デイリー句会過去一覧
伝言板

高橋正子選
デイリー句会入賞作品
2005年3月7日〜10日

NPO法人水煙ネット

■3月10日■

【最優秀】
★一番に咲きしは白のヒヤシンス/今村七栄
春の花の一番に咲いたのが、純白のヒヤシンス。まず開く花に、紫
やピンクを期待したかもしれないが、そんな色ではなく、水を吸い
上げて咲く清らかな白。白いヒヤシンスの香には、気高さがともな
う。                       (正子評)

【優秀/6句】
★ものの芽の際立ててゆく石の数/野田ゆたか
河原や道端の石の際からものの芽が萌え出た。緑の芽によってそれ
に添っている石もその場所がはっきりとして、石がたくさん見える
。                        (正子評)

★湧水の溢るる川の水温む/篠木睦
湧水は、地下より湧き出てぬくみがある。その水も川の水に混じっ
て流れるときには、川水の冷たさとなって流れているが、水が温ん
でくると、湧水ものびやかに溢れて川水と連れ立って流れるように
なる。難しいところをよく捉えている。       (正子評)

★山葵田をめぐりて落ちる山の水/吉田晃
山葵は清冽な水に育つが、山葵田を巡って落ちるのは、山の水。事
実を詠んで、句材がよい。             (正子評)

★雨しとど暮れゆく街の花辛夷/大給圭泉
★木の影と我が影映る春障子/堀佐夜子
★麦青むいつしか風も柔らかし/多田有花  

【佳作/23句】
★一株で庭は明るし黄水仙/河野一志
当に春である。「明るし」である。「一株」だからこそ、殊更であ
る。作者の喜びが伝わってきて、読者もともに嬉しい。「水仙」は
冬の季語だが、「黄水仙」は春の季語。       (信之評)

★菰解かれ陽の燦々と牡丹の芽/黒谷光子
春は、何よりもその開放感がいい。「牡丹の芽」が大きく膨らむ。
                         (信之評)

★我が窓に木の芽動きて映える朝/長岡芳樹
身近なところでの春への動き。それを捉えた詩心がいい。
                       (信之評)

★発電の煙突覆う春夕日/能作靖雄
★植え替える苗の根強く絡みおり/古田けいじ
★制服の折り目まっすぐ受験生/池田多津子
★梅の花ゆく先々に鳥の声/祝恵子
★春風邪に匂い広がる養命酒/碇えいいち
★花ミモザくぐる小径は水の辺へ/池田加代子
★グローブを弾きしボール芝萌ゆる/山中啓輔
★解禁の山女求めて蕗の薹/小口泰與(正子添削)
★座り見て土筆一本ようように/伊藤笑留人
★春晴れてシェレメチボの雪輝ける/小西宏
★草を歩く春風といっしょに歩く/おおにしひろし
★紫陽花の芽のほぐされて葉をひろぐ/臼井虹玉
★剪定の添え竹固き枝構え/今井伊佐夫
★誰か触れし温きドアノブ雪催う/志賀たいじ
★競艇の波紋しぶくや春の風/尾ア 弦 
★紅梅の血の色めきて玉連ぬ/甲斐ひさこ 
★春光を云う医師窓を開けてみせ/かわなますみ
★風吹かば春の色なり遠き山/前田たかし
★鎮守森木漏れ日温き鳥の恋/大山涼
★南へと運転すれば木も春に/冨樫和子(正子添削)    


■3月9日■ 【最優秀】 ★茶畑や狭山の丘の風孕む/尾ア 弦 狭山はお茶どころで、茶畑が続く景色は美しい。お茶の新芽が出る ころは、心地よい風が茶畑に吹き、茶畑の続く丘陵全体が風を孕ん だふうになる。「風を孕む」が効いた。       (正子評) 【優秀/6句】 ★活けられて膨らみ増しぬ猫柳/古田けいじ 活けられたばかりの猫柳は、固い芽であっても、次の日には、皮を 脱いで銀色を見せる。また次の日は、ふっくらと膨らんでくる。日 々の成長に見る猫柳の変化が楽しみであり、日々あたたかくなる嬉 しさもある。                   (正子評) ★春の水流れる音の深まりぬ/能作靖雄 なんでもないような句に見えるが、よく味わうと、この句の春の水 には、雪解け水を含んだ音が聞こえる。水量を次第に増してきた春 の川は、冬の間の思い流すように、深い音で流れている。                          (正子評) ★囀りの空を降り来る幾たびも/臼井虹玉 一日家にいると、鳥の囀りが幾度となく降ってくる。のどかな囀り を幾たびも聞いて、鳥はすっかり身近な存在になった。(正子評) ★初蝶を見しはいつかと佳き声す/かわなますみ 「初蝶」を話題にする声は、「佳き声」として聞き届けられる。初 蝶のような声を聞いてみたい。(正子評) ★石像の髪のたなびく涅槃西風/栗原秀規 髪をたなびかせている石像がもともとあるのだが、涅槃西の吹く強 さが石像の髪をたなびかせているように、詠まれている。                          (正子評) ★雨上がる桜蕾のふくらかに/前田たかし 雨を含んだ桜蕾がふっくらとしているところが素直に写生されてい て、リアル。雨上がる状景が晴れやか。       (正子評) 【佳作/21句】 ★潮の香をのせて菜花の咲き上る/池田多津子 海の見える丘の風景に違いない。「咲き上る」のである。群青の海 に映える「菜花」の黄が「潮の香」と溶け合って「咲き上る」ので ある。句の対象の「菜花」を広く深く捉えた。    (信之評) ★地図片手かたまり歩く遠足子/伊藤笑留人 「遠足子」の楽しさが読み手に快く伝わってくる。短い形式であっ ても、それで充分である。「短い」のは、無駄な言葉がないという ことで、作り手の思いが直に伝わってくる。     (信之評) ★片栗や利根の川瀬も水多し/小口泰與 ★浜風のとどく街道牡丹の芽/篠木睦 ★春燈に文やわらかく読み返す/宮地ゆうこ ★山裾はぐるり一周霞みたり/河野一志 ★梅園に目白二三羽来て遊ぶ/堀佐夜子 ★桜の芽まだ頑なに山の裾/藤田裕子 ★海に沿う防風林を鴨帰る/おおにしひろし ★菊芽挿し気がかり一つ増えており/野田ゆたか ★咲く紅梅散る白梅の庭一つ/今村七栄 ★春の日や走るボートの波しぶき/下地鉄(正子添削) ★気候ずれ薯種買うを忘れおり/今井伊佐夫 ★春日向中州からっぽ乾きおり/大給圭泉 ★テイバッグ操る糸に雪解光/志賀たいじ ★早春の踏切越える白い雲/長岡芳樹 ★包み解き先ず香と色の桜餅/黒谷光子 ★豆腐屋の土間で春菊売るを買い/甲斐ひさこ ★受験生からの電話に胸をなで/松本豊香 ★ポケットに春のハンカチしのばせて/大山涼 ★朝焼けに春雨そっと芽にそっと/冨樫和子
■3月8日■ 【最優秀】 ★春めくや母の菜畑が緑増す/野田ゆたか 母の菜畑の「春めく」に、やさしく、細やかな気遣いと敬慕の気持 ちが読取れる。                  (正子評) 【優秀/7句】 ★下萌えに声交わし合う草野球/小西宏 広々とした下萌えに散らばって草野球を楽しんでいる光景が、楽し くていきいきとしている。「声交わし合う」に、様々が凝縮されて 、草野球の光景が目に見えるようだ。        (正子評) ★片栗の一群落に瀬音かな/小口泰與(正子添削) 片栗がひとつの群落をなしている。そこへ瀬音が聞こえてきて、片 栗の花の咲くあたりを単純化して明確に詠んでいる。 (正子評) ★知床の連山望み砕氷船/渡辺酔美 知床の連山を見ながら流氷の中を進む砕氷船であろう。写生がよく 、大きな景色を目の当たりにできる楽しさがある。  (正子評) ★連翹の今日新たなる黄を噴きぬ/池田加代子 ★トンネルへ道は真直ぐに山笑う/山中啓輔 ★満天に星が光りて明日は遠足/池田多津子(正子添削) ★芽吹きややたじろうごとく脹らめる/藤田裕子 【佳作/26句】 ★畑打つ雲大胆に斜めなり/大山涼 「雲大胆に」の表現に驚かされる。「畑打つ」と「雲」とが大胆に 分かれて、雲にも畑にも動きがでている。      (正子評) ★春土に溝深く切り陽を入れる/日野正人(正子添削) 春土にはやわらかさを想像するが、「溝深く切り」としての土に鋭 さを見せた。春の陽に強さがある。         (正子評) ★献血を終え春の陽の中に出る/多田有花 ★春風を車窓開きて楽しめり/碇えいいち ★街角に光となりて辛夷膨らむ/古田けいじ ★げんげ田の風平凡な幸せに/おおにしひろし ★古草の地に踏ん張って日を受けて/山野きみ子 ★春装の透けてたじろぐ試着室/今村七栄 ★雀の子みなふくふくと亜麻色に/堀佐夜子 ★江ノ電に乗り換えつづく春の旅/祝恵子 ★相模湾三ッ石岩間春潮濃し/大給圭泉 ★絵手紙の色滲みし春便り/篠木睦 ★流氷の狭間を漂う海の青/志賀たいじ ★七十路を楽しく生きて春迎う/今井伊佐夫 ★臥せて見る山平らかに春入日/宮地ゆうこ ★ブルースカイ雪嶺伸びしどこまでも/能作靖雄 ★フリージア今日またひとつ香をあらたに/臼井虹玉 ★朝日うけ窓一杯に春光り/渋谷洋介 ★橋開通先ず春風を通しけり/甲斐ひさこ ★頬染めて席立ち歩み卒業す/長岡芳樹 ★はらからと歩む芝生の日脚伸ぶ/伊藤笑留人 ★風呂上り裸の子を見て暖かし/高橋秀之 ★鞦韆に読みたし友の見舞文/かわなますみ ★春寒く夜半の風呂で息をつく/冨樫和子 ★春暁のあんなところに細き月/黒谷光子 ★何となく春めきたりて人急ぎ/前田たかし
■3月7日■ 【最優秀】 ★芽欅に空つつ抜けの明るさを/碇えいいち(正子添削) 元の句は、「芽欅の空」でイメージが弱いので、芽欅がテーマとな るように添削した。明るい空に向けて無数の芽をつけている欅の芽 吹きが美しい。                  (正子評) 【優秀/6句】 ★啓蟄や医科大学は丘の上/篠木睦 虫たちが地上の出で来る啓蟄。これからいよいよ春の歩みが速くな る。丘の上の医科大学では粛々と命のための研究がされている。虫 も人も命あるものが、明るく生命を謳歌するときが来た。啓蟄と医 科大学の取り合わせは、生命ということで繋がっている。(正子評) ★合格の掲示に春日暮れかぬる/志賀たいじ(正子添削) 入学試験の合格発表であろうが、合格を貼り出した掲示板に長く夕 日が届いて、いつまでも暮れかねている。合格を心温かく見守る作 者がいる。                    (正子評) ★バス停はポール一本麦青む/甲斐ひさこ バス停といっても、バス停のポールが一本たっているだけ。一日に わずかの便しかないのだろうが、のびやかで明るい青麦畑の景色。                          (正子評) ★小松菜に水溢れさせ籠に上ぐ/大山涼 (正子添削) ★鉄棒に少女逆さま春日燦/栗原秀規 ★春雪の解けて生るものみな青し/かわなますみ 【佳作/13句】 ★先ず萩の芽を問うてより山門へ/野田ゆたか 「山門へ」向かう姿が見えてくる。作者のいい人柄も伝わってくる 。575の17字で充分である。(信之評) ★春夕焼け連れ戻されし三輪車/今村七栄 春夕焼けの日暮れとなっても「三輪車」で遊ぶ。「連れ戻されし」 児は、親を離れても元気だ。健やかな児の成長は嬉しい。                          (信之評) ★夕日白き光を池に雪ゆるむ/富樫和子(正子添削) いい感性だ。いい視線だ。作者は、山形県東根市在住の水煙新入会 員。                       (信之評) ★桟橋を大股で行く春の海/池田加代子 ★夕まぐれ朧に灯る隅田川/山野きみ子 ★梅真白宙(そら)青いろに澄みきって/おおにしひろし ★和装婦人光まといて曽我梅林/大給圭泉 ★飛ばされる帽子を追うや鳥帰る/小口泰與 ★吹流しに春風通す滑走路/今井伊佐夫 ★六百の年輪経るや公孫樹の芽/尾ア弦 ★鴎群れ港に春の船を待つ/長岡芳樹 ★赤らみし遅れ椿の恥ずかしげ/前田たかし ★啓蟄や嫁ぐ娘と組む腕硬し/伊藤笑留人