【最優秀3句】

★しゃぼん玉息吹き込まれ生れしもの/戸原琴

息を、ゆっくりと吹き込まれて、虹色に輝きだすしゃぼん玉が、

よく観て詠まれた。しゃぼん玉が、リアルに詠まれたことは、

独特といえよう。(評:高橋正子)

 

★朝涼の地軸の向きほど体曲げ/日野正人

朝おきぬけの、軽いストレッチなのかもしれない。朝の涼しさに、自分の身体の曲がり具合に、空が、地軸の傾きほど傾いたにちがいない。面白い捉え方は、思索的。(評:高橋正子)

 

★石段の濡れて青葉の雫うく/祝恵子

雨に濡れた空は、今は心地よく晴れているのだろう。石段の濡れているのもすがすがしい。青葉の雫も生き生きと目に輝いて、梅雨の晴れ間が明るい。(評:高橋正子) 

 

【優秀15句】

★朝涼し音せぬように湯を沸かす/堀佐夜子

先に起きた人の後から起きる人への優しさですね。お茶の香りがしてきました。(評:八木孝子)

まだ涼しい時間、早い朝、隣室の人は眠っている。朝のかたい空気に湯気の白が涼しくみえる。(評:戸原琴)

 

★洗い上げ青梅の匂う中にいる/藤田洋子

ていねいな作業が伝わります。青梅の香は、まだしばらく身を包んでいることでしょう。(評:相原弘子)

 

★たちまちに白く爆ぜたり湯引き鱧/平野あや子

贅沢な鱧料理、羨ましいですね。(評:山野きみ子)

 

★さくらんぼ無骨な指の手が伸びる/伊嶋高男

さくらんぼ狩りの風景でしょうか。キュートなさくらんぼに無骨な指の取り合わせが、かえって効果的で、アップの映像をみるようです。誰からも愛される色と形と味、さくらんぼ。(評:八木孝子)

 

★海開き見ている浜の改札口/音羽和俊

駅が海のすぐ側にあるのですね。まだ、静かな状態でしょうが、まもなく、大勢の海 水浴客で、駅も浜も賑やぐのでしょう。(評:霧野萬地郎)  

 

★向日葵のむこうは低き梅雨の空/多田有花

近景の向日葵を通しての遠景の梅雨空、素直で大きな景を感じます。(評:山野きみ子)

 

★もぎおれば後ろにあんず落ちる音/八木孝子

 

★青々と堤は裾に青田置き/相原弘子

 

★梅雨の雨川面の灯にも激しかり/岩本康子

 

★パソコンの部屋ふうりんの風とおる/碇 英一

 

★雲重く風来て蕗に降らす雨/小峠静水

 

★農道に田を見下ろして月見草/守屋光雅

 

★草笛を吹いて真っ白な雲を呼ぶ/吉田 晃

 

★山の坊襖はずして夏期講習/芦本照代

 

★夕焼けて我が影黒くまっすぐな道/安増 惠子

 

▼選者詠/高橋正子

奥山にあじさい青しダムあらむ

かき氷食べ終えしのちの銀の匙

<Sさん>

癌を告げ少し泣きけり熟れ李

 

■第281回句会(6月2224)選者 高橋正子

 

【最優秀3句】

★青紫蘇のからりと揚がり夕べ来る/藤田洋子

夏のまだ明るい夕べに、さわやかな香りの青紫蘇が、てんぷらにされて、明るい生活が詠まれている。。こんな夏の夕べは、楽しい。(評:高橋正子)

 

★麻暖簾「どぜう」とありて雲厚し/林 暁兵

蒸し暑そうな雲が出ているが、「どぜう」とかかれた食事どころの麻暖簾に出会い涼味を感じた。あつあつのどじょう鍋も、麻暖簾も夏らしい庶民のいい生活である。(評:高橋正子)

 

★朝涼の山家のポンプこきこきと/小峠静水

一昔か、二昔か、それとももう少し前のことか、と思う郷愁がある。「ポンプこきこき」が、山家の涼しさを表している。(評:高橋正子) 

 

【優秀27句】

★旋盤の鉄くず匂う五月闇/野田ゆたか

大阪の市民生活であろうと思い、生活の強さがある。背景にある「五月闇」は、季語のいい働きをして、読み手との共通の場を作る。読み手の読みを軽くする。(評:高橋信之)

 

★梅雨休み竹は芯から天に伸ぶ/吉田 晃

「芯から」がこの句のすべてである。生命こそが力であり、自ら伸びていく力である。(評:高橋信之)

 

★夕蛍手にたっぷりの化粧水/平野あや子

涼しげである。さわやかである。「化粧水」がいい。(評:高橋信之)

 

★梅雨晴れの雲流れゆく露天風呂/岩本康子

 

★若葉透かして朝の図書館シャンデリア/八木孝子

 

★涼しさやカ−テン風の形となり/大石和堂(添削)

 

★夏灯しハーモニカのような電車行く/芦本照代

 

★夏蝶の湧き出る道を頂上へ/多田有花

 

★宙衝いてなんばんの花も雨上がり/相原弘子

 

★ほおずき市大江戸線の掲示板/伊嶋高男

 

★花々の色に降り染む夏の雨/戸原琴

 

★ラップ越し日の色も嗅ぐすももかな/古田けいじ

 

★ハンカチを買いて仲見世のんびりと/平川康子

 

★雨磨く白き花なる泰山木/碇 英一

 

★金魚草咲き戻りまた雨となる/矢野文彦

 

★海霧の流れて紫陽花のところまで/三浦絹子

 

★意を決し一輪差しに濃紫陽花/音羽和俊

 

★水中花ワイングラスの中に咲き/堀佐夜子

 

★水郷に葦切りの声深き靄/右田俊郎

 

★ラジオ鳴る脚立の上の袋掛け/守屋光雅

 

★麻の服透す夜風に背を押され/霧野萬地郎

 

★緑陰のテラスに白き椅子と猫/安丸てつじ

 

★紫陽花の鞠の蒼さを空に弾き/目見田郁代

 

★暮れなずむつゆ空白く町の屋根/山野きみ子

 

★手に取れば夏グミの確かな重さ/安増惠子(添削)

 

★苦瓜のまずは真っ直ぐ蔓伸びぬ/脇美代子

 

★草茂る白雲一片天をゆく/阪本登美子

 

▼選者詠/高橋正子

石垣の緻密に積まれ額の花

梅雨出水さくらの木下くぐり行き

万葉のしなのき・たぶのき夏至の空