▼月間賞2000年8月〜2003年6月
▼年間賞/2002年
俳誌「水煙」秀句

8月賞/2003年
ネット新俳句月間賞/俳誌水煙
高橋正子

最優秀
露草を踏みつけ朝の測量士/加納淑子

露草の花は朝だけのもので、澄み通った青い色が、「露
けき朝」を象徴している。その花を測量のために、踏み
込んでいる測量士も「露けき」存在となっている。
(高橋正子)

優秀13句

ぎす鳴いて軒重ね合う蜑の路地/平野あや子
軒の重なる漁村の狭い路地にも、ぎすが鳴き、ひっそり
と静かな秋がある。(高橋正子)

栗の棘まだ青々と日は昇る/小峠静水
作句の対象を真っ正面から見た。その姿勢があってこそ
、自然の生命が見えてくる。自然の本質が現われてくる
。(高橋信之)

さわやかに高原走る陸上部/今井伊佐夫
よく日焼けした、しなやかな体で次々と走ってくる陸上
部の生徒らは、高原の風の中で、爽やかさそのもの。爽
やかさの象徴である。(高橋正子)

鳴く蝉にひたすら青き楡大樹/おおにしひろし
楡の大樹はあくまでも青く茂って堂々としていますが、
その中で鳴く蝉もしっかりと今を鳴いています。
(高橋正子)

垂直に日を待つ稲穂まだ青し/霧野萬地郎
日が指してくる前の稲穂の青くて、真っ直ぐである景色
。すがすがしい空気が流れている。(高橋正子)

赤とんぼ高さ保って向かい合う/日野正人
赤とんぼが宙に止まっている様子であるが、あたりの空
気が澄んで感じられる。(高橋正子)

流灯となりても行く方激しかり/金子孝道
流灯は静かに流れ行くものと思いがちですが、思えば、
そんなに平坦な水を流れて行くばかりではありませんね
。波にもまれたり、海へまで行けばどんなことになるの
でしょう。そんな思いを抱かせてくれる流灯です。
(高橋正子)

この竹と決めて朝伐る七夕竹/藤田洋子
七夕竹を選びとる思いに、七夕が現実化し、現実が詩的
になっていますね。七夕の行事を楽しんでいて、さわや
かです。(高橋正子)

寝転べば峰より峰へ天の川/藤田荘二
登山での作。「峰より峰へ」は、作者が高い位置にいる
証拠で、天の川と峰との近接感に、この句の新鮮な感動
がある。雄大でのびやかな句。(高橋正子)

研ぎ上げし包丁さくりと西瓜切る/山中啓輔
西瓜がさくりと切れるほどの包丁の刃の広さに、刃物の
冷たさが良く出ている。よく冷えた西瓜を美味しそうに
、切り分けられた。(高橋正子)

日々すべきことをなしつつ新涼に/多田有花
作者が、モンブランへ発つ直前の句であるから、その準
備のための、「日々すべきこと」であろう。用意周到な
計画と準備があって、初めて登頂は成功する。日々成し
終えていく内に、季節も新涼へと移り変わっていった感
慨がおおきい。(高橋正子)

水平に蜻蛉駅舎を通り抜け/山野きみ子
真っ直ぐに、水平に飛びながら、どこでも飛べる、自由
な蜻蛉の世界は広い。その蜻蛉の世界に入った駅舎が、
実に涼しそうである。(高橋正子)

塾の子に夏帽子かぶせ送り出す/野仁志水音
塾の子は、低学年なのであろう、帽子をきちんとかぶせ
てあげて、家へ送り出した。勉強を教えて終わりではな
く、子どもが帰るときも、向き合って対応しる若い教師
のういういしい姿がある。(高橋正子)

新人賞
白粉の花を銜えて軽く吹き/平田 弘
小さいが、ラッパ形をしている白粉花を銜えてみて、軽
く息を通した。白粉花のいい香りが鼻先をくすぐり、花
から小さな音さえ生れそうである。(高橋正子)

7月賞/2003年
ネット新俳句月間賞/俳誌水煙
高橋正子

最優秀
ラムネ飲む江ノ島青く傾ぎおり/大給圭泉
ラムネを逆向けて飲むと、体までが傾く感じで、青々と
した江ノ島が傾く。夏真っ盛りの海辺がラムネのように
さわやか。(高橋正子)

優秀10句

手にむすぶ源流なりし滴りを/野田ゆたか
源流の滴を手に掬んだときの冷たさ、清らかさが、体に
も沁み通るようである。(高橋正子)

河三つ出合い蜻蛉生まれけり/おおにしひろし
河が出合うところには、水にきらめきがある。三つの河
が出合えば、川波にさざめく光りも増える。そこで生ま
れる蜻蛉の生命は、透明感があって、いっそうのこと輝
いている。(高橋正子)

コスモスの揺れ合いながら陽を送り/下地鉄朗
コスモスの花が群れ咲いて風に揺れ、陽を空へ、向こう
の方へと送っている。コスモスが咲いているのは、なだ
らかな丘であろうか。(高橋正子)

梅雨空に材木軽やかに匂う/山野きみ子
新しい材木の匂いが、梅雨空の下にほのかに漂って、生
活する町が生きいきと蘇るようである。こんなときは、
こころなし、一人気持が華やぐ。(高橋正子)

岩肌の硬きより湧き滴れる/吉田 晃
岩肌を湧き出て滴る水に焦点をしぼり、クローズアップ
して、一枚の写真のように詠んだ。硬い岩肌と、柔らか
で透明な水が硬軟、対象的でありながら、滴りとなって
一体化しているところに涼しさがある。。(高橋正子)

窓からの涼しき風を受け学ぶ/野仁志水音
「学ぶ」が自然であり、素直で、実がある。窓から涼し
い風を受けて学ぶ日もあって、落ち着いた態度がよい。
(高橋正子)

視野一面烏賊火連なる砂丘沖/太田淳子
鳥取砂丘の沖に、烏賊火が連なり、夏の夜の風物詩を繰
り広げている。手前に砂丘、向こうに見渡す限りの烏賊
火の沖を配し、広く大きな景色が詠まれた。(高橋正子)

差し出さるなすの丸みを両の手に/祝恵子
ありふれた日常の風景だが、作者の確かな生活がそこに
ある。私の好きな句。 (高橋信之)

風涼し籠いっぱいの青野菜/宮地ゆうこ
籠に溢れるほど収穫された夏野菜は、見た目にも涼しい
が、風が吹いて肌身にも涼しさが感じられ、句に気負い
がないのがよい。(高橋正子)

朝取れのもろこし箱に何本も/日野正人
朝取ったばかりのとうもろこしの緑色が、目に爽やかに
映る。幾本も並べられると、その露に湿った緑色は、夏
の朝のすがすがしさそのもとなるのである。高原の空気
が感じられる。(高橋正子)

新人賞
噴水立って音が生まれる朝の池/山中啓輔
朝早く、噴水が立ち始めるときを捉えた句で、静かな池
の平面から立ち上がって噴く水が、音を生んでいる。水
の音であり、噴水そのものの涼しい音である。夏の朝の
静けさがよく捉えられている。(高橋正子)

6月賞/2003年
ネット新俳句月間賞/俳誌水煙
高橋正子

最優秀
水の匂いを羽にたたんで川とんぼ/池田多津子
川とんぼはいつも水の上を飛んで、羽の隙間には、いつ
も川の水が見えて、羽をたたむと、水の匂いも打ち畳む
かのようである。「羽にたたんで」に描写の工夫がある。
(高橋正子)

優秀10句

あめんぼう跳んで平らな水の張り/藤田洋子
あめんぼうの脚が水の表面を押さえているが、そのこと
によって、水に張りがあることを気づかされる。水の張
りは、作者の感覚の張りでもある。(高橋正子)

田草取終えて静かに水透けり/相沢野風村
田草を取るときは、田の土を掻くので水が濁ってしまう
が、終わるとまた静かに澄んだ水となり、土や、小さな
生き物や草などを見せてくれる。「水澄めり」ではなく
、「水透けり」としたところに、作者の確かな目がある。
(高橋正子)

睡蓮の丈みなそろう花も葉も/霧野萬地郎
睡蓮が、平らに水に浮いているところを、その根元から
想像して、「丈みなそろう」とした。「軽さ」に涼しさ
が生まれた。(高橋正子)

青芦をさらさら抜けて風匂う/石井信雄
青い芦の茂る中に夏の風が。青い夏のイメージで、さわ
やかです。(池田多津子)

植田日々空を映して育ちけり/多田有花
植田に空が映って、植田はいつまでもそのままのように
思えるが、早苗は日ごとに育っている。植物の生長には
、眼を瞠るものがある。(高橋正子)

朴葉鮨青の香りを包みおり/今井伊佐夫
「朴葉鮨」が、山国のいい生活を想像させてくれる。開
いて食べるのが楽しみな朴葉鮨は、青い朴の葉で作られ
る。(高橋正子)

大和路を歩けば夏萩両脇に/祝恵子
古寺へ参る道であろうか。夏萩の道を分けて歩いている
のが、「両脇に」である。夏萩は、大和路に似つかわし
い。(高橋正子)

真っ白のコンバイン光る麦の秋/能作靖雄
<麦秋>の季節が鮮明に捉えられ、いい風景画です。無
駄なものがありませんね。(高橋信之)

万緑や赤子の命賜りぬ/河ひろこ
万緑の勢いそのままのように元気な男の赤ちゃんで、お
めでとうございます。いい季節に生まれて、「命賜りぬ
」の喜びもさぞかしと思います。(高橋正子)

カットせし軽さ手にある洗い髪/平野あや子
「軽さ手にある」は、短く軽くなった髪をうまく表現し
ていますね。カットして、さっぱりとなった軽い気持ち
がいかにも夏らしくていいです。(高橋正子)

新人賞
驟雨過ぎ嶺それぞれの襞はるる/山崎美笑
「それぞれの襞はるる」は、気持ちを晴れ晴れとさせて
くれる。嶺の襞がくっきりと見え、山の色が目に沁みて
明らか。(高橋正子)

水煙ネット事務局