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伝言板

高橋正子選評
デイリー句会最優秀一覧
2005年3月11日〜31日

3月11日
★ゆらゆらとふるさとめきて菜種咲く/山中啓輔
「ゆらゆらと」の表現に甘さがあるが、風に吹かれて揺れる菜種
の花を見ていると、故郷の光景へと連れてゆかれるような気持ち
になる。

3月12日
★朧夜の刻々白くそこに在り/臼井虹玉
身辺にある朧夜の刻々の白いイメージを「そこに在り」と実在化
させてくれた。

3月13日
★クロッカス雪の晴れ間の空青し/冨樫和子
雪の晴れ間の空の青さ、その空の下に覗く春一番の花、クロッカ
ス。ギリシャ神話のように、イメージが鮮明な句で、作者の思い
もはっきりとしている。

3月14日
★汽車去れば暫し囀りだけを聴く/池田加代子
汽車が線路を鳴らして過ぎると、静けさの中に小鳥の囀りだけが
聞こえてくる。汽車の音と対比された、小鳥の弾けるような囀り
が、耳にたのしく聞こえる。

3月15日
★火の山の翔る煙やいぬふぐり/小口泰與
今日は、火の山の噴煙は空を翔けている。風が強いのであろうが、
火の山が雄雄しい。噴煙の見える作者の足元には対象的に、可憐な
いぬふぐりが咲いている。対象的なもの二つが互いに魅力を増しな
がら調和している。

3月16日
★雲高き原生林にブナ芽吹く/吉田晃
素材がよい。高い雲と原生林、そこに芽吹くブナ。大自然の春の静
けさが詠まれている。

3月17日
★若布刈る波のゆらぎのそのままに/池田多津子
海の波の揺れ合わせてゆらゆら揺れている若布をその状態のまま刈
りとったという。若布刈りの様子が手に取るように分かる。透明度
のある海に育つ若布を刈る暮らしの楽しみがいい。

3月18日
★花辛夷高きにありて朝始まる/大給圭泉(正子添削)
辛夷の白い花の、その上の空から朝が始まるという。辛夷の花が空
にあると、冷え冷えとした感じが強まる。春の朝の清らかな冷たさ
は、精神的な高みを擁している。

3月19日
★すみれ咲く更地に青図描きけり/石井孝子
事典に拠ると、青図(あおず)は、建築土木の図面などを青焼きし
た図面のことで、「青図」は完成予想図という意味で使われる。更
地に家を建てようとして、間取りなどを地面に描いて、完成予想の
家を思い描いてたのしく思っている。可憐なすみれの花の咲く土地
に建てられる家は、素敵な家に違いない。

3月20日
★紙風船息吹き込めば紙の鳴る/臼井虹玉
紙風船には、夢がある。紙風船に息を吹き込むと、紙の音をさせて
しだいに膨らんでいく。自分の息の音ともとれるその音が耳に残る
。

3月21日
★北国の匂いを載せて蕗の薹/安丸てつじ
蕗の薹は、九州や四国のような暖地にも出る。しかし、雪の下から
出てくる蕗の薹には、格別の春が来たうれしい思いがこめられてい
る。それだけに貴重な、北国の匂いを載せた蕗の薹なのである。

3月22日
★虎杖の折られし跡の新しき/野田ゆたか
下五の「新しき」が情景全てを物語って、虎杖を折り取ったばかり
跡にみずみずしさがの迸っている。

3月23日
★産声を待つ部屋の窓白木蓮/高橋秀之
まずは、おめでとうございます。子の誕生を待って落ち着かない父
親の目に、白木蓮が映る。産着のような純白の白木蓮に、まもなく
誕生する子が重なって見える。           

3月24日
★葬列にどっと菜花の風が吹く/池田多津子
「菜花の風」に、重いものを感じたが、この句の後で、父を亡くさ
れたことを知った。葬列にいるのは作者。野辺送りに外に出ると、
菜の花を吹く強い風がどっと吹いて来た。こもごもの思いを気丈に
処した。                     

3月25日
★欅大樹の空をあまさず芽立ちけり/おおにしひろし
大空へ思い切り枝を広げる欅の芽吹きがのびやかで、美しい。「空
をあまさず」には、欅大樹の風格がある。      

3月26日
★桑解きて信濃の畑の弾みけり/大山涼
桑に新芽が出てくると、それまで括っていた桑の木を解く。解くと
、枝ば弾んでもとにもどる。明るい日をさんさんと浴びて、桑の葉
が育つのが楽しみ。「弾みけり」がいい。      

3月27日
★水ぐるま回り回りて日の永し/臼井虹玉(正子添削)
水車は、際限なく回って、回って一日が過ぎる。回る調子は変わら
ない。その単調さが、日永の長閑さに通じる。日永一日回る水ぐる
まに夢がある。                  

3月28日
★雉鳴くや憂いおびたる牧の木々/小口泰與
ケーンケーンという雉の鳴き声は、曇ったさびしさを呼び起こす。
それを「憂い」といった。その声のせいで牧の木々は憂いを帯びた
ように静まっている。雉の声にある春の憂いが詠まれている。

3月29日
★白れんのどの一輪も空にあり/甲斐ひさこ
白れんの花のひとつひとつを一輪と呼んで注目したのが、新しい。
空の青に浮かぶ白れんの一輪を大切に思う気持ちがある。

3月30日
★揺れだして風より軽き雪柳/脇美代子
雪柳の咲くころの風は結構強い。風に雪柳が揺れだすと、揺れ止ま
ない状況がある。揺れ続けると風よりも軽いのではないかという軽
さになる。風に枝を預けた雪柳である。       

3月31日
★ひとひらを手帖に惜む花の旅/篠木睦
ひとひらの桜の花を惜しんで、手帖に挟んだ。旅にあっての花は、
ことに印象に深い。ひとひらの花を惜しむ気持ちは、一期一会の気
持ちから。