デイリー句会過去一覧
伝言板

高橋正子選
デイリー句会入賞作品
2005年3月1日〜6日

NPO法人水煙ネット

■3月1日■

【最優秀】
★耕耘機の勢い春の田を広ぐ/池田多津子
耕耘機が、どんどんと田を鋤いて、その勢いに圧倒される思いだ。
きれいに鋤かれた田は、うららかな春の日差をあびて輝いている。
耕耘機が広げ、作り上げた「春の田」がうららかで清潔である。
                         (正子評)

【優秀/6句】
★測量の視野円形に草青む/おおにしひろし
測量のために除くレンズの円形の視野に、草が青くなってきている
のが入って、思わず春を見つけた思いになった。測量という厳密で
、無機質な仕事に野の草の青むのが加わって、測量の仕事に楽しみ
が加わった。                   (正子評)

★太陽も山も草木も春の朝/野田ゆたか
春の朝のおおらかさに包まれた心地よい心境が伝わる。太陽も、山
も、草木も、すべて春の朝となったのである。    (正子評)

★ポリバケツに束ねし桃のつぼみ満つ/尾ア弦(正子添削)
ポリバケツといわれれば、まず思い浮かぶのがよくある青いポリバ
ケツ。桃の節句が近くて、桃の花がバケツの水に入れてあうのだろ
うが、桃の蕾があいらしくて、ポリバケツによく似合っている。生
活のなかの素材が素直に描写されている。      (正子評)

★園児らの迎えのバスに桃の花/澤井渥(正子添削)
★白梅の咲き満つ枝や水の上/山中啓輔
★神の山芽吹き二の滝三の滝/黒谷光子

【佳作/17句】
★文旦の光積む店うららかに/池田加代子
まさしく「うららかに」であって、作者の心の内が「春うららかに
」である。                    (信之評)

★口中に水やはらかき寒の明け/栗原秀規
「寒の明け」を捉え、いい季感だ。作者の偽りのない実感である。
                        (信之評)

★旅立ちの土の匂いや春の雷/小西宏
★朝の陽に春耕の土湯気をたて/脇美代子(正子添削)
★春北風や岸に韓国文字のビン/今村七栄
★雛飾る祖母の嫁したる矜持かな/小口泰與
★春陽さす乳房揺らしてホルスタイン/古田けいじ
★春の川鯉水色に消えゆけり/大給 圭泉
★一湾の鏡平らに春の海/篠木睦
★かまくらに子らの彩る冬灯す/志賀たいじ
★春空の少し近づく四十階/臼井虹玉
★天神の三分咲きなる梅祭り/渡辺酔美
★三葉芹白き根揃え俎板に/大山涼(正子添削)
★貝殻の重なるように梅ひらく/かわなますみ
★春の空雲は流れるままに浮き/長岡芳樹
★幾重にも包む花びら紅椿/伊藤笑留人
★残り柚子しがみつきたり別れ雪/前田たかし 


■3月2日■ 【最優秀】 ★ヒヤシンス根の伸び伸びと澄む水に/山野きみ子 下五の「澄む水に」に、作者の気持ちが明るい方を見ていることが 覗え、読むと気持ちが明るく救われる。水栽培のヒヤシンスの勢い に花を待つ楽しさがある。             (正子評) 【優秀/6句】 ★若芝にオール並べて古りし寮/堀佐夜子 古い寮の庭の若芝に、オールを並べて、シーズン練習に入る準備を しているのだろうか。ボートを漕ぐ学生たちは、いつも若々しく、 希望にあふれて見えるが、そんな彼らを川で見るのも、もう間もな くだろう。                    (正子評) ★菜の花の味噌汁熱し山の宿/大石和堂 山の宿の朝は、平地よりも冷え込む。熱い味噌汁がなにより嬉しい が、早々と菜の花の味噌汁が出されたので、季節のものを食す嬉し さに、体からすっきりと覚めた気分だ。       (正子評) ★青空と光を交わす氷柱かな/長岡芳樹 青空は氷柱に光をあげ、氷柱は青空へ光をあげる。青空から光を貰 った氷柱は、青空を透き通らせてかがやき、その光は青空へと帰っ ていく。光の交歓と言えそう。           (正子評) ★フリージア生けて清しき部屋を持つ/池田加代子 ★室出しの独活や光の透き通る/尾ア弦 ★忙中の閑を野梅に委ねけり/篠木睦 【佳作/23句】 ★たくましく軍鶏は春陽に首伸ばす/古田けいじ(正子添削) いい写生だ。無駄な言葉がないので、力強さがある。「たくましく 首伸ばす」のである。春の季節が来た。       (信之評) ★春の雪キラキラ陽に溶け又生まる/藤田裕子 自然界の命を捉えた。春雪の「キラキラ」とした「命」は、「溶け 又生まる」のである。               (信之評) ★日矢受けて玻璃いっぱいにヒヤシンス/安丸てつじ 素直な写生だが、春を捉えて充分である。喜びがある。(信之評) ★今日の日を笑顔で終える菜飯かな/前田たかし 季節の「菜飯」がいい。「無事是大事」であり、「笑顔で終える」 ことができたのである。              (信之評) ★菜花咲き土手の静かに曇りけり/吉田晃 ★春暁に静々客船岸に着く/高橋秀之 ★海山を眼下に見やり鴨帰る/多田有花 ★門ごとにプランター置き花の苗/小西宏 ★生涯の岐路それぞれに受験生/野田ゆたか ★鴨群るる干潟に沈む陽を浴びて/おおにしひろし ★斑雪野や土の匂いに鳥の群れ/能作靖雄 ★玄海にサーファー黒く冴え返る/今村七栄  ★春禽の嘴きらりと飛び立てり/臼井虹玉 ★雨上がりふと風匂う沈丁花/大給圭泉 ★朝寝して一膳飯で旅立ちぬ/今井伊佐夫 ★跳び出でし兎の瞳の愛し笹の雪/志賀たいじ ★マフラーに顔を埋める余寒なり/河野一志 ★茎立ちや真昼の空に白き月/竹内よよぎ ★車窓には梅林や海那智に着く/黒谷光子 ★展望の頬に清しい風三月/伊藤笑留人(正子添削) ★吾が心今日塞ぎいて菜花咲く/山中啓輔 ★弥生空小鳥の声の弾みけり/大山涼 ★梅ひらき蘂の先まで光あり/かわなますみ
■3月3日■ 【最優秀】 ★送電線ゆるむ大きな春の山/吉田晃 送電線が山と山を渡っている。山も春になると、おぼろにふっくら 大きく感じられるようになる。送電線がゆったりと緩んだ感じも春 らしい景色のひとつ。               (正子評) 【優秀/6句】 ★やわらかき色して芽吹く美濃山塊/古田けいじ 「美濃山塊」が魅力の句。美濃の力強い山々が塊になって、やわら かな色に芽吹いている。深く暗みのある山塊が芽吹くとやわらかな 色になるその変化は、春のなせるわざ。       (正子評) ★榛の花咲く水の辺に影置かず/山野きみ子 榛の花は、地味な花で、葉より先に花が咲く。枝に垂れて花は咲く けれど、早春のうすい日差に水に影を置くことはない。早春の水辺 の静かな輝きが心を新鮮にしてくれる。       (正子評) ★一樹にも芽のふくらみのそれぞれに/臼井虹玉 ひとつの樹にも、芽のふくらみ方に遅速があって、思えば意外なこ と。小さな芽がそれぞれに葉を開くときが楽しみ。  (正子評) ★蕗の薹指も香らせ持ち帰る/黒谷光子 ★剪りてなお芽吹き溢るる桃の花/山中啓輔 ★浅間嶺玲瓏なるやいぬふぐり/小口泰與 【佳作/23句】 ★流されし雛が刻待つ潮だまり/篠木睦 写生句だが、いい詩情がある。上五の「流されし」、中七の「待つ 」、そして下五の「潮だまり」のそれぞれに詩情があって、お互い の関わりがあって、作者の思いが伝わってくる。   (信之評) ★浮雲を大きく映し卒業す/志賀たいじ 「卒業」の感慨に深いものがある。さり気ない写生に深いものがあ るのは、作者の内面の深さからくる。        (信之評) ★桃の花乳含ませし顔まろやか/大山涼 「桃の花」がいい。「桃の花」のいい季感を捉えた。(信之評) ★芽吹き待つ山の姿の朧なり/河野一志(正子添削) ★洗濯機回る音聞き春の夜/高橋秀之 ★黄金の滝を落としてミモザ咲く/渋谷洋介 ★雛の日の緑鮮やか貝の汁/碇えいいち ★さくら貝集めて夢を見ている児/おおにしひろし ★冠の傷みに雛の歳月を/野田ゆたか ★残雪の前山影を深くする/脇美代子 ★菜の花を散らしてパスタ盛りつける/堀佐夜子 ★三月の海の上(え)高く白かもめ/岩本康子 ★裏口へまわって見舞う春の風邪/今村七栄 ★クレヨンと紙散らばりて春炬燵/祝恵子 ★色香り古里の味草の餅/大給圭泉 ★七段のなかに唯一の素焼き雛/今井伊佐夫 ★膝上の拳も軽し卒業す/長岡芳樹   ★春めくや鉄橋渡る音たかく/尾ア弦 ★春月を水車捉えど掬えども/栗原秀規 ★雪柳咲きて周りを明るくす/松本豊香 ★枝垂梅の枝垂るる下に今日もまた/かわなますみ ★遠足の黄色帽子に電車着く/伊藤笑留人 ★魚さばく妻の二の腕に春の風/前田たかし
■3月4日〜6日■ 【最優秀/3月4日】 ★鉄材を運ぶは遅遅と杉の花/堀佐夜子 地味な色合いの句だが面白みがある。重い鉄材は易々とは運ばれな いで、遅遅と運ばれる。また、杉の花が咲くころは、杉の葉も寒に 耐えた色となって、杉の花も鉄材でも当たるなら、花粉を散らしそ うである。鉄材と杉の花の取り合わせが不即不離であるのがよい。                          (正子評) 【最優秀/3月5日】 ★春寒し花苗とりどり濃さもちて/藤田裕子 花の苗は植えられたばかりか、まだ、苗として売られているところ なのか、春寒い風に、花びらがひらひらと揺れている。薄曇り空の 下では、いろいろな花の色が濃くはっきりと目だっていて、それが 却って寒そうに感じさせている。          (正子評) 【最優秀/3月6日】 ★降り立てば青麦畑のまっ平/甲斐ひさこ 降り立ってすぐが青麦畑というのは、うれしい。田園の道を来たバ スを降りたのだろう。自分の足元からずっと向こうへ青麦畑がまっ 平に広がって、目にすがすしい景色だ。       (正子評) 【優秀/10句】 ★ほろ苦し庭より獲れし花菜和/安丸てつじ 花菜は、その姿からは苦味はちっともなさそうに思えるが、食べる と、蕗のとうほどではないが、わずかにほろ苦い。からし和えなど にして、これから楽しめる。庭から獲れた花菜なので味にも思いが 入る。                      (正子評) ★揺れている街角ジャズと風船と/池田加代子 街角のうきうきとした楽しさが伝わる。ジャズの生演奏なのだろう 、ジャズの響きに街角も揺れているようで、風船もゆらゆらと揺れ ている。街角が実際揺れるわけはないが、そういう感じだというの だ。                       (正子評) ★漆黒の畑潤し春の雪/河野一志 春の雪は解けて、真っ黒な土の畑を潤した。春の雪にくろぐろと濡 れて蘇る土に、山国に春がくる喜びが詠まれている。 (正子評) ★南海のチョウ密林に水滴る/小西宏 「水滴る」によってチョウがみずみずしい命を得た。密林のチョウ というめずらしい素材を詠んでいるが、よくこなされている。                          (正子評) ★菱餅を手向ける先はお水神/前田たかし 今も菱餅を水神様に手向けておられるのか、それとも思い出か。昔 、家にいろいろ神がいた。水神様もそうである。お札などが貼って あった。菱餅ができあがると、水神様にもお供えする。畏みながら 、感謝しながらのいい生活である。         (正子評) ★ひっそりと雪にとざさる誕生日/大給圭泉 ★夜の庭の淡き沈丁の香にあたる/池田多津子 ★一塊の氷雪となり石鎚(やま)はるか/おおにしひろし ★幼子の土に絵を描く春半ば/伊藤笑留人 ★赤き芽の赤き木肌に山帽子/かわなますみ 【佳作/29句】 ★しずしずと嵩あるものに積もる雪/脇美代子 「積もる雪」に見えないものを見た。「嵩あるもの」を見た。深い のである。                    (信之評) ★ほうれん草光を浴びて育ちおり/祝恵子 技巧のない句で、それが成功した。ものの本質が見えた。「光」が あって、すべての存在が明らかになる。        (信之評) ★春空に鍵高々と放り上ぐ/矢部れい子 「放り上ぐ」理由が特になくても、その気持ちは充分に伝わってく る。春だからである。「春空」だからである。読み手も楽しい。                           (信之評) ★満天星の朱き芽吹きは天を指し/渋谷洋介(信之添削) いい「芽吹き」だ。そこには、明日があり、高くて広々とした世界 がある。「満天星」は、季語ではないので、添削をした。季語とし ては、「満天星の花」が春で、「満天星紅葉」が秋である。                          (信之評) ★雛あられの優しい色を仏前に/池田加代子 「仏前に」である。それがいい。「優しい」のである。(信之評) ★一途さや赤き芽立ちの薔薇の園/小口泰與 ★夕暮れの駅をいろどる梅の花/高橋秀之 ★ガラス器に茎青々とフリージア/臼井虹玉 ★春の雪ビルのはざ間に冬名残/能作靖雄 ★黄水仙子らの一日見守りて/松本豊香 ★土肥の海春月濡るる旅の宿/大山涼 ★夕闇の混沌として戻り鴫/大石和堂 ★三月の夕べ明るき子らの声/多田有花 ★池畔行く芽ばり柳のけぶる中/山野きみ子 ★風邪の椅子余して囲む雛の宴/碇えいいち   ★梅に来る鳥の背伸びや宙返り/今村七栄 ★たらの芽の小鉢にひとつ宿の膳/今井伊佐夫 ★雪解けて流れの溝の水眩し/志賀たいじ ★展望の窓に灯溢る春の宵/長岡芳樹 ★子の投げる石一斉に鴨翔たす/尾ア弦(正子添削) ★朧夜の魚籠の匂いとすれ違う/栗原秀規 ★蕗の薹のありしところに家が建ち/澤井渥(正子添削) ★雛人形また来年と箱に詰め/渡辺酔美(正子添削) ★遠山に春の雪積もりて険し/吉田晃 ★春またず逝きし兵士の無言館/石井孝子 ★淡き紅見せて楓の芽吹くらし/古田けいじ ★菜の花を活けて厨の華やげり/篠木睦 ★菜の花の黄なる群れへと照る夕日/山中啓輔 ★紅梅を見たくて今日は遠回り/黒谷光子